私わたしは、「株かぶ式しき会がい社しゃ 正しょう太た郎ろう」という会社の代表を務つとめています。東京都中央区にある築つき地じ場外市場で「築つき次じ郎ろう」というお店を開いており、私わたしは経けい営えいをしながら、料理人としても働いています。
「築つき次じ郎ろう」では主に海かい鮮せん丼どんを提てい供きょうしていて、およそ20種類、海かい鮮せん丼どんのメニューがあります。例えば、大トロやエビ、ウニなどがのった「太た郎ろう丼どん」、サーモンとイクラがのった「親おや子こ丼どん」などがあります。中でもマグロの入ったものが一番人気です。他のお店でよく使われるのは、一度、冷れい凍とうされたマグロですが、うちは生のマグロを使っているので、味あじに自信があります。もちろん、マグロ以外の魚の鮮せん度どにも自信を持っています。
私わたしは三兄弟の長男なのですが、次男と三男も一いっ緒しょに店をやっています。従じゅう業ぎょう員いんは全部で13名、お店を回しているのは多いときで5名です。水曜日の定休日を除のぞいて、朝8時から15時まで営えい業ぎょうしています。また、予約が入ったときのみ、一組限げん定ていで夜も営えい業ぎょうしています。夜は近くの会社の方など常じょう連れんのお客さまが利用することが多かったのですが、最近は口コミで広げていただいているのか、いろいろな方が来られます。夜のメニューは海かい鮮せん丼どんではなく、ねぎま鍋なべ（ねぎとまぐろを使った鍋なべ料理）や刺さし身みの盛もり合あわせなどを提てい供きょうしています。

私わたしは、朝5時に起き床しょうし、天気やニュースを見てから、6時半ごろに店に行きます。天気やニュースをチェックするのは、仕入れ状じょう況きょうや価か格かくを予よ測そくするのに必要なためです。7時ごろになると、鮮せん魚ぎょや貝などを、それぞれ専せん門もんの仲なか卸おろし業者（競せりなど取引で買った商品を飲食店などに販はん売ばいする業者）がお店に持ってきてくれるので、その中からいいものを選び、悪いものは返へん却きゃくします。5社ほどの業者から仕入れています。
そこから8時の営えい業ぎょう開始に向けてスピード勝負で準じゅん備びをして、15時まで営えい業ぎょうします。海かい鮮せん丼どんは平日でも１日250食くらい提てい供きょうしているので、効こう率りつよく提てい供きょうするためにみんなで協力しています。例えば、私わたしがさばいた魚を次男が刺さし身みにして、三男が海かい鮮せん丼どんに盛もり付つける、といった役やく割わり分ぶん担たんをしています。
私わたしは、「築つき次じ郎ろう」を始める前まで魚をさばいた経けい験けんはなく、さばくこともできませんでした。そのため、お店を始めるときに、赤坂にある老舗しにせの高級日本料理店で調理をしていた料理人の方を雇やとい、その方から教えてもらって、半年くらいで一通り、魚をさばけるようになりました。
昼の営えい業ぎょうが終わった15時以い降こうは、残りの在ざい庫こを見たり、週間天気予よ報ほうを確かく認にんしたりしながら、翌よく日じつ、仕入れる魚を業者に注文します。このときも、鮮せん魚ぎょは私わたし、貝類は次男、冷れい凍とうのものは三男と役やく割わりが決まっています。注文を入れると、30分後くらいに返事が来るので、この時点で翌よく日じつ仕入れる魚が決まり、夜の営えい業ぎょうがない日は17時ごろに帰き宅たくします。

毎日、魚のとれる状じょう況きょうや値ね段だんが変わるため、仕入れには苦労します。例えば、台風が接せっ近きんしている地ち域いきでは、海に出て魚をとることが難むずかしいですよね。そういうときは、台風の影えい響きょうがない別の地ち域いきから魚を仕入れる必要がありますし、台風の影えい響きょうで魚がとれないと、市場に出回る魚の量も減へってしまうので、魚の価か格かくが上がります。逆ぎゃくに、価か格かくが下がることもあります。例えば、コロナ禍かでは外食が減へったことで魚が求められなくなり、価か格かくが下がりました。仕入れは、値ね段だんが1キロあたり何千円と変わる世界なので、天気やニュースを毎日確かく認にんして、状じょう況きょうを予よ測そくすることが欠かせません。
毎日、状じょう況きょうが変化して大変な仕入れですが、私わたしはお客さまに提てい供きょうする魚にこだわりを持っているので、妥だ協きょうは絶ぜっ対たいにしません。私わたしは海かい鮮せん丼どん屋を経けい営えいしていますが、実は魚があまり得とく意いではありません。そのため、生なま臭ぐさい魚はすぐにわかるんですね。これが仕入れのときに生かされています。魚のネタは鮮せん度どがよくないと、私わたし自身が納なっ得とくできません。また、仕入れた魚はおいしくなるまで何日か寝ねかせる必要があるものもあり、そういった魚を店に出すタイミングの管理も私わたしが行っています。

「築つき次じ郎ろう」は2017年に開店しました。「築つき次じ郎ろう」を始める前は、今の「築つき次じ郎ろう」の近くにある実家の魚ぎょ卵らん屋（いくらや明めん太たい子こなど、魚ぎょ卵らんの販はん売ばい店てん）の手伝いをしていました。「築つき次じ郎ろう」を始めるときには、築つき地じ市場が豊とよ洲すに移い転てんすることが既すでに決まっていましたが、私わたしは小学校も中学校も築つき地じにある学校に通っていて築つき地じで育ったため、なじみのある築つき地じ以外でお店を開くことは考えていませんでした。そんな築つき地じで何のお店を始めるか考えたとき、やはり築つき地じといえば「新しん鮮せんな魚」なので、海かい鮮せん丼どん屋を始めることにしました。新しん鮮せんな魚を提てい供きょうする店は寿す司し屋やもありますが、実家が立ち食いそばのお店をしていたとき、回かい転てん率りつを上げることが商売として大切だと気がついたので、寿す司し屋やではなく海かい鮮せん丼どん屋にしました。また、地元であるゆえに、仲なか卸おろし業者に昔からの知り合いも多いので、質しつのいいものを仕入れやすいのも、築つき地じで海かい鮮せん丼どん屋を開こうと思ったきっかけの一つです。
実はお店を始める前から、「築つき次じ郎ろう」が人気になることが予想できていました。今、「築つき次じ郎ろう」があるお店の場所には当時、別の海かい鮮せん丼どん屋が入っていたのですが、そのときに人の流れを見て、海かい鮮せん丼どん屋がこの場所でヒットすると確かく信しんしました。次男は魚屋に就しゅう職しょくしていたのですが、辞やめてもらい、一いっ緒しょに「築つき次じ郎ろう」を始めました。三男は、プロサッカー選手をしていたので、途と中ちゅうから加わってもらいました。

「築つき次じ郎ろう」を開店してからおよそ6年が経たちましたが、うれしいこともたくさんありました。例えば、お店で海かい鮮せん丼どんを食べた外国の方が、友達を連れて1年後にまた来てくれたのです。その方は、自分の国のお土産みやげも持ってきてくれました。築つき地じは観光地ということもあって、一度限かぎりのお客さまが多く、何度もお店に足を運んでくれるリピーターの方はそもそも少ないので、とてもうれしかったです。そのほかにもチェコから来て、日本に用があるたびにお店に来てくれる脳のう外げ科か医いの方もいます。日本に滞たい在ざいしている期間、毎日お店に来てくれたこともあり、とても気に入ってくれたようです。また、日本の有名ホテルで副料理長をしている外国の方が、やはり気に入って何度か食べに来てくれたのですが、そのときはプロの方に認みとめてもらえたようで、とてもうれしかったです。
「築つき次じ郎ろう」は、もちろん味あじに自信はありますが、お店の雰ふん囲い気きや従じゅう業ぎょう員いんの人ひと柄がらのおかげもあって、お店に何度も来てくれる方がいるのだと思います。築つき地じには若わかい経けい営えい者しゃが少ないのですが、うちは経けい営えい者しゃ・スタッフとも若わかいため、若わかい世代の方も来店しやすいのかもしれません。

私わたしはお店を運うん営えいする上で、店内の雰ふん囲い気きがよくなるよう心がけています。従じゅう業ぎょう員いんが暗い雰ふん囲い気きのお店は居い心ごこ地ちがよくないですよね？一いっ緒しょにやっているのが兄弟ですから、時には兄弟同どう士しでけんかをすることもありますが、お客さまがお店に来たらすぐに笑え顔がおで対たい応おうできるよう心がけています。その他にも「いらっしゃいませ」など、気持ちのよい挨あい拶さつも意い識しきしています。「築つき次じ郎ろう」には、もともと明るい従じゅう業ぎょう員いんが多いので、私わたしが接せっ客きゃくの指し導どうをすることもさほどなく、みんな自然と実じっ践せんしてくれました。
また、経けい営えい者しゃとして、従じゅう業ぎょう員いんのみんなが働きやすい環かん境きょうづくりをすることも欠かせません。例えば、仕事が終わった後やお昼休きゅう憩けいに、一いっ緒しょに食事をしながらいろいろ話します。そうすることで、働くときもコミュニケーションが円えん滑かつになりますし、働くモチベーションを上げることもできると思います。

私わたしは子どものころ、サッカーが好きで、サッカー選手になることが夢ゆめでした。そのため、幼おさないころからサッカーチームに所しょ属ぞくしていて、キャプテンを務つとめていました。当時のことを振ふり返かえると、そのときから人をまとめるのが好きで、得とく意いだったのだと思います。チームがいい雰ふん囲い気きになるようまとめていた経けい験けんは、お店の経けい営えいをする上で生かされていると思います。ただ、サッカーについては、小学校5年生のときに、「上には上がいるな、勝てないな……」と感じて、諦あきらめてしまいました。今は、諦あきらめるのが早すぎたのかなと、後こう悔かいしています。
また、私わたしは内気で、引っこみ思案な子だったと思います。明るかったのですが、新しいことにどんどん挑ちょう戦せんしていくタイプではありませんでした。そのため、常つねに慎しん重ちょうに物事を行う、石橋を叩たたいて渡わたる性せい格かくで、サッカーでも、勝てる試合ばかりしていました。入念な準じゅん備びをして、海かい鮮せん丼どん屋がヒットすると確かく信しんできてから「築つき次じ郎ろう」を開店して、実じっ際さいに売り上げも好調なのには、そんな私わたしの性せい格かくが生かされていると思います。

みなさんには、自分のやりたいことをいろいろやってみて、さまざまな経けい験けんをしてほしいです。私わたし自身、楽しそうだなと思ったことは、すぐ行動に移うつしています。例えば、バイクがかっこいいと思ったら、バイクの免めん許きょを取りに行きましたし、ゴルフや筋きんトレに興きょう味みを持ったら、すぐ始めました。いろいろと行動に移うつしたことは、続かなくてもいいと思います。継けい続ぞくをすることが大切ということもよく耳にしますが、私わたしは気が乗らない習い事はやめてもいいと思いますし、必ずしも何かに熱中する必要はないと思います。とりあえず、まずは行動して、続かないと思ったら、やめてみるのもいいと思います。
築つき地じで店をやっている者としては、みなさんに築つき地じに来てみてほしいです。東京に住んでいる方は近いと思うのですが、実じっ際さい、築つき地じに来られる方は、地方や海外からの方が多いです。東京に住んでいる方で、築つき地じに来たことがない方もいると思いますので、そういう方はぜひ足を運んでみてください。もちろん、東京の方以外もみなさん、どんどん築つき地じに来てほしいですし、鮮せん度どのいい魚を実じっ際さいに食べてみてほしいです。おいしいですよ。