私わたしはトーハンという出しゅっ版ぱん総そう合ごう商社に勤きん務むしている会社員です。トーハンは，本や雑ざっ誌しを作る出しゅっ版ぱん社しゃと書店・コンビニエンスストアなどの小売店をつなぎ，流通ネットワークを構こう築ちくしている出しゅっ版ぱん業界の総そう合ごう商社です。実はみなさんが本屋さんで手に取っている本や雑ざっ誌しは，私わたしたちのような卸おろし売うりの会社が間に入り，届とどけられた商品なのです。現げん在ざい日本には，約3,500社の出しゅっ版ぱん社しゃと約13,500社の書店，約55,000店のコンビニエンスストアがあり，トーハンを含ふくむ21社の出しゅっ版ぱん販はん売ばい会社でつないでいます。
日本で年間に出しゅっ版ぱんされる新しん刊かんの点数は約８万点，雑ざっ誌しは約数億冊さつあり，毎日さまざまな書しょ籍せきや雑ざっ誌しがトーハンに届とどきます。その中で私わたしは，物流の担たん当とうをしていて，書しょ籍せきや雑ざっ誌しを仕入れ，書店やコンビニエンスストアに仕分けて店てん舗ぽに届とどけるという作業の計画を立てる部門に所しょ属ぞくしています。
トーハンには，桶おけ川がわSCMセンター，上あげ尾おセンター，東京ロジスティックスセンター等の６つの物流拠きょ点てんがあります。センターの中には，ベルトコンベヤがずらっと並ならび，書店ごとに「どの本や雑ざっ誌しをどのくらい配る」という指し示じが出ていて，間ま違ちがいがないように仕分けをしています。

私わたしは東京都新しん宿じゅく区にある本社勤きん務むで，物流の中でも主に雑ざっ誌しが担たん当とうです。雑ざっ誌し物流は，西にし台だい，上あげ尾お，戸と田だと３つの作業所があり，なかでも私わたしは上あげ尾おセンターでコンビニエンスストアのための物流を担たん当とうしています。ふだん本社に出しゅっ勤きんすることが多いのですが，朝8時頃ころ出社して，今挙げられている課題を改かい善ぜんするためにデータの集計をしたり，現げん場ばの担たん当とう者しゃに説明をするための資し料りょうを作ったりしています。基き本ほん的てきに，毎日同じ作業をするルーティーンの仕事ではありませんので，課題が発生したら解かい決けつしていくという，ある種の柔じゅう軟なん性せいと瞬しゅん発ぱつ力りょくが必要な仕事です。そのために，必要があれば上あげ尾おセンターに行き，調ちょう査さや計画を説明するための打ち合わせを重ねて，現げん場ばを改かい善ぜんしていくことが私わたしの役やく割わりです。特に急ぎの仕事がなければ，18時か19時頃ころには退たい社しゃをしています。

私わたしたちと取り引きがある書店とコンビニエンスストアを含ふくめると約35,000店にものぼります。毎日多くの書しょ籍せきや雑ざっ誌しが入にゅう荷かしますので，すぐにお店に向けて出しゅっ荷かしなければいけません。かなりの量の商品数ですが，基き本ほん的てきには入にゅう荷かしたら1日で作業を終えます。私わたしが担たん当とうしている上あげ尾おセンターでは，コンビニエンスストアのベルトコンベヤ作業に200人以上の人がかかわっています。雑ざっ誌しの場合，月げっ刊かん誌しだと毎月の1日，20日前後に発売される点数が多く忙いそがしくなります。また，週しゅう刊かん誌しだと月曜日，水曜日の作業は過か密みつなスケジュールで進められています。その月の1日，20日が月曜，水曜と重なる場合，現げん場ばは大おお忙いそがしになるわけです。例えば，『週しゅう刊かん少年ジャンプ』は月曜日発売と決まっていて，楽しみに待っている読者が全国にいます。私わたしたちはそれに間に合うように，センターから遠く離はなれた北海道や九州などのお店から作業を進めて，無事全国で一いっ斉せい発売できるように計画しています。

多くの書しょ籍せき・雑ざっ誌しを日々流通させるため，物流の課題は常つねに発生します。その中には，至し急きゅう解かい決けつしなければいけない課題から，現げん在ざい使っている設せつ備びが使いづらくなった場合はどのようにするかという長期的な課題までさまざまです。作業効こう率りつやコスト，設せつ備びのメンテナンスなどを総そう合ごう的てきに考えて，作業方法を変えるために，現げん場ばでテストをすることもあります。シミュレーションでうまくいっても，実じっ際さいの現げん場ばではなかなか思った通りのことができない場合もあり，課題は尽つきません。現げん場ばで作業する人には，長年の職しょく人にん的てきな勘かんを持っている方も多く，新しい方法がなじまない場合もあります。その場合はどうすべきか悩なやむところです。一方で，お互たがいに知ち識しきを出し合って考え，課題を解かい決けつできたときや現げん場ばの人たちと分かり合えたときは，仕事のやりがいを感じます。物流は専せん門もん性せいが高く，ベルトコンベヤなどの機器やシステムについて詳くわしい社員は，社内でも少ないのが特とく徴ちょうです。私わたしも社内で物流について質しつ問もんされることが多く，専せん門もん的てきな知ち識しきを生かせることが仕事のモチベーションにもつながっています。

出しゅっ版ぱん物流についてはまだまだ勉強をしている最中ですが，食品の物流を見る機会があり，多くの気づきや発見を得ることができました。食品物流ならではの工く夫ふうを今の仕事に役立てられるのではないか，と考えると気持ちが盛もり上あがりました。やはり私わたしの仕事において大切なのは，物流の現げん場ばです。実じっ際さいに自分の目で現げん場ばを確かく認にんすることを大切にしています。現げん場ばに直ちょく接せつ足を運び，実じっ際さいに担たん当とうしている方たちと話すことは，課題解かい決けつの近道だと思っています。自分の目で見て認にん識しきすることで，頭の中で考えていたときとは違ちがう課題解かい決けつ方法を見つけ，新たな発見をすることがあります。また，作業方法をより良くしたり変へん更こうしたりする場合は，現げん場ばの状じょう況きょうを正せい確かくに把は握あくした上で，変へん更こう案あんを作ることが大切です。直ちょく接せつ現げん場ばの方々と顔を合わせることで，信しん頼らい関係を築きずいていけると思っています。

就しゅう職しょく活動をしていた大学3年生の頃ころは，専せん門もん商社に就しゅう職しょくしたいと考えていました。トーハンと出会ったのは，商社について調べているときに偶ぐう然ぜん見つけて興きょう味みを持ったからです。その頃ころは，そもそもどういう仕事がしたいということもなく，入社試験を受けたのですが，採さい用よう担たん当とう者しゃの方がいろいろ話を聞いてくれて，こういう人たちと一いっ緒しょに仕事をしたい，と思ったのがきっかけです。入社をしたら，営えい業ぎょう担たん当とうになるのかなと思っていましたので，物流を担たん当とうすることになり驚おどろきました。今，入社６年目になりますが，６年間ずっと物流に携たずさわっています。最初の２年半は桶おけ川がわセンターで書しょ籍せきの物流，その後１年間は雑ざっ誌しの返品作業，そして現げん在ざいの部ぶ署しょに異い動どうになり，雑ざっ誌しの送品作業を担たん当とうして１年半がたちました。はじめは何も知ち識しきがなく，まさに一から学び，もがきながらいろいろ教えてもらって，仕事を学んでいるところです。書しょ籍せきと雑ざっ誌しの両方の流れがだいぶ分かってきたという感じですが，物流の仕事は奥おくが深く，もっとたくさんのことを学び，より良い物流を構こう築ちくしていきたいです。

実は子どもの頃ころは，本を読むのが苦手だったという記き憶おくがあります。特に，読書感想文は大の苦手でした。「エルマーと16ぴきのりゅう」（福音館書店）も読むことができなくて，必死で16匹ひきのりゅうの名前を書いたことを覚えています。読書が好きになったのは中学生の頃ころ。朝の10分間読書で，たまたまおもしろい本を見つけて，そこから本を読むようになりました。とにかくゲームが好きな子どもで，放課後は部活の卓たっ球きゅうに打うち込こみ，家に帰ったらゲームをするという毎日。勉強は得意ではありませんでしたが，社会が好きで特に日本史には興きょう味みを持っていましたね。昔から疑ぎ問もんを持ったら，とことん調べることが好きで，それは今の仕事にも役立っていると思います。

私わたし自身，子どもの頃ころからやりたいことを見つけたり，熱中したりすることが苦手でした。でも，誰だれでも自分が好きなものや大切にしたいものは何かしら持っていると思います。そういうものをすぐに見つけてしまう人もいれば，私わたしのようになかなか気づくことができない人もいるのではないでしょうか。一度立ち止まって，今，好きなものは何だろうとか，やりたいことは何だろうと考えてみてください。それは，大人になっても変わらずに，ずっと自分の人生についてまわるものです。私わたしももう少し早いうちに，自分の将しょう来らいのことを考えておけばよかったと思うことがあります。自分のやりたいことや将しょう来らいについて真しん剣けんに考える時間を少しでも持つと，将しょう来らいの選せん択たく肢しが大きく広がると思います。