仕事人

社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!

東京都に関連のある仕事人
1979年 生まれ 出身地 熊本県
増田ますだ 純也じゅんや
子供の頃の夢: 航空整備士
クラブ活動(中学校): 軟式テニス部
仕事内容
新商品の開発やはんばいに必要なデータをぶんせきし,ていきょうする。
自己紹介
食べることが好きで,週末はよくおいしいものを食べに行っています。
出身大学・専門学校

※このページに書いてある内容は取材日(2018年07月11日)時点のものです

数学で「行動」や「こう」をぶんせきするおもしろ

数学で「行動」や「嗜好」を分析する面白さ

わたしは,かぶしき会社インテージという会社で「マーケティングリサーチ」という仕事をしています。
「マーケティングリサーチ」という言葉を,みなさんはあまり聞いたことがないかもしれません。わかりやすく説明すると「ぎょうが商品やサービスをていきょうする仕組みづくりを,データからお手伝いする」という仕事です。
この仕事についたのは,大学に通っていたときに「マーケティング・サイエンス」という学問を学んだことがきっかけです。この「マーケティング・サイエンス」というのは,数学を使って“その人が何を買うか”という「こうばい行動」,“何を買いたいか”という「こう」などを明らかにしていく学問です。それまで,「数学を学んでも何に役立つんだろう?」というもんわたしの中にあったのですが,大学のじゅぎょうを受けたことで「数学を使えばこんなにおもしろいことができるんだ」というのを知り,そこからどんどんのめりんでいきました。
「データを使ってこうばい行動を明らかにする」ことの楽しさを知って,今の仕事につくことを決めました。

スーパーやコンビニの買い物データを活用する

わたし自身が今メインでたんとうしているのは,スーパーやコンビニで買い物をしたときに記録される「ID-POSデータ」というもののぶんせきです。買い物をするさいにポイントカードをていしてもらい,こうにゅうした商品のバーコードをスキャンすると,どんな人がいつ,どこでどの商品をいくつ買ったか,というデータが残るんですね。データの量はそのスーパーやコンビニのにもよるのですが,大きなチェーンのものになると,ぼうだいな量になります。そのぼうだいな量のデータをぶんせきしていくことで,さまざまなことに役立てられるようになるのです。
たとえば「このくらい気温が高くなって暑くなり始めたらアイスが売れ始める」とか「このくらい寒くなってきたらおなべもとが売れ始める」といったことがわかってきます。また,ポイントカードを使ってもらうことで「その人がどんなものを買っているか」というれきがデータとして残るため,それをぶんせきしていくと,その人の「ものを買うときのかん」がわかります。健康こうなのか,かくが安いものを好むのか,かくが高くてもざいにこだわって買っているのか……。そういったお客さまの姿すがたが具体的に見えてきて,商品開発に役立てることができるのです。
また,お客さまじんかんがわかることで,「こういうお客さまにはこういう商品をおすすめしたらいいんじゃないか」というえいぎょう活動にもつなげることができます。よくビールを買う人にはビールのクーポンを発行したり,健康こうの方には健康食品のクーポンを発行したり,といったことがじっさいに行われています。

よりかくじつな成功に近づけるために

この仕事には「せいかい」がありません。「こうしたら,どのくらい売れるかかくじつそくできる」という方法はないのです。社会の変化でSNSの活用など,広告の形も変わってきました。そういう今,流行しているものや新しいものも取り入れて,いかにぶんせきしていくか,がむずかしいところですね。あるてい決まった方法はありますが,アレンジの仕方がげんだいにある,というイメージです。毎回,仕事のうえで苦労しているところです。
ときには,特定のいきのみで商品を売り出して,データを取ることもあります。これを「テストマーケティング」といいます。全国で新商品を出すと売れないときのリスクもあり,たくさんのコストもかかってしまいますよね。それをふせぐために,事前に特定のいきはんばいしてみるのです。
テストマーケティングに使われるのはしずおかけんが多いです。関東と関西の中間にあり,味覚的なところでも両方を受け入れてくれるのでは,と言われています。売れ行きが好調だったら,その後,全国でのはんばいを決定する,という流れになります。

自身が関わった新商品が世に出ることのうれしさ

仕事のやりがいを感じるのは,自分がたずさわった商品やサービスが世の中に出たときでしょうか。社会に対してこうけんできた,みなさんにとどけることができたという気持ちになり,とてもうれしくなります。自分が関わった新商品がコンビニなどで売られているのを見ると,ついみがこぼれてしまいますね。
新商品の開発自体に関わることもあります。まだ世の中に出ていない商品の売上そくを立てるためには,いくつかの方法があります。まずはアンケートなどを利用して「こういう商品を発売したいのですが,買ってみたいと思いますか」と聞く方法があります。また「だな」といい,今ある商品の売り場をさいげんして,そこに新しい商品を置き,どのくらい選ばれるかというデータを取る方法もあります。そうやって取得したデータを使い「こんな新しい商品を出せば,このくらい売れますよ」というのをそくし,ていあんしていくのです。

正しいじょうほうを伝えられるように

仕事をしていくうえで大切にしているのは,「ちがわないこと」です。なぜならわたしたちが仕事で調べたデータは,ぎょうの重要な決定や,はんだんに使われることが多いからです。たとえば新商品が「どのくらい売れるのか」というそくを立てるのに,わたしたちが調べたデータが利用されたとします。それは「新商品をあらかじめどのくらい生産すればいいのか」,そのために「どのくらいの材料が事前に必要なのか」といったはんだんにも関わってきます。しかし,もともとわたしたちが行ったデータぶんせきちがっていたり,データ自体がちがっていたりすると,「ちがった決定・はんだん」にみちびいてしまい,大きなそんしつにつながってしまうことになりかねません。そのため,「正しいじょうほう」を伝えられるように気をつけています。
データは「ただ集めればいい」というわけではありません。ほんてきにそのまま使える「きれいなデータ」というのはあまりなく,いろいろな作業を加えて「仕事に使えるデータ」にしなければいけないんですね。たとえば,とある商品の売り上げが大きかったとしても,その商品のへんぴんりつが大きかったとしたら,はたしてじゅんすいに売上データだけで「売れている商品」とはんだんしていいのかどうか。さまざまなようを考えたうえで,データを作っていかなくてはいけません。データからみちびされる答えが「ちがい」にならないために,データを作るときは,たくさんのことを考えています。

さまざまなところで使われる「データ」

さまざまなところで使われる「データ」

商品はんばいにおいて,データからわかることは本当にさまざまです。たとえば,「天候によって売れる商品がちがう」。これはほんしょうきょうかいさんが出しているデータで,たとえば雨などで寒い日はうすり肉の売り上げがえ,あたたかい日はあつり肉が売れるそうです。
「気温が上がったらアイスが売れる」ということにしても,「どのくらいの気温でどんなアイスが売れ出すか」というのはアイスによってちがうのです。そのため,どのタイミングでどの商品の広告を出すかというはんだんをするときは,とうけいデータをもとに決めていたりします。
また,この商品といっしょにこういう商品が買われている,という「へいばいけいこう」を調べることもできます。たとえばコンビニやスーパーで「おにぎりを買う人はサラダをいっしょに買うことが多い」というデータが出たとします。そういうときは,おにぎりとサラダの売り場を近くすれば,いっしょに買ってもらえるのうせいがより高くなりますよね。
これらのデータをぶんせきしていくために使うのは,実は数学のろんなのです。じっさいには「とうけいしょソフト」を使用するのですが,このソフトにまれたデータしょに必要なろんは,すべて数学にもとづいたもの。数学のおかげでぼうだいな量のデータをしょできるようになり,商品を売るためのよりくわしいリサーチがのうになったというわけなのです。

今やっている勉強は,未来へとつながる

今でこそ数学を使って仕事をしているわたしですが,中学生のころは,「今やっている勉強は,しょうらい,何に使えるのだろう?」と思っていました。おそらく,これを読んでくれている人の中にも,そう思っている人がいるのではないでしょうか。
でも,学校で勉強していたことが,いずれ自分のきょうや関心にみっせつにつながってくる時期がぜったいにあります。たとえば数学の場合,最近だと家電の中からもいろいろなデータが取得できるようになり,ぶんせきやリサーチのはばがより広がっています。また,サッカーのせんじゅつにも数学が活用されていたり,文学のジャンルでも「シェイクスピアの作品は実はちがう人が書いたのではないか?」という研究に数学が使われていたりするのです。具体的には,書かれた文章のけいこうぶんせきするためにとうけいぶんせきろんが使われているそうです。
数学だけではなく,今,学んでいることの中から,いずれは自分のしゅや仕事につながることが出てくるかもしれません。だから今は,目の前にある勉強をがんばってもらえれば,と思います。

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新井 紀子
残念ながら,2016年で凍結が発表された「ロボットは東大に入れるか?」プロジェクトを通じて,人口知能(AI)と,それを実現するための数学・確率をわかりやすく説明してくれている本です。知能とは何か?といった話や,国語の問題に解答するために必要な数学の話などを説明してくれています。ディスカッション形式で語られているので,読みやすくおすすめです。
デイヴィッド・サンプター/千葉 敏生=訳
サッカーというスポーツを数学で解明している本です。最近はスポーツで数学が活用されることが多くなってきました。内容は少し難しい部分もあるかもしれませんが,単純なヒストグラムや散布図で説明している部分もあるので,直観的に理解することも可能です。サッカーに限らず,運動部の人に,興味のあるスポーツでの数学の生かし方などを知ってもらえるとうれしいです。

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取材・原稿作成:東京書籍株式会社