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神奈川県に関連のある仕事人
1987年 生まれ 出身地 愛知県
小松こまつ 智広ともひろ
子供の頃の夢: 建築士
クラブ活動(中学校): 陸上部
仕事内容
げんで役立つロボットをつくる。
自己紹介
おおらかで,のんびりしたせいかくです。きょうがあることには,しんしょくわすぼっとうするところがあります。休日は,きょうのあるせんもんしょを読んだり,気分てんかんにカフェに出かけたり,ランニングで身体を動かしたりしています。
出身大学・専門学校

※このページに書いてある内容は取材日(2020年12月16日)時点のものです

人の代わりにけんせつ機械を動かすロボットをせっけい・開発

人の代わりに建設機械を動かすロボットを設計・開発

わたしは「コーワテックかぶしきがいしゃ」という会社でロボットをせっけい・開発しています。コーワテックはもともと「とくそうしゃ」をつくる会社として1966年にそうぎょうしました。とくそうしゃというのは,いわゆる“働く車”のことで,例えばしょうぼうしゃけいさつ車両,テレビ局などで使うちゅうけいしゃさいがい時などに使うでんげんしゃすいなんきゅうじょしゃなどがあります。わたしたちの会社ではお客さまからのらいを受けたら,トラックの荷台部分に何も付いていないじょうたいの車両をこうにゅうし,各車両で必要なそうを取り付けてとくそうしゃにしています。ほかに「水陸両用バス」のせいぞうはんばいもしています。日本にある水陸両用バスはにゅうされている物がほとんどなのですが,コーワテックでは,日本で初めて一からせいぞうを手がけました。
わたしたずさわっているロボット開発プロジェクトは,2013年の秋からスタートしました。最初につくったのは「アクティブロボSAM」という,人の代わりにけんせつ機械のあつショベル(ショベルカー)をそうするロボットです。アクティブロボSAMはあつショベルの運転席に取り付けることができ,リモコンを使ったえんかくそうで動かせます。ロボット本体に「人工きんにく」とばれるゴムチューブが12本付いていて,リモコンそうに合わせ,人に近い動きであつショベルをそうじゅうできるのです。
どのメーカーのどのタイプのあつショベルにでも取り付けることができ,せっにかかる時間は30分くらいです。無線機をないぞうしており,リモコンを持つ人は300メートルほどはなれた場所からでもそうできます。えんちょうケーブルやほかの無線機をアクティブロボSAMとリモコンの間にせつぞくすれば,もっと遠くからのそうのうです。リモコンのレバーは,あつショベル本体のそうレバーと同じ配置で付けているので,あつショベルを運転したことのある人なら,20~30分の練習で,運転席でのそうじゅうと同じように動かせるようになります。

アクティブロボSAMプロジェクトの目的は,げん作業者の安全を守ること

アクティブロボSAMプロジェクトの目的は,現場作業者の安全を守ること

アクティブロボSAM開発のきっかけは,けんせつ機械を使って作業をするげんが多いことでした。コーワテックではさいがい時にかつやくするとくそうしゃもつくり,のうひんしています。そういう事業をしている中で,車をつくるほかにけんげんでの作業のサポートになるような何かをできないか,という思いが会社としてありました。そこからけんせつ機械をそうじゅうするげん作業者のがいを少しでもらし,安全をかくすることを目的とした,アクティブロボSAMのプロジェクトがスタートしました。
これまでにもけんせつ機械を動かせるロボットはあったのですが,かぎられたメーカー・種類のあつショベルせんようで,必ずけんせつ機械本体とセットになっていました。本体とセットだと,発注を受けてからのうひんされるまでに半年くらいの時間がかかり,運ぶのも大変です。そこでロボットを必要としているげんまで,もっと楽にばやく運べて,げんにあるどんなあつショベルにでも乗せて使えるロボットを目指しました。
アクティブロボSAMは2015年に商品化し,2020年末げんざいで,18台が,さいがいふっきゅうや林業の作業場などで使われています。さいがいふっきゅうげんの事例には,2011年の東日本だいしんさいで大きながいを受けたふくしまげんりょくはつでんしょ(以下,げんぱつ)などがあります。ふくしまの原発では2018年6月から使われ始め,今は何台ものアクティブロボSAMが,原発内のがれきてっきょや,そこで出たゴミをしょするせつの作業などに関わっています。また,林業の場合は,げんが山のしゃめんで,けんせつ機械がてんとうするが多いためにどうにゅうされています。ほかにも,やまおくで起きたしゃくずれのふっきゅう作業に使われていたり,細かなこなやチリがたくさん飛んで空気の悪い,せいてつしょでの使用がけんとうされていたりもします。

パソコンの前にいるよりも,試作機を動かしながら考える

パソコンの前にいるよりも,試作機を動かしながら考える

わたしは2014年にコーワテックに入社し,開発初期からアクティブロボSAMのせっけいに関わっています。開発チームは5人いて,わたしはその中で,主にのうとなるソフト部分をたんとうしました。アクティブロボSAMは,プロジェクトのスタート時から人工きんにくを使うことが決まっていました。わたしは大学の研究室でずっと人工きんにくの研究をしていたことと,卒業のタイミングがちょうど合ったことで,ロボット開発たんとうとしてコーワテックで仕事ができることになったのです。
今はアクティブロボSAMを改良して,ダンプトラックのそうじゅうができるロボットの開発に取り組んでいます。だんは朝8時30分にしゅっきんし,メールをかくにんした後,お昼までせっけいぎょうをします。昼食を食べ,12時40分から終業時間の17時30分までは引き続きせっけいぎょうです。日によってミーティングや来客たいおうしゅっちょうなどが入ります。せっけいをしている間は,しょのパソコンの前にすわっているよりも,事業所内の,試作品が置いてある場所でじっさいに試作品を動かし,すんぽうや動きをかくにんしながら考えていることの方が多いですね。その場であるてい,絵をいて,後ほどデスクで集中して仕上げるようにしています。せっけいぎょう以外にも,じっさいにアクティブロボSAMが使われるげんへ行って,あつショベルへの取り付けやてんけん,オペレーターへのそう説明などをすることもあります。
この仕事をするには,機械工学や電子工学,せいぎょ工学,無線やネットワーク通信などのせんもんしきが必要です。はばひろしきを目的に合わせて組み合わせながら,仕事を進めています。

こだわったのは,オペレーターがなっとくできるそう

こだわったのは,オペレーターが納得できる操作感

アクティブロボSAMを開発するうえで苦労したのは,まだ世の中にないロボットをつくるにあたり,じっさいそうするオペレーターからどんな形やのうを求められるのかがわからないことでした。わたし自身,工場などで決まった動きをする産業用ロボットなら「こういうものだ」というイメージがあるていありましたが,けんな作業げんに合わせて動くロボットというのはほとんど見たことがありませんでした。「つくったはいいけれど,使えなかった」では意味がないので,取り付けや調整の仕方,そうしているときの感覚など,使う人のじょうきょうを考えてつくるのですが,とてもむずかしいことでした。
わたしたちはロボット自体をつくることはできますが,けんせつ機械やげんの作業方法に関するけいけんがほとんどありません。そこで,けんせつ機械メーカーやけんせつ会社の方たちにご協力いただき,じっさいあつショベルを調ちょうしたり,オペレーターへの聞き取り調ちょうをしたり,げん作業を見学したりしながら,けんしょうを重ねていきました。特にこだわったのは,えんかくでもオペレーターがかんなくそうできること。そのためには,ロボットのスピーディーなおうとうせいが大事です。時間を計れば,オペレーターのそうからアクティブロボSAMが動くまでにどれくらいのえんが発生しているかはわかりますが,作業者がちょくせつそうじゅうするときとくらべてかんやズレがどのくらいあり,どこまでそこに近づければよいのかは,やはり作業者の感覚的なところですので,わたしにははんだんがつきません。オペレーターにじっさいそうしてもらい,意見を聞きながら,そうのレイアウトや部品のへんこうせいぎょ方式の改良を重ね,最終的に,かれらになっとくしてもらえるそう感をられるようになりました。
試作品の初号機から実験と改良をかえし,5号機でようやく商品化できました。会社内で考えるだけではなく,関係会社とも協力しながら,じっさいに使われるげんのことを学びつつ,つくり上げたことは,苦労であったとともに,おもしろさを感じたけいけんでもありました。

げんの声を聞くこと”を大切にしたモノづくり

“現場の声を聞くこと”を大切にしたモノづくり

じゅつてきな面で特に大変だったのは,とくちょうでもあるゴムチューブの人工きんにくを,せいひんとして使える形にすることでした。ロボットの体を動かすためによく使われるのはモーターです。そのほうが速く細かく動けますし,これまでのじゅつおうようできて開発もしやすい。でも,けんせつ機械の強いしんどうの中で動かすとこわれやすくなってしまうため,アクティブロボSAMには使えませんでした。
人工きんにくはモーターを使わず,空気を出し入れすることでちぢみする仕組みですが,きめ細かな動きや,ばやいレスポンスをじつげんするのがむずかしいのです。うまく動かすための空気の量や,した位置に動かすためのセッティングなどを調整し,さらにそれをオペレーターが使えるレベルに仕上げるのに四苦八苦しました。
日本はロボット研究が進んでいる国だと思われているかもしれませんが,研究所など,かんきょうのいいところでは動くけれど,げんに持っていくと動かなくなってしまうロボットも,実はたくさんあります。ロボットは人の役に立つことが役目ですので,わたしじっさいげんで使えること,そのためにそこで働く人の声を聞くことを,モノづくりをするうえで大切にしています。
やりがいを感じるのは,やはり実作業の役に立てたと実感できたときです。例えばふくしま原発のはい(使わなくなったていさせかいたいする)作業でアクティブロボSAMを使ったことがあるお客さまから,ほうしゃのうの多いエリアからはなれた場所でそうすることができて,ばく量をおさえられたという話を聞いたり,二次さいがいけんせいがあるしゃほうらくげんで,アクティブロボSAMを使って安全にふっきゅう作業をやりきれたと聞いたりしたときは,とてもうれしかったです。

大学で研究もしながら,新しいロボットの開発を進める

大学で研究もしながら,新しいロボットの開発を進める

今,手がけているダンプトラック用の新しいロボットのプロジェクトは,けいざいさんぎょうしょうによる産業ロボットの開発えんを受けて,けんせつ会社ととうほく大学と共同で開発を進めています。コーワテックでたんとうしているのは,ロボットのハード部分,本体や,動きのメカニズムの部分です。あつショベルはほんてきにレバーでのそうじゅうですが,今回のダンプトラックは,オペレーターのえんかくそうに合わせてダンプトラックのハンドルを動かしたり,アクセルとブレーキをそうしたり,荷台の上げ下げをそうじゅうできたりする必要があります。ロボットの本体はアクティブロボSAMをおうようし,ハンドルを動かすための,空気で回るエアモーターや,アクセルとブレーキのそう用には空気を入れるとちぢみするシリンダーを取り入れるなど,動かすたいしょうに合わせた動力を考えて,つくっています。
また,わたしきょうのあるロボットの研究もしたくて,会社の仕事をしながら,2018年から東北大学のはくていざいせきしています。東北大学はダンプトラック用ロボットのソフト部分の開発をたんとうしていることもあって,このロボットについては,会社でハードとなる部分,大学でソフトの部分と,両方に関わっています。

まずはきょうのあることに,とことん取り組んでみよう

まずは興味のあることに,とことん取り組んでみよう

子どものころはたんきょ走にちゅうになり,中学・高校では陸上部でかなりほんかくてきに取り組んでいました。はばひろくいろんなことをするよりも一つのことに集中するタイプで,きょうのあるものにはこだわる一面がありました。
ロボットの研究者には,子どものころからロボット好きな人が多いように思いますが,わたしはそうではありませんでした。どちらかというときょうがあったのは,人間のきんにくの動き方やせいぎょの方法です。ただ,トヨタ自動車のあるあいけん出身ということもあってモノづくりになじみがあり,大学は工学部を選びました。それで,人の動きの仕組みをさいげんすることもできる,ロボット研究の分野に進んだのです。
高校まではロボットを仕事にするなんて,考えてもみませんでした。当時,ロボットをつくる会社があって,そこで働くこともできる,という発想はありませんでしたから。けれども,東日本だいしんさいて,世の中が「げんで使えるロボット」を求める流れになり,今では「ロボット」「AI」「IoT(モノのインターネット)」が当たり前になっています。わたし自身はきょうのあることへの研究に取り組んでいただけなのですが,世の中の流れが変わってきたこともあり,かつてはそうぞうもしていなかった,この仕事と出会いました。
みなさんにお伝えしたいのは,今見えている世界はごくわずかで,大人になると見えてくるものもたくさんあるということです。もししょうらいなりたいものやゆめをすぐに見つけられなかったとしても,まずはきょうがあることに,とことん取り組んでください。いつかやりたいことが見つかったときに,そのけいけんが役立つときが,きっと来ますから。

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取材・原稿作成:渡部 彩香(Playce)・東京書籍株式会社/協力:横浜銀行