仕事人

社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!

福岡県に関連のある仕事人
古賀こが 陽子ようこ
子供の頃の夢: 考古学者
クラブ活動(中学校):
仕事内容
心地ごこちが良く、めると元気がいてくるような帯を作る。
自己紹介
にぎやかなところが苦手で、料理やぞんしょく作りが好きです。った料理より四季折々の食材で作るぼくな料理や、でんとうしょくきょうがあります。じゅつかん、博物館めぐり、かんげきが好きです。山や野原の植物、草木や花をながめながらの一人歩きも好きです。

※このページに書いてある内容は取材日(2022年11月28日)時点のものです

「言葉の代わりになるもの」をずっとさがしていた

「言葉の代わりになるもの」をずっと探していた

わたしかまくら時代から続く「はかおり」というおりものの、りの帯を作っています。この仕事を選んだきっかけは、あるとき、はかおりの学校の説明会があり、その説明会の中で「はかおりでんとう工芸をけいしょうするだけでなく、『でんとう』にしばられない自由な発想で、世界に羽ばたけるはかおりの作家やしょくにん、またはかおりりょく開発とそうぞうになう、次世代の人材を育成する」という言葉を目にして、思い切ってみました。わたしは昔から自分の思いを人に伝えることが苦手なせいかくで、言葉では伝えきれない思いをどう伝えるか、「言葉の代わりになるもの」をずっとさがしていました。そして、それが一生の仕事になるなら幸せだなと思っていました。そんなときに「はかおり」と出会って、これだと思いました。

使えば使うほど身体になじんでごこの良い帯になっていく

使えば使うほど身体になじんで締め心地の良い帯になっていく

はかおりとくちょうは、たくさんの細いたていとに、細いきぬいとを何本も合わせた太いよこいとを強くみながらっていくところにあります。あつりのあるじょうな帯はごこも良く、くずれしにくいと言われています。また、「きぬり」とばれるきぬこすれる音もはかおりとくちょうの一つで、帯をめるときに「ククッ、ククッ」「キュッ、キュッ」というここ良い音が出ます。
わたしる帯は、たていとだけでいろがらひょうげんするはかおりでんとうほうを使ってりの帯です。使う糸はとても細いきぬの糸で、約8000本のたていとに太いよこいとを通して、「トン、ドンドンドンッ!」(「打ち返し三つ打ち」と言います)と何度も強くみながら、しっかりとっていくので、り上がった帯はあつりがありとてもじょうです。そして、じょうさに加えて、どこかしっとりと手になじむやさしさがあるのがりの帯の良いところです。使えば使うほど身体になじんでごこの良い帯になっていきます。

どんな作業も手間をしまず、一つ一つていねいに心をめて

どんな作業も手間を惜しまず、一つ一つ丁寧に心を込めて

わたしが使っているきぬいとは、おかいこさんがく糸から作られています。はかおびは「おかいこさんの命」でできているようなものです。だから、どんな残り糸もにすることなく、最後まで大事に使っています。例えば、短い糸は集めてそうに使ったり、長い糸はかんたんなひもを作ってだんの仕事に使ったりしています。ほかにも、作業で使う道具類も大切に使うようにしています。
おりものの仕事は一人でやる仕事のように思えるかもしれませんが、一人でできる仕事ではありません。おかいこさんを育てる人、おかいこさんの食べるくわを育てる人、まゆから糸にする人と、きぬいとだけでも、わたしのところに来るまでにいろいろな人の手をわたってきています。その手間や苦労を考えると、「どんな作業も手間をしまず、一つ一つていねいに心をめてやっていかないと」と思うんです。また、いろいろな人の手を借りているだけではなく、人に使ってもらう、めてもらう帯だからこそ、とにかくていねいに作業することを心がけています。

り上げた帯をお客さまにめてもらえるよろこ

織り上げた帯をお客さまに締めてもらえる喜び

帯をるというのは、自分が思いえがいたものを3か月、4か月かけて形にしていくという作業です。しかし、どんなにしっかりと事前に図面をいていても、ってみないとわからないことが多く、いざってみると思っていた通りにならない、ということはしょっちゅうあります。帯をるのは本当にむずかしいなと思います。
そうして、長い時間をかけてり上げた帯は、が子も同然です。どんな帯でもかわいいですし、そんな帯をお客さまがよろこんでめてくださる、そんなときは、やっぱり心から「作ってよかったな」と思います。

やりたいことをあきらめずにずっと続けてほしい

これを読んでいる方たちには、「好きなこと」を見つけてほしいと思います。好きなことを見つけるのは大変なことですが、一つでもやりたいことが見つかったら、それをあきらめずにずっと続けてほしいです。もしかしたらそれは、すぐには役に立たないことかもしれません。でも、いつかは自分の力になるし、何かのときのささえにもなる。そして、自信にもつながると思います。
あともう一つは、「勉強」です。大人になると「もう一度勉強したい」と思うことがすごくえます。でも、勉強したいと思ったときには、勉強する時間がないんです。そう思うとわかいうちの時間って、すごくちょうです。だからこそ、ぜひ勉強はがんってほしいと思います。やってそんをすることはないし、こうかいすることはないですから。

私のおすすめ本

渡會正純=監修/ 石飛博光=書
一見難しく思える禅語をやさしく解説してあり、迷ったとき、悩んだとき、気持ちがちょっと荒れているときなど、自分を見失ったときの助けになるような本。ふだん忘れてしまいがちな大切なことに気づけます。
エンツェンスベルガー=著/ベルナー=絵
父は物理や数学好きで、物理の先生でもあったので、数学でわからないところがあると教えてもらっていたのですが、私がわからないと怒り出すので、すっかり数学嫌いになってしまいました。数字を見ると緊張するほど苦手になってしまったので、それを克服するために読んだ本です。主人公が数学嫌いなので楽しめます。
取材・原稿作成:リーブルテック/川口有紀(フリート)/東京書籍株式会社