仕事人

私(わたし)は病院で臨床(りんしょう)検査(けんさ)技師(ぎし)として働いていますが，臨床(りんしょう)検査(けんさ)技師(ぎし)は病院や診療所(しんりょうじょ)だけではなくて，検査(けんさ)センターと呼(よ)ばれる検査(けんさ)だけを専門(せんもん)に行う会社や，保健所(ほけんじょ)，薬をつくる会社，食品をつくる会社で働いている人もいます。「臨床(りんしょう)検査(けんさ)技師(ぎし)」というと難(むずか)しく聞こえるかも知れませんが，病気を発見したり，体の状態(じょうたい)を調べるために，血液(けつえき)や尿(にょう)，心電図などの検査(けんさ)を行うのが主な仕事です。皆(みな)さんも健康診断(しんだん)などで，心電図検査(けんさ)などを受けたことがありますよね？体を外から見たり，自分の感覚だけでは分からないことでも，検査(けんさ)をすると分かることがたくさんあるんですよ。検査(けんさ)は「生理機能(きのう)検査(けんさ)」と「検体(けんたい)検査(けんさ)」の２種類の検査(けんさ)に分けることができます。「生理機能(きのう)検査(けんさ)」は脳(のう)，心臓(しんぞう)，血圧(けつあつ)や肺活量(はいかつりょう)など直接(ちょくせつ)患者(かんじゃ)さん自身を調べる検査(けんさ)。「検体(けんたい)検査(けんさ)」は血液(けつえき)，尿(にょう)，便など患者(かんじゃ)さんから出てくるものを調べる検査(けんさ)です。私(わたし)達の病院は大きな病院なので，担当(たんとう)する検査(けんさ)の種類がある程度(ていど)決まっていて，私(わたし)は生理機能(きのう)検査室(けんさしつ)という部署(ぶしょ)に所属(しょぞく)して主に心臓(しんぞう)や脳(のう)，神経(しんけい)の検査(けんさ)を担当(たんとう)しています。

医師(いし)が患者(かんじゃ)さんを診(み)て検査(けんさ)が必要だと判断(はんだん)すると，臨床(りんしょう)検査(けんさ)技師(ぎし)のところに検査(けんさ)の依頼(いらい)が来ます。私(わたし)達は，その指示(しじ)に基(もと)づいて必要な検査(けんさ)をして，検査(けんさ)結果を記録して医師(いし)に返すというのが仕事の大きな流れです。私(わたし)達の朝一番の仕事は血液(けつえき)の検査(けんさ)。入院患者(かんじゃ)さんの病室を回り，検査(けんさ)が必要な患者(かんじゃ)さんの血を採(と)って，検査(けんさ)を行う検体(けんたい)検査室(けんさしつ)に届(とど)けます。採血(さいけつ)が終わると，私(わたし)は生理機能(きのう)検査室(けんさしつ)に戻(もど)って，健康診断(しんだん)に来た患者(かんじゃ)さんや，外来の患者(かんじゃ)さんの心電図や聴力(ちょうりょく)などの検査(けんさ)をします。肺機能(はいきのう)の検査(けんさ)や動脈のつまり具合を調べる検査(けんさ)など多くの種類の検査(けんさ)を行うのですが，心臓(しんぞう)に異常(いじょう)がないかを調べる為(ため)に心臓(しんぞう)の電気的な活動を見る心電図という検査(けんさ)を一番多く行っています。外来の方の検査(けんさ)は午前中に終わり，午後からは予約されている方の脳(のう)や神経(しんけい)の検査(けんさ)をして，１６時くらいに1日の検査(けんさ)が終わります。忙(いそが)しさは日によって違(ちが)いますが，生理機能(きのう)検査室(けんさしつ)では8人で月に４５００件(けん)くらいの検査(けんさ)を行っているんですよ。

心電図をはじめ，多くの検査(けんさ)機器では検査(けんさ)結果が自動的に出てきます。でも，検査(けんさ)機器を動かせば終わりかというと全くそんなことはありません。機械が出す検査(けんさ)結果に出ていなくても，私(わたし)たちが患者(かんじゃ)さんや検査(けんさ)機器を見て気付くこともたくさんありますし，機械の調子が悪くて間違(まちが)った結果が出ることだってあります。だから，毎回検査(けんさ)結果を念入りに確認(かくにん)し，気付いたことを報告書(ほうこくしょ)に書(か)き込(こ)むことも私(わたし)達の大切な仕事なのです。様々(さまざま)な可能(かのう)性(せい)を考えるために，検査(けんさ)の前に医師(いし)からの依頼書(いらいしょ)やカルテをよく読んでおくことも必要ですし，心電図の検査(けんさ)では「急いで医師(いし)に伝えないといけないような変化」が見つかる場合もあるので，検査(けんさ)の途中(とちゅう)も気を抜(ぬ)くことはできません。

検査(けんさ)には本当にたくさんの種類があるのですが，正しい検査(けんさ)結果を出すためには，それぞれの検査(けんさ)や検査(けんさ)機器の知識(ちしき)が欠かせません。また，今まで見つけられなかった患者(かんじゃ)さんの病気を見つけられる新しい検査(けんさ)機器や，検査(けんさ)時の患者(かんじゃ)さんの負担(ふたん)を減(へ)らしたり，臨床(りんしょう)検査(けんさ)技師(ぎし)がより短い時間で正確(せいかく)に検査(けんさ)結果の分析(ぶんせき)ができる検査(けんさ)機器など，どんどん新しい検査(けんさ)機器も出てきます。検査(けんさ)の種類によっては，臨床(りんしょう)検査(けんさ)技師(ぎし)の腕次第(うでしだい)で，結果が出たり出なかったりする検査(けんさ)もあるぐらいですから，私(わたし)達は普段(ふだん)から勉強したり，技術(ぎじゅつ)を磨(みが)かなければいけません。私(わたし)は，毎月病院の勉強会に参加をしたり，病院の外の勉強会に参加したりして勉強をしています。そこが大変でもあり，やればやるほど自分の技術(ぎじゅつ)も向上するのでやりがいでもあります。しっかり検査(けんさ)結果を出す為(ため)には，常(つね)に勉強することとたくさんの検査(けんさ)の経験(けいけん)を積むしかないんですよ。

私(わたし)が担当(たんとう)した検査(けんさ)で，患者(かんじゃ)さんの病名が分かった時はこれで患者(かんじゃ)さんの治療(ちりょう)が進むと思ってホッとすることがあります。以前，まだ病名の分かっていない患者(かんじゃ)さんに24時間継続(けいぞく)して心電図を見る検査(けんさ)をしたことがあったのですが，検査(けんさ)結果のデータを分析(ぶんせき)をしていたら，狭心症(きょうしんしょう)という病気に特有の変化が見つかったんです。私(わたし)は医師(いし)ではないので患者(かんじゃ)さんに直接(ちょくせつ)病名を伝えることはありませんが，患者(かんじゃ)さんが抱(かか)えている病気を発見する手助けをできたな，と感じますし，患者(かんじゃ)さんがこの検査(けんさ)を受けてくれて良かったなという気持ちになります。

私(わたし)が長女だったからかもしれませんが，子どもの頃(ころ)はしっかりした子だと言われていました。毎年学級委員もしていましたし，大人数で何かをやる時には自分から積極的に参加していました。活発な子どもで，遊ぶ時も家の中では遊ばず，ドッジボールをしたり，公園で友達と遊んだり，いつも外で遊んでいました。また，正義感(せいぎかん)も強くて，小学生のときからずっと婦人(ふじん)警官(けいかん)になりたいと思っていたんですよ。

今の仕事に就(つ)こうと思ったのは高校３年の夏でした。それまでは婦人(ふじん)警官(けいかん)になることを目指していたのですが，たまたま友達が臨床(りんしょう)検査(けんさ)技師(ぎし)を目指すことにしたので一緒(いっしょ)に図書館に調べに行ったんです。その時に初めて臨床(りんしょう)検査(けんさ)技師(ぎし)という仕事を知ったんですが，その時から臨床(りんしょう)検査(けんさ)技師(ぎし)の仕事に興味(きょうみ)を持ち，だんだんと臨床(りんしょう)検査(けんさ)技師(ぎし)になろうと思い始めました。臨床(りんしょう)検査(けんさ)技師(ぎし)になるには，大学や専門(せんもん)学校で，専門(せんもん)の勉強をして国家試験に合格(ごうかく)しないといけないので，私(わたし)も学校に通って勉強をしました。

私(わたし)のなりたい職業(しょくぎょう)は高校３年の時に突然(とつぜん)変わたのですが，それでも夢(ゆめ)を実現(じつげん)することができました。小さい頃(ころ)からこんな仕事がしたい・こんな人になりたいと夢(ゆめ)を持って頑張(がんば)ることも多いかも知れませんが，もし夢(ゆめ)が途中(とちゅう)で変わったとしても実現(じつげん)できると思いますよ。決められたことだけをがむしゃらに頑張(がんば)るのではなくて，感性(かんせい)で「これをやってやる！」と決めるのも悪くないと思います。自分が好きなことであれば，必ず夢(ゆめ)は叶(かな)うと思いますよ。