仕事人

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愛媛県に関連のある仕事人
1990年 生まれ 出身地 愛媛県
大西おおにし ひかる
子供の頃の夢: プロ野球選手
クラブ活動(中学校): 野球部
仕事内容
おいしく健康なマダイを育て,「食」をささえる。
自己紹介
語りだすと熱くなるタイプで,友人に「むつこい(うっとうしい)ほど熱い」といわれることもあります。しゅはラーメンの食べ歩きで,しゅっちょうでも家族旅行でも必ず名店の味をチェックします。
出身高校

※このページに書いてある内容は取材日(2018年05月10日)時点のものです

愛南の海はマダイのようしょくにぴったり

愛南の海はマダイの養殖にぴったり

わたしは,おもにマダイのようしょくをしている「大西水産ゆうげん会社」の3代目社長です。会社のあるあいなんちょうは魚のようしょくがさかんで,とくにマダイのようしょくでは ,市町村別で全国2位です。愛南の海は,マダイを育てるのにぴったりのかんきょうなんです。
マダイには15℃から25℃の水温がてきおんですが,くろしおの分流のおかげで,愛南の海水温は一年中,ほぼこの温度帯です。また,リアス式の地形のおかげでおだやかなないわんがあり,海岸から急に海が深くなるので,陸の近くにようしょくいけすを置くことができます。さらに,しおの流れが速いので海水はいつもしんせんですし,魚はてきに泳いで身がしまり,おいしく育つんです。
大西家では,わたしそうの代はあみ漁を手がけ,イワシや小さなアジ,サバをとっていました。の代のときにあみの小魚をエサにしてハマチのようしょくを始め,やがて海のかんきょうに合ったマダイようしょくえていきました。
げんざい,愛南町のようしょく業者は30ほどです。マグロ,カンパチ,クエなどもようしょくされていますが,9わりの業者がマダイをようしょくしていて,中にはマダイようしょくでは全国トップクラスの大きな会社もあります。大西水産はマダイおよそ60万びきいくしていて,としてはちゅうけんどころの会社です。最近では事業のはばを広げようと,クエやサツキマスのようしょくも試験的に手がけています。

あいじょうを注ぎ健康に育てる

愛情を注ぎ健康に育てる

ようしょくぎょうでは,魚を健康でストレスなく大切に育てようと努めます。しかし産業なので,コストと作業こうりつじゅうしなくてはなりません。う日数とエサの量は少なくしながら,なるべく大きく健康な魚を育てることが目標です。ですから,その日の海のじょうたいや魚の様子を観察し,魚がむだなくエサを食べるよう,エサをあげる回数や時間帯,量などを調節しているんです。
マダイをういけすは,じゅうおうそれぞれ12mの四角いわくに水深10~12mのあみったものです。今は40台のいけすでマダイをっています。マダイは8,9cmぐらいの,金魚ほどの大きさから育てるんです。かわいいですよ。ぎょせんもんの業者から年に2回,12月~1月に「あき」と,5~6月に「はる」を仕入れます。あきは,1年8か月から2年3か月ぐらい育ててしゅっします。いけすごとに順番にしゅっし,しゅっし始めのサイズは1kgほどですが,最後には2kgをえます。年末年始のじゅようの多い時期に,ちょうど食べやすい1.7kgほどに育てるのがポイントです。はるは,1年7か月から1年10か月ほど育てます。しゅっ時のサイズは1.4kgから1.8kgぐらいのはばです。
マダイは夏にエサをよく食べるので,はるのほうが短期間で大きくなり,エサのコストとしてはこうりつがいいんです。しかし夏には病気のリスクが高くなり,はるは一ぴきずつワクチンちゅうしゃを打たなくてはならないので,この分のコストと労力はかかってしまいます。はるあきの2サイクルでうのは,病気やなどのリスクの分散,作業の分散,それからしゅっの分散でしゅうにゅうの時期を分散できることなどのメリットがあるんです。

日々の管理も大きな作業もていねいに

日々の管理も大きな作業もていねいに

日々の仕事はエサやりと観察が中心です。今は,太陽光発電で動く自動きゅう機を使うのがいっぱんてきで,せっていした時間に一定量のエサが自動で出ます。わたしたちは週に4回ほどエサをきゅう機にじゅうします。エサをあたえない日もあるんですよ。マダイのしょくよくくうふくの日があるとげきされるようで,変化をつけてあげるのがいいんです。
しゅっまでの作業のうち,いちばん手間のかかる作業は,「ぶんよう」ですね。一つのいけすに3万びきっていたのを1万2,3千びきずつに分ける作業です。ぎょが育って,いけすがきゅうくつになるからです。一ぴきずつあみですくって別のいけすにうつしていく,とても根気のいる作業です。最初から一つのいけすに1万数千びきえばいいと思うかもしれませんが,一定以上のみつうと,エサを食べるのが競争になり,結果的に多く食べてくれるんです。みつうすすぎると,のんびりしてしまってエサを食べる量が少なくなります。それに,いけすの台数がえると,あみこうかんの労力も大きくなってしまいます。
いけすのあみこうかんもまた,大仕事です。あみかいそうなどがつくと海水の流れが悪くなり,いけすの中がさん不足になります。そこで,ぎょ用の目の小さなあみは2,3か月ごと,目の大きなあみは半年ごとにこうかんします。はずしたあみあらってメンテナンスをします。
いよいよしゅっむかえると,どうようのいけすに数百ぴきずつうつし,船でゆっくりとがんぺきの作業場まで引いてきます。一ぴきずつ重さをはかり,きずなどのかくにんをしたら,生きたまましゅっする「活魚」はすうひきずつせんようのカゴに入れ,海水を満たしたせんようのトラックに積みます。それ以外はせんたもつためきをし,運送会社のれいぞう車で送り出します。無事にしゅっできた達成感とともに,たかいのる思いで見送っています。

エサのコストをけず

エサのコストを削る

大西水産では,わたしのほかに社員7人とパート社員2人が働いています。わたしは生産や作業の計画を立て,げんの作業はなるべくげんせきにんしゃの社員にまかせています。社長のやくわりけいえいの仕事です。コストの見直し,はんばいこうしょう,新しいせつようしょくじゅつけんとうなどですね。
わたしひめ大学で学び,マダイのエサの研究をしました。卒業後,おおさかの水産おろしうりがいしゃしゅうしょくしたのですが,父の病のため1年ちょっとで退たいしょくし,24さいで大西水産の社長になりました。ところが社長になってみると,けいえいは楽ではなく借金も予想以上にあることがわかりました。そこでてっていてきにコストを見直し,けいえいじゅつも「どんどん変えていこう!」という強い思いで,これまで4年間チャレンジしてきました。
マダイのようしょくでは,生産コストの7わり近くがエサ代です。少しでも安くエサを仕入れられるようにエサの仕入れ先を見直し,エサのないようふうしました。ようしょくのエサは生のものやドライペレットなど,タイプやえいようがさまざまで,たくさん種類があるんです。大学での研究を生かして,いろいろなメーカーのエサをぜて試験した結果,やっと最近「これかな」という配合が見えてきました。先日,わたしが配合したエサで育てたマダイを初めてしゅっしたのですが,計算すると父の代のときよりコストが下がっていて,すごくうれしかったですね。これがスタートで,まだまだこれからですが。

ICTじゅつを使った新しい試み

ICT技術を使った新しい試み

ITぎょうと手を組んで,おもしろいじゅつの共同開発もしているんですよ。最新のICTじゅつじょうほう通信じゅつ)を使い,自動きゅう機とスマートフォンをインターネットけいつなげています。自動きゅう器には水中カメラがついているので,いけすの中のライブえいぞうをスマートフォンアプリで見ることができるほか,アプリ上からきゅうえんかくそうもできます。しゅっちょうさきにいても,スマートフォンがあればいけすの様子を見て,エサをあげることができるんです。えいぞうは定期的に録画もされているので,後から見ることもできます。ITベンチャーぎょうと組み,2年ほどうちのようしょくじょうじっしょう試験をして開発し,最近,せいひんされたものです。
マダイはあたえたエサを全て残さず食べているわけではないんです。食べる量は,水温やしおの流れなどのじょうけんに左右されます。でも,海にあるいけすをずっとかんしているわけにはいきませんよね。そこで,水中カメラでエサを食べる様子を見て,よく食べているようならスマートフォンのえんかくそうでエサをどんどん投入し,あまり食べなければきゅうを止める。これができれば,エサのむだがなく,コストをおおはばさくげんできます。録画されたえいぞうを見れば,少し前のじょうたいをさかのぼってかくにんすることもできます。また,最近気づいたのですが,えいぎょうに行った先でライブえいぞうを見せると会話がはずみ,うちの会社にきょうを持ってもらえるというこうもあるんです。

新たなちょうせんをしつつ食の文化を守る

新たな挑戦をしつつ食の文化を守る

わたしは,大学時代に出会った「けいぞくかくしんの連続なり」という言葉が好きなんです。たえず新しいことを取り入れないと,会社はけいぞくできないと思っています。
これからは自分で育てた魚を自分で売ることにもちょうせんしようと思い,オリジナルのエサの成分の研究を始めたところです。ミカンの皮をあたえたマダイや,オリーブを食べさせたハマチなど,エサの成分によってかおりや色をよくしたようしょくぎょがブームになっていますが,ミカンやオリーブと勝負できるような,大西水産どくの「何か」を見つけたいんです。今後,大西水産のたいを売り出していくのにそなえて,最近,「ふくたい」というブランド名を考え,商標登録したところです。
「食」はひとの命をささえ文化を産み育てるもので,それをささえる仕事には,大きなせきにんとやりがいを感じます。昨年,むすめが生まれ,お祝いのでんとう行事では自分が育てた大きなマダイをいました。こんな幸せなことはありません。これからは,お客さんの「おいしかった」という声をちょくせつもっと聞けるようなけいえいの仕組みに向け,今以上にがんばりたいと思っています。

社長をぐまでの道のり

社長を継ぐまでの道のり

わたしは大西家にひさびさに生まれた男の子で,「あとり」としてたからもののように育てられました。特にはかわいがってくれ,よくようしょくのエサやりに連れていってもらって,楽しかったですね。わたしは小さい時からさかなりが大好きで,り好きの社員をしゃがわりにして,夜のイカりにもちゅうでした。
高校は,こうえんじょうれんこうに野球のスポーツすいせんで入学しました。ところがあまりのきびしさにえられず,ちゅうだつらくしてしまったんです。人生初のせつです。ほうにくれていた時,数学のせいせきがそこそこよかったこともあってたんにんの先生がけいコースにうつるようすすめてくれました。おかげでひめ大学にも進学でき,そこから新たな人生のとびらが開いたような感じです。父は一度も「家業をげ」としつけることはありませんでしたが,わたしは大西水産をぐと決め,大学ではようしょくの勉強をしました。そこで学んだことは今の仕事に大いに役に立っています。

今の自分をこうていできる生き方を

今の自分を肯定できる生き方を

みなさんには,好きなことを何かひとつ見つけて,とことんしゅうちゃくしてほしいなと思います。ゲームでもりでも何でもいいです。めることで見える世界があります。
もうひとつ,それとはぎゃくのようですが,進んでいた道がざされたら,きれいに気持ちをえて新しい道へ進めばいい。高校時代に野球でせつしたわたしは,けいコースにえたことで,今の自分の立場や仕事を選びとることができました。結果的に今の自分の人生を「いいせんたくだった」と思えるような生き方をすることが,大事ではないかなと思います。

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私のおすすめ本

J.K.ローリング
小学校5年生の時に読みました。生まれて初めて読んだ分厚い本です。魔法にワクワクしつつ,10年先には科学で魔法が実現するかも,とも思いました。今では養殖いけすのライブ映像をスマートフォンで見られるなど,ある程度それが実現したと感じています。

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取材・原稿作成:大浦 佳代/協力:公益財団法人 日本財団,NPO法人 共存の森ネットワーク