私わたしが働いているのは、「生活協同組合コープさっぽろ」という組そ織しきです。いわゆる「生協」は会社ではありません。組合員さんたち一人一人が出しゅっ資し金きんを出し、運うん営えいに参加しているのが生協です。日本全国にはたくさんの生協があります。具体的な事業として、スーパーマーケットの運うん営えいや、注文いただいた商品を組合員さんの自じ宅たくまでお届とどけする宅たく配はい事業など小売業が中心です。組合員さんの生活に関わるさまざまなサービスを提てい供きょうしています。ちなみに、コープさっぽろでは、スーパーマーケット事業や宅たく配はい事業のほかに電力事業や配食事業などを行っています。

北海道にはコープさっぽろのスーパーマーケットの店てん舗ぽが108店てん舗ぽ（2023年3月20日現げん在ざい）あり、私わたしはこのスーパーマーケットの「販はん促そく部門」に在ざい籍せきしています。主な仕事は、お店のプロモーションとデータ分ぶん析せきです。プロモーションの仕事ですが、例えばみなさんのよく行くスーパーでも「今週は中ちゅう華かフェアがあります」といったような企き画かくを店頭で見かけたことはありませんか。お店のセールテーマや企き画かくを作成するのが販はん促そく部門の仕事です。それを多くの方に知ってもらうためにチラシを作さく製せいしたり、お店の表ひょう示じ物やBGMを考えたり、テレビCMやWEB広こう告こくなどを打ったりし、より多くの組合員さんに来店いただくことが私わたしの仕事です。

私わたしは中ちゅう途と採さい用ようで、2011年にコープさっぽろに入りました。コープさっぽろで最初にやった仕事は、レシートデータの分ぶん析せきです。もともと学生時代から食品に関わるような仕事をしたかったのと、地ち域いきに貢こう献けんできるような仕事がしたいという思いもあったので、生協は自分に合っていたと思っています。2015年から現げん在ざいの販はん促そく業ぎょう務むをやることになりました。
さてデータ分ぶん析せきですが、活用方法はいろいろあります。例として、データを使えば食品ロスを少なくすることができます。例えば、お店では営えい業ぎょう中に雨が降ふって組合員さんの来店が減へりそうなときはお惣そう菜ざいの生産を減へらしたり、いつもより早く値ね引びきをしたりして商品が廃はい棄きされないように対たい応おうをします。どんなときに何が売れるのか、組合員さんの目線でよい売り場にしていくには分ぶん析せきは欠かせません。

商品の発注にもデータを使用しています。商品の発注は各売り場の担たん当とう者しゃ、例えば、お菓か子し売り場ならお菓か子し売り場の担たん当とう者しゃが、必要な量を見み極きわめながら発注しています。ただ、中にはクリスマスのチキンや節分の豆、ひな祭りの日の料理など、年に一回、一日しか売るチャンスがないようなものも多く、そういったものはどれくらい売れるか、数の予よ測そくが立てにくいです。そういうものは本部の担たん当とう者しゃが過か去この売上データや直近のトレンドなどを加味し最さい適てきな数を決めています。
また一部の商品については、AIで発注量を予よ測そくするという取り組みを始めています。店頭の在ざい庫こ商品の数を1時間に何回か確かく認にんし、それに天候や曜日で大体お客さまがどれぐらい来るかという情じょう報ほうや過か去この売上実じっ績せきなどを踏ふまえて、AIが発注量を予よ測そくします。その予よ測そく値ちに基もとづき、こちら側で調整しながら発注を行っています。それにより発注業ぎょう務むの軽けい減げんにつながっています。

このようにデータ分ぶん析せきは重要ですが、一方で「データ分ぶん析せきだけに頼たよらない」ことも大事です。例えば、店てん舗ぽでお客さまがどういう風に売場を見て動いているのか、そのときにお客さまがどういう気持ちになったかなど、そういうことはデータにはできないわけです。
また私わたしたちが取れるデータは売上データです。買われた商品のデータは取しゅ得とくできますが、買われなかった商品のデータというのは手に入りません。当たり前のことですが、そこには買われなかった理由があるはずです。もしかしたらとても興きょう味みはあったけど値ね段だんが高かった、自分が欲ほしい少なめのサイズがなかったなど、理由があったかもしれません。しかしそれはデータだけではわかりません。
つまりデータだけでは全部を把は握あくすることはできない、必ず不足する部分が出てくるのです。どんなにAIが発達しても、AIはデータがないと動けませんので、分ぶん析せきしきれない部分が残るはずです。だからなるべく実じっ際さいにお店を見てお客さまを観察することは欠かせませんし、データ活用するときも、そのデータはどういう風に生まれているか、その特とく性せいを把は握あくしたうえで使うということを心がけています。

仕事をしていてうれしさを感じるのは、「売れたとき」です。特に自分が立てた企き画かくで反はん響きょうがあったときはうれしいです。例えば、2019年に名古屋の名産を集めた「名古屋フェア」を企き画かくしたことがあります。よくデパートでやっている企き画かくをまねたものですが、かなり反はん響きょうがあり、以後、他の地ち域いきフェアも定期的に行うようになりました。基き本ほん的てきにスーパーは過か去この企き画かくから当年の企き画かくを作り、売上げを伸のばしていくのが一番ベーシックな方法なので、過か去こにやったことのないことをやるのは難むずかしかったですが、だからこそ、「やったことがない」ことで反はん響きょうが大きいとうれしいです。

たとえ私わたしが企き画かくを立てて「やるぞー！」と言っても、周りの人たちが協力してくれないと企き画かくはできません。いくら「データ的にはこうだよ」と言っても、それだけでみんなが動いてくれることはありません。だからこそ周しゅう囲いに共感いただいて、やっていただくよう説明していくことや雰ふん囲い気きをつくることは大事だと思います。データだけでなく「総そう力りょく戦」なのです。

今これを読んでいる人たちに伝えたいのは、「勉強は学校を卒業してもずっと続く」ということです。どんな職しょく業ぎょうもそうですが、仕事は社会情じょう勢せいの変化の影えい響きょうを受けます。スーパーマーケットの仕事もそうで、地じ震しんや台風などの天てん災さいや新しん型がたコロナウイルスの流行、世界の紛ふん争そうなどのさまざまな事じ象しょうが、自分の仕事につながってくることを日々実感しています。さまざまなことにアンテナを張はり、いろいろな人と話をしたり、多様な体験をしたりして、興きょう味みの幅はばを広げることをやっておくと、将しょう来らい役に立つと思います。