仕事人

社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!

福井県に関連のある仕事人
1970年 生まれ 出身地 福井県
麻王あさお 伝兵衛でんべえ
子供の頃の夢: サッカー選手
クラブ活動(中学校): サッカー部
仕事内容
おいしい野菜をさいばいし,お客さまのところへとどける。
自己紹介
体を動かすのが好きで,仕事で毎日動き回るのも苦ではありません。今は特にスポーツはしていませんが,仕事が休みの日には3人の子どもといっしょに公園へ遊びに行ったりしています。
出身大学・専門学校

※このページに書いてある内容は取材日(2017年06月19日)時点のものです

おいしい野菜をさいばいする

おいしい野菜を栽培する

わたしふくけんせんぎょう農家をしており,ふく生まれのブランドトマト「こしのルビー」をはじめ,水菜やチンゲンサイなどの葉物野菜,ズッキーニ,スナップエンドウ,イチジクなど,約30種類の野菜や果物を育てています。たくとなりにある10むねのビニールハウスと作業小屋が仕事場で,いっしょに働いているのは,わたしわたしの母親,パートさん3人の計5人です。
野菜のさいばいにはとても手間がかかります。例えば「こしのルビー」は,なえを植えてからしゅうかくまでの間,ビニールハウス内の温度管理や水やり,芽かき(必要ない芽をのぞく作業),げ(大きくなったトマトのえだを上からヒモでささえる作業)などの世話をします。つうのトマトは実が青いうちにしゅうかくをしてついじゅくしゅうかく後に一定期間置くことで,あまさをしたり,果肉をやわらかくすること)させますが,「こしのルビー」は実が真っ赤になってからしゅうかくをします。その方があまみも栄養もして,おいしくなるんです。赤く色づくちゅうで実がれたり,地面に落ちてしまわないように,毎日トマトの成長の様子をチェックします。

「行商スタイル」でしんせんな野菜を売り歩く

「行商スタイル」で新鮮な野菜を売り歩く

日がのぼるのが早い夏の時期は,朝5時ごろに畑に行きます。まずは水やりをし,その日はんばいする分の野菜を1時間半ほどかけてしゅうかくします。その後,しゅうかくした野菜のふくろめ作業を1時間ほどおこない,その後は芽かきなど野菜の世話をします。午前中にここまでの作業を終わらせます。
つうじょうの農家は,育てた野菜を農協へしゅっしてスーパーなどではんばいするのがいっぱんてきですが,わたしの場合はその日の朝にしゅうかくした野菜を自家用車に積んで,自分でちょくせつお客さまの家やしょくへ売りに行く「行商」が主なはんばい方法です。月曜から金曜までだいたい決まったルートを回り,一週間で約100か所のお客さまにおとどけしています。注文を受けた野菜をとどけるわけではなく,その日にれた野菜をその場で見てもらい買ってもらうので,それぞれの野菜の食べ方やとくちょうをしっかり案内し,はんばいするようにしています。また,「こしのルビー」はインターネットや電話で注文を受け,日本全国への発送もしています。
この仕事にいてから使っている「あさでん」という名は,せん代々伝わるあさ家の屋号(じん事業のめいしょうやお店の名前などのこと)で,それをブランド名としています。「伝」の文字は,自分で野菜をとどけ,自分の口でおいしさを伝えるわたしの商売にぴったりで,この名前にほこりをもっています。

自然の力にはかなわない

自然の力にはかなわない

毎日きちんと世話をして野菜を育てていても,やはり自然の力にはかないません。以前,わたしが住んでいるいきばくだんていあつおそったことがありました。そのときはビニールハウスが風や雨のえいきょうやぶれてしまい,しゅうかく間近の野菜がだめになってしまいました。ショックももちろんありましたが,いつまでもくよくよするのではなく,また一から育てることに気持ちをえました。自然と上手に付き合うことも,農家の仕事のひとつですからね。
曜日ごとにはんばいルートは決まっていますが,いつも買ってくれる人に会えなかったりして,その日しゅうかくした分の野菜を売り切れないこともあります。「こしのルビー」の場合はれいとうぞんし,ドレッシングやトマトパウダーに加工しています。なるべくててしまわないようにふうして,しゅうかくした分の90%以上を商品としてはんばいできるようにしています。せっかく育てた野菜をむだにしてしまっては,もったいないですしえきも出ませんからね。

「おいしかった」とほめてもらうために

「おいしかった」とほめてもらうために

仕事をする中で一番の喜びは,いつも配達するお客さまに,「この前の野菜,おいしかったよ」と言ってもらえることです。いっしょうけんめい育てた野菜の感想をちょくせつ聞けることがわたしはんばい方法のりょくで,お客さまの声を聞くたびに,またがんろうと思えます。「こしのルビー」のしゅんの時期には,野菜を入れたふくろからトマトの赤色が見えたしゅんかんに,「待ってました!」とばかりにお客さまががおになります。すると,わたしも自然とがおになってしまいますね。トマトぎらいのお子さんがいるお母さんから,「うちの子,あささんの『こしのルビー』だけは食べるんだよ」と言われることもあります。野菜のおいしさを表すには,せんようの機械でとうはかるなどいろんな方法がありますが,本来はもっとたんじゅんなものだと思うんです。子どもがたくさん食べてくれたなら,それはおいしいというしょう。一流のシェフに味をみとめてもらうことも,子どもたちがちゅうで口に運んでくれることも,わたしにとっては同じくらいうれしいことです。

人とのつながりを大切にして今がある

人との繋がりを大切にして今がある

わたしの商売は,お客さまにささえられて成り立っています。配達先では,いつも野菜を買ってくださるお客さまが,別の人に「あささんの野菜はおいしいんだよ」とおすすめしてくれることが多いです。そうしてどんどんお客さまの輪が広がっています。以前,お客さまのしょうかいで,ふく老舗しにせへ野菜をとどけるようになったことがありました。そのお店のご主人がわたしの「こしのルビー」の味を気に入ってくれて,そのころちょうど開発中だったトマトゼリーの材料に使ってもらえることになりました。商品が完成したとき,「ゼリーの商品名は『でん』にするつもりだよ」と言われて,自分の名前をつけてもらえるなんてとおどろくと同時に,とてもうれしかったです。そのゼリーはテレビでしょうかいされたのをきっかけに,毎シーズン売り切れるほどの人気になっています。人とのえんでいろんな仕事にもめぐまれて,かんしゃの思いでいっぱいです。これまで知り合った人とも,これから出会う人とも,つながりを大切にしていきたいです。

自転車店でのけいけんが「行商スタイル」につながった

自転車店での経験が「行商スタイル」につながった

大学を卒業した後,ふくけんぎょうえいぎょうたんとうとしてしゅうしょくし,東京のてんはいぞくされました。2年半ほどつとめましたが,「このまま一生サラリーマンを続けるよりも,自分のきょうのあることをしたい」と思うようになり,会社をめて,大学時代にお世話になっていた東京の自転車ショップで働き始めました。そのお店はセミオーダーの自転車を作るメーカーで,ショップもへいせつしていました。お客さまにちょくせつはんばいするスタイルは自転車メーカーとしてはめずらしく,このときのけいけんが,野菜を作って売り歩く,今のわたしの原点になっています。
7年ほどそのお店で働いた後,わたしが長男だったということもあり,ふくけんもどることになりました。わたしの家はもともと米農家だったので,農作業に必要な道具が一通りそろっていました。その道具を使って,米よりももっとどくせいが出せるものを作ろうと考え,野菜農家になる決意をしました。それから半年ほどは,ふくけんの農業者を育成する機関で,農業の勉強をしました。けんしゅういっかんで「こしのルビー」を作る農家をおとずれたさい,おいしくて人気もあるブランドトマトを作るこうけいしゃが不足していることを知りました。きちんと育てれば売れるチャンスもあるし,ふく生まれのブランドを守りたいという思いもあって,さいばいすることを決めました。

田んぼの手伝いは好きではなかった

田んぼの手伝いは好きではなかった

わたしの父親は本業がこういんで,けんぎょうで米農家をやっていました。小学校から高校まで,春休みは種まきや田植えのじゅん,ゴールデンウィークは田植えなど,長期休みのときにかぎって田んぼの手伝いをさせられていました。「友達は家族と遠くへ旅行に行ったりしているのに,どうして自分だけ田んぼの手伝いをしなくちゃいけないんだ!」と,当時は思っていましたね。当時は,自分が農家になるなんて考えてもいませんでした。今かえると,平日はこういんの仕事をこなし,休みの日に米を育てていた父親はすごかったんだなと感じます。
田んぼの手伝いはしぶしぶやっていましたが,体を動かすのは好きでしたね。中学と高校ではサッカーをやっていました。今でも毎日朝から夕方まで仕事で体を動かしているので,サッカーでつちかった体力は生かされていると思います。体力がなくてはなかなか続けられない仕事ですから。

めることを見つけよう

打ち込めることを見つけよう

みなさんには,いろんなことにちょうせんして,自分の好きなことを見つけてほしいです。しょうらいどんな仕事をしようかなと考えるときでも,しょくぎょうしきしてせばめてしまうのではなく,「自分がめること」というじゅんを大切にしてください。世の中の流れはとても速いので,例えば今は「こんなことが仕事になるのかな」と思うようなことでも,みなさんが大人になるころには,世の中に必要とされているのうせいもあります。流行に流されないで,自分が本当にきょうのある仕事を見つけてください。
わたしとしては,農業にきょうをもつ人がえてくれるとうれしいですね。機会があれば近くの農家の手伝いをして,自分が食べているものがどのように作られているのか学んでみてください。農業の苦労ややりがい,食べ物の大切さを体で感じてもらえるはずです。

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私のおすすめ本

フィリップ・チェスターフィールド
著者が自分の息子に宛てて,人生の心得を綴った一冊です。初めて読んだのは高校生くらいのときでした。ちょうど反抗期だったので,自分の父親とはあまり話さなかったのですが,この本から人生のいろいろな教訓を学びました。当時は分からなかった内容も,大人になって読み返すとなるほどと思えます。

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取材・原稿作成:株式会社 fuプロダクション /協力:三谷商事株式会社