日本財団

海・川の仕事人

〈ビワマス漁〉
の仕事

滋賀県近江八幡市沖島町
西にし居い 正しょう吉きちさん

私わたしは滋し賀が県けん近お江うみ八はち幡まん市しの,琵び琶わ湖こに浮うかぶ沖おき島しまに生まれ育ち,湖で漁をしてきました。沖おき島しまは,湖の島としては日本で唯ゆい一いつ,人が住む島で,漁業が盛さかんです。日本最大の湖である琵び琶わ湖こには,魚やエビ,貝などの恵めぐみが多く,琵び琶わ湖こにしかいない固有種も多いんです。私わたしは,若わかいころは父と,のちには妻つまと一いっ緒しょに,アユ,ビワマス,ホンモロコ,ニゴロブナ,小エビなど,四季折々にさまざまな漁をして,湖の恵めぐみに生かされてきました。

私わたしは,ビワマスの漁がいちばん好きです。ビワマスは,50cmにもなる琵び琶わ湖こ固有のサケ・マスの仲間です。大きくて迫はく力りょくがあり,目も鋭するどくて風ふう格かくがあります。しかし回遊しているので漁がむずかしいんです。ビワマスは12,3℃の水温帯が好きで,漁期の夏には深場にいます。どの場所のどの深さにいるか想そう像ぞうし,さらに網あみの目がよく広がるよう,潮しおの流れがゆるい場所に網あみをしかけないとビワマスはとれません。天候などによって,水温も流れも複ふく雑ざつに変化します。私わたしは,長年の経けい験けんと勘かんで,網あみを張はる場所を判はん断だんしてきました。

30代のころ,私わたしには「毎日屋」というあだ名がつきました。天気が荒あれて他の漁りょう師しが沖おきに出ない日でも,わずかな風雨の止やみ間をついて,ほぼ毎日漁に出たからです。漁業は,人の行動に左右されず,自分の判はん断だんと責せき任にんで行うものです。毎日漁に出るには,自然を読む観察力と経けい験けんが頼たより。天気が急変しヒヤリとしたこともありますが,毎日の漁で積み上げた経けい験けんは,自分の判はん断だんへの自信になり,漁の成果にもつながったと思います。

助成:公益財団法人 日本財団
協力:NPO法人 共存の森ネットワーク,愛南漁業協同組合
取材・執筆:大浦 佳代/イラスト:友永 たろ,川島 星河,広野 りお