仕事人

社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!

東京都に関連のある仕事人
1969年 生まれ 出身地 東京都
箕輪みのわ 佳能よしのり
子供の頃の夢: プロ野球選手
クラブ活動(中学校): 野球部
仕事内容
牛のほねからコムタンスープを作る。
自己紹介
なんでも口にしてしまうタイプで,うらおもてのないせいかくです。休日はお祭りなどの町会の活動に参加したり,小学校のときに参加していた野球チームのOB会で集まったりしています。
出身高校

※このページに書いてある内容は取材日(2018年10月04日)時点のものです

せいぞうから,スープせいぞう

油脂の製造から,スープ製造へ

東京・あらかわで,ぎゅうこつこんで,焼肉店などでていきょうされるコムタンスープをせいぞうする仕事をしています。わたしが社長をしている「みの工業所」は,もともとは食用ラードやどうぶつせいせいぞうする会社として,わたしが昭和16年(1941年)にそうぎょうした会社です。うちのけいは代々,「油」をあつかう仕事をしていて,明治時代は菜種油などをあつかっていたようです。の後は,叔父おじと続き,わたしが4代目となります。
数十年前からはきんりんじゅうたくえてきたこともあり,においなどの問題から,どうぶつせいあつかう工場をけいえいするのがむずかしくなっていきました。そこで18年前から,メインの事業をコムタンスープせいぞうえました。ぎゅうをとるためにぎゅうこつと水を加熱する作業をしていたので,もともと,スープは副産物だったんです。
ぎゅうこつはとても固く,スープにするにはそれをくだいて,長時間,こまなくてはいけません。飲食店でコムタンスープを作ろうと思うとかなり大変です。そのため,うちの会社のコムタンスープは,大手の高級焼肉店チェーンなどで使ってもらっているんです。
また,スープ以外には,せいぞうていで出るぎゅうを健康食品などの会社にはんばいしています。これはサプリメントや石けんなどに使用されています。また,しょうではあるのですが,自社オリジナルの石けんのせいぞうも行っています。

1週間の流れは決まっている

1週間の流れは決まっている

今,会社はスープ作りのたんとう社員が2人,パートさんが2人,そしてわたしの合計5人でうんえいしています。わたしはスープ作りの作業を手伝うのはもちろん,えいぎょうけいなどの仕事もたんとうしています。
曜日により,その日に行う作業が決まっています。月曜日はざいじゅんをし,火曜日と木曜日にはスープをき,水曜日と金曜日は1日かけて工場と機器のそうをします。
始業は朝7時30分ですが,スープをく日はしょくにんさんが朝6時くらいから来ていますので,たいてい7時には仕事が始まります。スープをく日は,完成したスープのふくろめまで一気に行うので,17時くらいまで作業をしています。大きなあつりょくがまの中で,くだいたぎゅうこつと水をていくのですが,ぎゅうこつじょうたいやそのときの温度や湿しつちがうので,じょうけんは毎回ちがいます。仕上がりの量と味が一定になるよう,しょくにんが加熱時間を調整しながらスープを作り,最後はベテランのしょくにんが必ず味をチェックします。
スープを作る日の作業が大変な分,そうをする日は,14時には終業していることが多いです。ただ,曜日で作業を決めていますので,土日は必ずお休みですが,祝日は休むことができません。スープの売れ行きがよく,スープをく回数が以前よりえたこともあり,今後は人をやして,交代で休みを取ることができるよう考えています。

ぜったいに気をけない“そう

絶対に気を抜けない“掃除”

スープ作りの次の日には,必ずそうの日が来ます。わたしたちは食品をあつかう工場ですから,いくら大変でも,そうにはぜったいに手をくことができません。万が一,えいせいめんで問題があった場合,お客さまにも大きなめいわくをかけることになってしまいますから。
スープにはたくさんの油がふくまれているので,一度スープを作ると機械はかなりべとべとになり,そうも大変なんですね。そのため,そうには丸1日かかります。スープを通す機器の中には薬品を通し,タンクの中に入って中をあらい,すみずみまできれいにします。熱湯を使うので,夏場は暑さでさんけつになりそうになります。冬場はゆかそうが冷えこむので,こちらもつらい作業です。

お客さまからの声が日々の原動力

お客さまからの声が日々の原動力

日々の作業は大変ですが,やはりお客さまから「おいしい」という言葉をいただくのがやりがいです。今,メインでおろしている高級焼肉店さんも大手のチェーンですが,そちらの会長さんがメニューの中でもコムタンスープにはまっている,とおっしゃっていたり。そういうことを聞くととてもうれしくなりますね。
また,うれしいことに,新たに「スープをこうにゅうしたい」とお問い合わせをいただくこともえてきました。メインでお取り引きしている焼肉店さんでの消費量がえたこともあり,スープの生産量をやしてはいるのですが,工場のせつや人員の問題もあり,どうしてもげんかいがあります。そのためしんのお客さまはおことわりせざるをえないことが多いのですが,もうわけないと思いつつも,ありがたいことだと思っています。

社員みんなが,生き生きと働ける会社に

社員みんなが,生き生きと働ける会社に

会社で「ものづくり」が大切なのはもちろんですが,「人づくり」もそれ以上に大事だと思っています。これはそうぎょうしゃだったえいきょうが大きいでしょうか。はよく「ざいさんなんて残しててもろくなことはないよ,お金なんか残さないで,“とく”を残しなさい」と言っていました。社員が定年をむかえて会社を退たいしょくした後も,会社に気軽に遊びに来られるような,そんな,人間関係を大切にする会社を目指しています。日々を社員みんなと楽しく,生き生きとごしていきたいというのが一番の願いです。
実はぎゅうこつというのは,急に手に入れたいと思ってもなかなか手に入らないものなんです。うちの会社が今,コンスタントにざいぎゅうこつを仕入れることができているのも,の代から取り引きをしてきた業者さんがあってこそです。自分は今,の“とく”で仕事ができているのかもしれません。今度は自分がとくを残せるよう,がんりたいと思っています。

お笑い芸人からあれこれをて,家業をぐことに

お笑い芸人からあれこれを経て,家業を継ぐことに

わたしは,実は20代のころは,お笑い芸人をやっていました。ばくしょう問題さんがしょぞくしているしょで,すごく良いしょだったのですが,自分たちのコンビがかいさんしたのをきっかけにめました。ちょうどけっこんして子どもができたこともあり,芸人の道をあきらめて,当時,叔父おじけいえいしていたこの「みの」に入ろうと思ったんです。
ところが当時はスープ工場ができたばかりで,わたしやとけいえいてきゆうがなかったんですね。それでの知り合いがけいえいしていた,おろしうりをする会社にしゅうしょくしました。そこの社長にはマンツーマンできたえられ,人間としてほんてきなところですごく成長させていただきました。
5年前にその方がくなってけいえいじんが変わり,どくりつするか,どうしよう……と思っていたところ,叔父おじから「もう工場をめたい」という話が出てきまして。当時はけいえいきびしかったのでなやみましたが,やはり自分のの残した会社を残したい,その思いから,5年前に会社をぐことを決意して,今にいたっています。

子どもと話すより,大人と話すことが好きだった

子どもと話すより,大人と話すことが好きだった

子どものころは,大人の話が好きでした。大人向けのドラマを見るのも好きだし,両親のケンカなんかもよく観察していましたね。大人の顔色を見て,「この人にはこういうことを言うとウケるな」とか,そういうのがわかる子どもでした。
小学校の登校はんでも,子どもたちと話さず,そこに集まっているお母さんたちと話していましたね。「あの先生どう?」「クラスの様子はどう?」と聞かれて答えたり。今思うと,そういった「色んな人と話すのが得意」というせいかくは,今の仕事でも役立っていると思います。だれと話すときも,“こわさ”がないと言いますか。だってばんにんに好かれるわけではないし,ばんにんきらわれるわけではないですよね。だから変にかざったり,おくしたりするのもそんだなと思っています。

めんどうくさいこと」があるからこそ,楽しみや喜びもある

「面倒くさいこと」があるからこそ,楽しみや喜びもある

よく「今の子はわがまま」とか「昔の子どものほうがれいただしくて……」と言いますけど,今の子どもたちのほうが“いい子”だと思います。わたし自身,少年野球チームで今の子どもたちと関わっていて,実感しますね。だから,もっと自分に自信を持って,のびのびと生きてほしいなと思います。もしかしたら,家庭や学校でつらい思いをしている人もいるかもしれません。でも,大人になったら楽しいことがたくさん待っているので,どうかいろんな力をつけて,大人になってください。大人の世界で待っていますから。
あとは「めんどうくさいことにある“楽しさ”」を,今のうちに覚えてほしい,ということでしょうか。仕事や勉強,こういった“やらなくてはいけないこと”はたいてい,楽しくないし,めんどうくさいんです。でも,そういった「めんどうくさいこと」があるからこそ,それ以外の休みの日や,遊びが楽しくなる。スープ作りもそうで,そうというめんどうくさい作業があるからこそ,仕事のやりがいがあるんです。
めんどうくさい作業というのは,要は“努力”なんだと思います。努力はきついけど,いつかそれは必ず喜びに変わる。みなさんにも,わかいうちにこのことを知ってもらえたらと思います。

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私のおすすめ本

司馬 遼太郎
もともと,本はあまり読まないし,好きではありませんでした。でもお笑い芸人をしていた25歳くらいのころ,この本を先輩に薦められて読んだら,あまりにも面白くて。どこまで本当にあった出来事かどうかはわからないけど,とにかく物語として面白い。この本をきっかけに,他の本も買って読むようになりました。

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取材・原稿作成:東京書籍株式会社/協力:城北信用金庫