卸売おろしうりって言葉を聞いた事はありますか。聞きなれない言葉だと思うので簡単かんたんに説明しますね。
皆みなさんが普段ふだん買い物をするときは，文房具屋ぶんぼうぐやさんとかスーパー，コンビニエンスストアなどで買い物をすると思います。そういうお店は小売店と呼よばれます。一方，商品をつくる会社はメーカーと呼よばれます。商品をまとめて買ってほしいメーカーと，少しずつ買いたい小売店をつなぐのが卸売業おろしうりぎょうです。
私わたしが勤つとめている福山商事は卸売業おろしうりぎょうをしている会社です。会社では，コピー用紙やティッシュペーパーといった紙製品せいひんや，水道管やスプリンクラーといった水道に関係するモノをメインに取とり扱あつかっています。その他にも，ビニールハウスや，工業製品せいひん，またオフィスで使う椅子いすや机つくえ，事務じむ用品などいろいろな種類の商品を取とり扱あつかっています。一般いっぱんの人は気づきにくいけれど，実は生活の中になくてはならないものを販売はんばいしているのが私わたしたちの仕事です。沖縄おきなわでは私わたしたちの会社ぐらい，たくさんの商品を取とり扱あつかっているところは他にないんですよ！

私わたしが所属しょぞくしている紙業部しぎょうぶは，その名のとおり紙を専門せんもんに担当たんとうしています。紙業部しぎょうぶは，新聞紙やチラシの元となる大きな紙を印刷会社に販売はんばいする一課と，コピー用紙や家庭で使われる紙などを取とり扱あつかう二課に分かれていて，私わたしは二課で働いています。ちなみに，沖縄おきなわには二つの大きな新聞会社があるのですが，その新聞紙は福山商事が販売はんばいしている紙が使われているんですよ。
皆みなさんが普段ふだんよく目にするノートの紙やコピー用紙といった紙は普通紙ふつうしといいます。それとは別に特殊紙とくしゅしと呼よばれる紙は光沢こうたくがあったり，凹凸おうとつがあったり，水に強かったりとさまざまな材質ざいしつのものがあります。キラキラした紙はキレイですし，ざらざらした触感しょっかんは触さわっても楽しいですよね。過去かこには，その特殊紙とくしゅしを使ってアーティストとコラボレーションした『KAMI・GAKARI』というイベントも開催かいさいしました。和紙でウエディングドレスを作って美術館びじゅつかんで展示てんじしたり，色とりどりの紙を使ってオリジナルのメッセージカードを親子で作るワークショップなどを行いました。
これからも私わたしの仕事を通して，もっと多くの人たちに紙の面白さや可能かのう性せいを知ってもらえるといいなと思っています。

紙業部しぎょうぶでの私わたしの仕事は，豊富ほうふな種類の紙の中から，お店の希望や使い道にあわせた商品を提案ていあんして，一般いっぱんのお客さんに向けて販売はんばいしてもらえるよう，お店やオフィスに「営業えいぎょう」をすることです。私わたしは会社に入って13年間，営業えいぎょうの仕事を続けています。紙業部には10人いますが，女性じょせいは私わたし1人だけです。紙業部では1人で営業えいぎょうに出かける事が多いので，どうしても皆みなと顔を合わせる機会が少なくなってしまいます。そのため，ミーティングの回数を多くして仕事の進み具合を確認かくにんし，小さなことでも声をかけて積極的にコミュニケーションを取るようにしています。 ライバル会社の商品もある中，私わたしが営業えいぎょうした商品を買ってくれると決まった瞬間しゅんかんは「よっしゃあ！」とアドレナリンが湧わき出でてきます。あきらめないで良かったなと，1番やりがいを感じる瞬間しゅんかんです。それを味わうためにも，商品の勉強をし，お客様が1番喜ぶのは何だろうと，相手の立場に立って一生懸命いっしょうけんめい考える事を大事にしています。

私わたしは一つの事に集中しすぎてしまい，周りが見えなくなってしまうことや，営業えいぎょうをするときに問題点に気づかず，たびたび上司に注意されることがありました。そのときはやっぱりイヤな気持ちになることもあります。でも，自分なりに問題を解決かいけつして営業えいぎょうをするとお客様から「幸地こうちさんがおすすめしたから使ってみようか」っていう言葉をもらえるんです。それからは，注意されたときもお客様の言葉を思い出すことで，何もしないで終わりにするのではなく，しっかり反省して「次に活かすぞ！」という気持ちに切きり替かえるようになりました。
今は，問題点がないかを自分で考え，物事をいろんな角度から見る工夫を毎日続けています。「言われたことだけやる」のは簡単かんたんですが，「言われる前に考える」ことを意識いしきしています。そうやって苦手な事を克服こくふくするように努めたり，他の部署ぶしょが取とり扱あつかっている商品の知識ちしきも常つねに頭に入れたりと，自分をレベルアップさせていくと，「幸地こうちさんがいる福山商事からまた商品を買いたいな」と思ってくれるお客さんが増ふえていくんです。それが嬉うれしいですね。

今は前向きに仕事に取り組んでいますが，高校生のときは悩なやみが多い日々ひびを送っていました。
親の勧すすめと好奇心こうきしん旺盛おうせいな性格せいかくから，高校は家から少し離はなれた所へ進学しました。同級生は初めて会う人がほとんどで，今までの環境かんきょうとは違ちがう新しい世界は楽しく，かけがえのない親友もできました。放課後に友達と遊ぶのはとても楽しかったけど，勉強や部活に打うち込こんだりすることがなかったので「本当にこれでいいの？」と心のどこかでいつも自問自答していました。悩なやみながらも高校生活を続けていましたが，3年生のときに，2人で過すごすことの多かった1番の親友が学校を辞めてしまうことが分かりました。勉強はあまり好きではなかったし，高校生活も楽しくなくなってしまうので，いっそのこと，私わたしも一緒いっしょに高校を辞めようかとも考えました。でも，辞めてしまうと，今まで積み重ねてきた高校生活を棒ぼうに振ふってしまうのではという不安もあり，自分でも自分の進みたい道がわからず，もやもやとした気持ちでいました。

そんなふうに悩なやんでいたある日，国語の授業じゅぎょうがありました。国語の先生が黒板に書いた詩を退屈たいくつだなあと思いながら渋々しぶしぶノートに書き写していたのですが，そのとき
「頑張がんばるんだよ/頑張がんばるんだよ/今そこを頑張がんばるんだよ」
という詞しの一節が，すうっと自分の中に入ってきたんです。すごく心に響ひびきました。
今自分が求めているのはこれなんだ，やっぱり自分の中には，あきらめたくない気持ちがあったんだ，と気づいて涙なみだぐんだことを覚えています。親友が辞めてしまうのは淋さびしいけれど，私わたしは必ず高校を卒業しようと決めました。決意をしてからも卒業までの道のりが遠すぎるように感じて，何度もくじけそうになったけれど，この詞しを思い出して，今日1日だけ頑張がんばってみよう，今この1時間の授業じゅぎょうだけでも頑張がんばってみようと，自分を奮ふるい立たたせました。
世の中には大人になって働きながら高校卒業の資格しかくを取る人もたくさんいますが，あのとき途中とちゅうであきらめなかったからこそ，今の自分があると思います。

高校を卒業すると決めたものの，その後の進路には迷まよいがありました。大学へ進学する憧あこがれはあったのですが，自分に自信が持てなくて無理だろうなと半ばあきらめていたとき，担任たんにんの先生が，地元の大学への推薦すいせん入試を勧すすめてくれました。学校が私わたしを推薦すいせんしてくれると聞いて「これはやるしかない」と思い，毎日小論文ろんぶんの練習を続けました。人生の中で1番といっていいほど机つくえにかじりついて，念願だった大学へ入学することができました。
高校を辞めようか悩なやんでいたときも，大学へ行くと決めて勉強をしていたときも，両親からは何度も何度も「あきらめないで」と言われていました。言われているときは，「何回も言わなくても分かっているよ」っていう気持ちになりましたが，今なら私わたしのためを思ってかけてくれたエールだと理解りかいできます。うっとうしいと思われても，声をかけ続けてくれた両親や担任たんにんの先生は，いつも私わたしにエールを送ってくれていたのです。友達や後輩こうはいも私わたしがつらいときには悩なやみを聞いて支ささえてくれました。そのおかげで頑張がんばってこられたことに，今はとても感謝かんしゃしています。

私わたしの人生を変えたきっかけは，国語の授業じゅぎょうの詞しでした。その詞しの言葉が響ひびいて行動に移うつせたのも，自分がずっと悩なやんで，答えを求めていたからこそだと思います。身近にあるきっかけに気づいて行動に移うつすか移うつさないかは自分自身です。私わたしも高校を辞めずに，今の仕事を続けてきたから，今こうして皆みなさんへお話しできる機会が持てたんだと思います。
例えばもし，あなたが勉強や運動が苦手で，下から順番を数えたほうが早くて悩なやんでいても，自分を卑下ひげすることはしないでほしいです。必ず，あなたが輝かがやける何かを見つける事ができると思います。そのきっかけをつかむまであきらめずに自分を信じていてください。そして自分だけでなく周りで声をかけてくれる人達も大切にしてくださいね。