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その他に関連のある仕事人
1987年 生まれ 出身地 その他
えいせいいんすとらくたー衛生インストラクター
ロビーナ・アジョクろびーなあじょく
子供の頃の夢: 医師
クラブ活動(中学校): 陸上部
仕事内容
アフリカのウガンダで,病院に手指の消毒などの公衆衛生を指導する。
自己紹介
旅行,ウィンドウショッピングが好きです。
出身高校
セントパトリックキグルガールズ(ウガンダ)
出身大学・専門学校
マケレレ大学公衆衛生学部

※このページに書いてある内容は取材日(2019年08月29日)時点のものです

手指のしょうどくの大切さを伝える「えいせいインストラクター」

手指の消毒の大切さを伝える「衛生インストラクター」

わたしは,東アフリカのウガンダという国で,アルコールしょうどくざいなどをせいぞうはんばいしている「サラヤ・マニュファクチャリング・ウガンダ(SMU)」という,日本ぎょうのサラヤかぶしき会社のげん法人で仕事をしています。サラヤは石けんやせんざいを作っている会社で,みなさんの家庭や学校にも,サラヤの商品があるかもしれません。

わたしはそこで,「えいせいインストラクター」という日本ではあまり聞かれない仕事をしています。病院で働くかんなどに,しんさつりょうのときに手指をしょうどくする大切さを伝えて,病院で手指しょうどくの管理がきちんと行われているかをチェックするのがわたしの仕事です。

ウガンダでは,トイレの後や食事の前,外出先から家に帰ったときに「石けんで手をあらう」というしゅうかんがあまりありません。また病院でも,しんさつりょうをするときにかんが手指をしょうどくしなければ,かんせんしょうが広がってしまうのうせいが高くなることもあまり知られていません。そのため,手あらいやしょうどくしゅうかんになっていれば,ふせげるかんせんしょうにかかって命を落とす人が少なくないのです。 えいせいインストラクターは,そのようなすくえる命を守るために,手指のえいせいの大切さを伝える,とても重要な仕事なのです。

東アフリカにある自然ゆたかな国・ウガンダ

東アフリカにある自然豊かな国・ウガンダ

ウガンダはアフリカの東に位置していて,日本の本州と同じくらいの広さです。日本からは飛行機で18時間かかります。ライオンやゾウ,キリン,シマウマなど多くの野生動物が生息していて,緑ゆたかな自然にめぐまれていますが,首都のカンパラではこうそうビルやホテルが立ちならび,車も多く,みなさんがそうぞうする以上にはってんした大都会でおどろくでしょう。気候もごしやすく,ウガンダの人々はとてもフレンドリーです。
ウガンダの子どもたちは学校が終わると,家のお手伝いをします。そうや料理,せんたくおさないきょうだいの世話などをします。日本の子どもたちは,放課後も習い事やじゅくいそがしいと聞きますが,それとはずいぶんちがいますね。しかし,最近はウガンダでも教育熱心になっているようです。

将来の夢は,父と同じ「お医者さん」

将来の夢は,父と同じ「お医者さん」

わたしはカンパラで生まれて,小学校高学年のときに,トロロというウガンダの東にある町に引っしました。小さいころわたしはとてもゆうとうせいで,両親の言うことをよく聞いて,活発な子どもでした。だれとでもすぐに友だちになれるせいかくで,スポーツも大好き。特に走るのがとくでしたね。

わたしの父は医者で,げんざいは州立病院をかんとくする立場です。なので,おさないころから病院はわたしにとって身近なそんざいでした。おさなわたしは,キャビンアテンダントになって空を飛ぶ仕事にあこがれていましたが,大きくなるにつれて,父と同じ医者になりたいと思うようになりました。父はじょうに研究熱心な医者で,その仕事ぶりに大きくえいきょうを受けたのです。
また,父の働く病院に行くと,多くのじょせいにんしん・出産の十分な手当を受けられず,命を落とすなど悲しい場面を見てきました。なので,そのようなじょせいたちの役に立ちたいという思いもありました。日本ではそうぞうできないかもしれませんが,ウガンダでは出産はまさに命がけで,にんさんぼうりつがとても高いのです。さんじん科医になって,一人でも多くのお母さんと子どもをすくいたい,そんな風に考えていました。

かんせんしょうふせぎ,人々の健康を守る「こうしゅうえいせい

感染症を防ぎ,人々の健康を守る「公衆衛生」

日本でも同じだと思いますが,ウガンダでは医者やべん,エンジニアは人々からそんけいされる地位の高い仕事です。父からも「けいの勉強をしっかりしておくと,しょうらい,いい仕事につけるのでがんばりなさい」とよく言われました。

しかし,医学部に進むのはとてもむずかしく,高校卒業時点では,同じりょうけいの薬学部を目指すようになりますが,その薬学部もきょうそうりつが高く,大学では第2ぼうだった「こうしゅうえいせい」を学ぶことにしました。やくざいりょうをするのが仕事ですが,こうしゅうえいせいは病気をぼうする仕事です。わたしぼうの力で人々の健康を守ることをしようと決めたのです。

こうしゅうえいせいを学ぶことで,その大切さがよくわかり,自分が目指す道へのやりがいやよろこびを感じるようになりました。「予防をする」ことは,健康な人が病気になることをふせぐということです。病気になって病院をおとずれる人々よりも,はるかにたくさんの人々を病気からすくうことができる仕事です。お金の面でも,病院にかかる前にぼうをしっかりしておけば,りょうにかかるお金よりも少ないきんがくむのです。

大学を卒業してもしゅうしょくむずかしいウガンダで,日本ぎょうのサラヤにしゅうしょく

大学を卒業しても就職が難しいウガンダで,日本企業のサラヤに就職

大学を卒業してからは,地元であるトロロ市のこうしゅうえいせい部門でボランティアをしていました。ボランティアをしながら,えいせいけん分野でいきにさまざまなサービスをていきょうするだんたいなどにれきしょを送っていましたが,なかなかさい用してもらえませんでした。そんなとき,友人からサラヤが働く人をさがしているというじょうほうをもらって,めんせつを受けたのです。

わたしが入社したのは2012年ですが,当時,ウガンダでサラヤという会社を知っている人はほとんどいませんでした。なぜなら,サラヤはこれからウガンダで事業をてんかいしようとしていて,そのじゅんのために働く人をさがしていたからです。

どんな会社かもわからないままめんせつを受けて,さいようしてもらったのですが,これまでけいけんしたことのないような,手指のしょうどくという具体的な分野で自分のキャリアがスタートできることにワクワクする気持ちがおさえられませんでした。

病院ですら,石けんで手をあらえばOKという感覚

病院ですら,石けんで手を洗えばOKという感覚

当時のウガンダでは,手や指をアルコールしょうどくするという考え方が,まったく知られていませんでした。こうしゅうえいせいを勉強していたわたしですら,アルコールしょうどくざいというものがあることすら知らなかったのです。それまでは手のしょうどくというと,石けんで手をあらえば十分と思っていましたし,病院で働いている人たちも同じ感覚だったと思います。

しかし,かんかんじゃしょうどくしていない手でれ合うことで,さまざまな病気がかんせんしていきます。インフルエンザやけつまくえん,ノロウイルスのほか,エボラウイルス病など,ぼうりつの高いおそろしいかんせんしょうもあります。そういうさまざまな病気が,手指のアルコールしょうどくをしっかりすることでぼうできると知ったときは,とても感動しました。

病院で働く人たちにしきを伝え,しゅうかんにしてもらう

病院で働く人たちに知識を伝え,習慣にしてもらう

わたしの仕事は,まずは国内で一番の国立病院にアルコールしょうどくざいを置いてもらうため,そのひつようせいを病院で働くスタッフに知ってもらうことからスタートしました。
アルコールしょうどくざいかんせんふせぐことにとてもゆうこうであることを科学的に説明して,どんなときにどのように使うかを細かくどうします。ただし,それまでのやり方を変えるのはかんたんなことではありません。何度もり返し説明をして,しゅうかんにしてもらいました。
かんじゃを守るだけでなく,りょうげんで働く自分自身がかんせんしないためにもアルコールしょうどくが必要だと伝えることで,積極的に取り組んでくれるようになったと思います。

しょうどくざいを病院にせっしたら,次はそれが正しく使われているかもチェックします。ふだんの病院の様子を観察して,しょうどくしなければいけないタイミングできちんと手指をしょうどくしているかを数えて,正しく使われているかどうかをげんのスタッフにほうこくかいぜんが必要な点があれば,どのタイミングでしょうどくしなくてはいけないということをり返し話します。
消毒しなくてはいけないタイミングは,例えば,かんじゃしんさつする前後,りょうを使う前後などですね。定期的にチェックすることで,きちんとしゅうかんとして定着していきます。

しょうどくざいゆうこうせいについて病院のスタッフに伝えてきたことで,今ではアルコールしょうどくざいそのもののことが『サラヤ』とばれるようになり,しょうどくざいがなくなると「サラヤを持ってきて」と注文が入るほどです。

地方の病院にもアルコールしょうどくざいを広めていきたい

地方の病院にもアルコール消毒剤を広めていきたい

首都カンパラの病院では,アルコールしょうどくざいが当たり前になりつつありますが,こうがいほうではまだまだ知られていないのがげんじょうです。これからはもっとへき地の病院にも出かけて,さらにえいせいインストラクターとしてアルコールしょうどくひつようせいを伝えていきたいと思っています。

この仕事をしていて一番うれしいのは,人々に健康でいるためのしきを伝えられるということです。ぼうりつの高いおそろしいかんせんしょう,エボラウイルス病なども,ぼうするしきを持っているだけでかんせんふせげ,多くの人の命をすくえます。

今,世界ではSDGsという目標に向けて各国が協力して取り組んでいます。わたしたちの活動も,ゴール3「すべての人に健康とふくを」というものを達成するのに役立っています。アルコールしょうどくによるかんせんしょうぼうはシンプルですが,その効果はとても大きいものです。その活動に自分が参加していることをほこりに思っています。

この記事を読んでくれているみなさんにも,自分とちがかんきょうらす人たちに対して,関心を持ち,心を開いて積極的に交流してほしいと思います。あなたの行動が,世界のだれかの人生を変えるかもしれません。例えば,日本をはなれてアフリカでこうけんするという方法も,人生をゆたかにしてくれる1つのプランになるかもしれません。

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取材・原稿作成:日経BP