私わたしは今、プランツコーディネーターとして働きながら、観葉植物のレンタルや販はん売ばいを行う会社の経けい営えいをしています。プランツコーディネーターというのは、設せっ計けい士しさんやデザイナーさんの要望や、環かん境きょう、予算に合わせた植物を選び、コーディネートする職しょく業ぎょうです。
私わたしが経けい営えいしている株かぶ式しき会社喜き芳ほう園では、主にオフィスや店てん舗ぽの方々に観葉植物のレンタルや販はん売ばいを行っています。オフィスや店てん舗ぽを新しく作ったりリニューアルするときに合わせて、「観葉植物などのグリーンを置きたい」という要望がオフィスや店てん舗ぽのオーナーさんから出ることがあります。しかし、観葉植物といってもどのくらい太陽光が入るか、風通しがいいか、などの環かん境きょうに合った植物を選んだり、適てき切せつに管理をしたりしないと枯かれてしまいます。オフィスのデザインや環かん境きょうなど含ふくめ、空間に合った植物を選び、レンタルという形でオフィスにお届とどけして、定期的にメンテナンスを行うのが私わたしたちの仕事です。オフィスビルだけでなく、マンションのエントランスにある植物や、公園や道路脇わきの花か壇だんなどの場所のメンテナンスと植うえ替かえ作業を請うけ負おうこともあります。また、「レンタルではなく自分で育てたい」という方もいらっしゃるので、昨年は販はん売ばいを行う実店てん舗ぽもオープンしました。

毎日のスケジュールとしては、7時45分に出しゅっ勤きんし、8時から全体朝礼を行った後に業ぎょう務むを開始します。まずは敷しき地ち内ないにある販はん売ばい用の植物や、温室に置いてある植物に水やりやメンテナンスを行い、その後は事じ務む作業。昼食後は外出をします。お客さまを訪ほう問もんしたり、依い頼らいされたコーディネートをデザイナーさんやクライアントさんと打ち合わせしたりします。戻もどってきたらそのコーディネートの見積もりなどを作成し、18時に業ぎょう務む終しゅう了りょうというサイクルです。
お客さまに観葉植物をレンタルした場合は月に2回、私わたしたちが伺うかがって水が足りているか、葉が枯かれていないか、良くない成長のしかたをしていないか、虫がついていないかなどをチェックし、水やりも含ふくめてメンテナンスをします。少し調子が悪そうな植物は元気なものと交こう換かんし、社内の温室で養生させます。また、観葉植物は卸おろし売うり市し場じょうで仕入れるのですが、東京都内には大田区の中央卸おろし売うり市し場じょうをはじめ、生花や植物を扱あつかう卸おろし売うり市し場じょうが何か所かあります。週に1回は午後からそれらの卸おろし売うり市し場じょうに行き、レンタルや販はん売ばいに使う観葉植物の仕入れをします。
1年の中でも忙いそがしい時期があり、4月と10月など企き業ぎょうの展てん示じ会かいがよく開かい催さいされるシーズンは、展てん示じスペースに置く植物の需じゅ要ようが高まります。また、11月はクリスマスツリーの準じゅん備び、年末はクリスマスツリーから門かど松まつに一いっ斉せいに変える作業があるので、この時期もかなり忙いそがしいですね。

デザイナーさんから依い頼らいをされるときは「この空間に何か植物を置きたい」という要望だけの事が多いので、緑を使ってどんな空間にするかというのを考えるのも私わたしの仕事になります。時々「こんなイメージの植物を置きたい」と明めい確かくに決まっているデザイナーさんもいるのですが、その植物と建物の環かん境きょうが合わないときは大変です。イメージに近く、その環かん境きょうでも育つような別の植物を提てい案あんすることもありますし、あくまでもその植物を使いたいというのであれば、私わたしたちが行うメンテナンスの方法を工く夫ふうすることで解かい決けつすることもあります。
また、新たに建物や内ない装そうを作る場合、私わたしたちが植物を入いれ込こむのは最終段だん階かいになるので、大たい抵ていは時間との戦いになります。作り付けの棚たななどに緑を置く場合も、実じっ際さいに出来上がった家具の寸すん法ぽうが設せっ計けい図ずと違ちがっていることもあるので、調整する作業が発生することもあります。建物ができあがってから「何か寂さびしいね……」と感じて私わたしたちが依い頼らいされることも多いので、スピーディーな対たい応おうが求められることも多いです。

植物を運はこび込こみ、すべてが出来上がったときにお客さまに「わあ、きれいだね」「だいぶ変わりましたね」と言っていただけた瞬しゅん間かんは、大きな喜よろこびを感じます。「いい空間になり、上司に褒ほめられました」とか、「訪おとずれた人に『素す晴ばらしいオフィスですね、羨うらやましい』と言われたんですよ」という言葉をいただけると「この仕事をしていてよかったな」と実感します。 身の回りに植物を置く効こう能のうに関してはさまざまなことが言われていますが、私わたしは視し覚かく的てきな癒いやしの効こう果かはもちろん、「コミュニケーションが生まれること」が大きいのではと思っています。例えば「そういえばこの木、うちでも育ててますよ」とか「これ、育ててみたいなあ」とか、交こう換かんしたときには「あ、この間と観葉植物が変わりましたね」とか、社員さん同どう士しの話のきっかけにすることができます。私わたしたちのレンタルする植物が、いいオフィス環かん境きょうをつくるお手伝いになれば嬉うれしいな、といつも思っています。

植物をコーディネートするときに心がけているのは、「インパクトのあるもの」をご提てい案あんすることです。例えばつい先日、「エントランスに何か緑を置きたい」という依い頼らいがあったので、2ｍ以上の大きな植物から、小さな植物までいくつかの種類を組み合わせ、小さな「森」を作るイメージで植物を入れました。そうやって工く夫ふうして植物を置くことで、空間がさらに"変わった"イメージを持つことができますし、お客さまにもより喜よろこんでいただけるのではと思っています。そのためにも、アイデアに使えそうなものの情じょう報ほう収しゅう集しゅうは日にち常じょう的てきにしています。表参道や銀ぎん座ざ、丸の内など流行の最先端を行くビルが集まっている場所に足を運んで事例を見たり、インスタグラムなどのSNSで海外のオフィスの写真を参考にしたり。韓かん国こくドラマなど、海外のテレビドラマからヒントをもらうこともありますね。 また、近年は環かん境きょう問題を意い識しきされているお客さまも多いので、例えば再さい生せい材を使った鉢はちを使用するなど、そういった工く夫ふうもしています。

株かぶ式しき会社喜き芳ほう園は、私わたしの父が始めた会社です。父が早くに亡なくなってしまったため、その後は私わたしの母が中心となり会社を経けい営えいしてきました。会社の創そう業ぎょうは1967年ですから「オフィス向けの観葉植物レンタル」という職しょく種しゅは、当時は他にはあまりなかったのではと思っています。幼おさないころから母の働く姿すがたを身近に見て育ったので、自分も家業を継つぎたいなと自然に思うようになりました。
私わたしは大学では家か政せい学部の生活造ぞう形けい学科というところでインテリアやデザインに関係したことを学びましたが、プランツコーディネーターになるにはいろいろな方法があります。例えば大学の園芸学部や園芸学科で植物の知ち識しきを身に着け、私わたしたちのような会社に入社し、現げん場ばで経けい験けんを積むのも1つの方法でしょうし、お花の問屋で働いたり、逆ぎゃくにインテリアデザイン的なことを学んでから植物の知ち識しきを身に着けていく、というのも方法の１つです。ただ、仕事をする上で設せっ計けい図面を渡わたされ、そこから具体的な空間をイメージしなければいけなかったり、内ない装そうや建けん築ちくの素そ材ざいの話になったりすることも多いので、そういうスキルと知ち識しきは必要になります。幅はば広ひろく知ち識しきが求められる仕事ではありますね。

子どものころは、わりとおとなしい子どもだったようです。工く夫ふうしてものを作って遊ぶことが好きで、例えばティッシュを丸めてお寿す司し屋やさんごっこをしたり、ぬいぐるみの目に紙を切って貼はってまぶたを作ったり、そういうことをしていました。家の手伝いも時々していて、クリスマス前の繁はん忙ぼう期きには、クリスマスツリーの飾かざりつけを手伝うのが恒こう例れいでしたね。中学校のときのクラブ活動も演えん劇げき部ぶで大道具・小道具担たん当とうでしたし「自分の手を動かして何かものを作るのが好き」という点はずっと変わらず、今の仕事とも繋つながっているなと思います。

これからの時代、環かん境きょう問題がより深しん刻こくになってくるはずです。そんな時代の流れの中、植物に関わる仕事というのは、けしてなくなることはないと思います。植物に関わる仕事がしたいと思っている人がいるなら、ぜひ頑がん張ばってください。
また、なるべく視し野やを広く持ち、チャンスがあればたくさん海外に行き、いろいろな事例をその目で見てきてください。私わたしは今、コーディネートの参考にするためにいろいろな国のオフィスの写真をSNSで見ることが多いのですが、アメリカ合がっ衆しゅう国こくや韓かん国こくといった情じょう報ほうに触ふれる機会の多い国はもちろん、たとえばブラジルなど日本からは行く機会や、情じょう報ほうの少ない国のオフィスデザインに驚おどろかされることが多いです。SNSやインターネットでいろいろな情じょう報ほうが手に入る時代ではありますが、若わかいみなさんにはなるべく現げん地ちに行って、自分の目で見て確たしかめて、「これはどうなっているんだろう」と考え、検けん証しょうしてほしいなと思います。