仕事人

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東京都に関連のある仕事人
1976年 生まれ 出身地 神奈川県
末吉すえよし 里花りか
子供の頃の夢: 児童文学作家
クラブ活動(中学校): テニス部,ソフトボール部
仕事内容
いっぱんしゃだんほうじんエシカルきょうかいの代表として,エシカルな消費や生産を,こうえんこうを通じて日本全国にきゅうけいはつしています。エシカルきょうかいのキャッチコピーは,“「エいきょうを シっかりと カんがえル」こと。毎日のらしでできること。”
自己紹介
明るくつねに前向きで,他者と争うのが苦手。休みの日は自然にれるために遠出をしたり,家で料理やえいかんしょうを楽しんだりしています。
出身大学・専門学校

※このページに書いてある内容は取材日(2018年12月05日)時点のものです

よりよい世界を目指して「エシカル」の考えを広める

よりよい世界を目指して「エシカル」の考えを広める

わたしは,いっぱんしゃだんほうじんエシカルきょうかいの代表として,「人」と「すべての生き物」と「自然」とが,いいあんばいできょうそんできる世界を目指して活動しています。
「エシカル」とは,英語で「りんてきな」という意味です。ほうりつで決まっていないけれど多くの人たちが正しいと思っていること,あるいは,本来,人間が持っているよい心から発生した行動やかん,それがエシカルです。わたしたちの役目は,エシカルとはどういった考えなのか,どうすればらしの中に取り入れられるのかを,いっぱんの人たちに向けて伝えることです。
また,そうした活動を通して人々のしきが高まったとき,エシカルの考えにもとづいた買い物をしたり,サービスを受けたりできないとこまるので,ぎょうやブランドに向けて,エシカルなものづくりやサービスのていきょうを働きかけています。
とくにわたしたちが力を入れているのは,みなさんのようなわかい人たちに向けてエシカルの考え方,そして「エシカル消費」について伝え,広めていくことです。

身近で実行できるエシカル消費とは

身近で実行できるエシカル消費とは

エシカル消費とは,「人や地球かんきょう,社会やいきに思いやりのある買い物」のことです。ものを作る人,売る人,買う人,地球,未来,みんなが幸せをわかちあう消費のことをいいます。
エシカル消費にはさまざまな形があります。たとえば地産地消。いきの人が作ったものを,同じいきに住む人がこうにゅうして消費することです。ほかにも,農薬を使わずに育てた有機さいばいの野菜や,リサイクル原料から作られたものなど,かんきょうはいりょした商品をこうにゅうして消費することもエシカル消費の一つです。また,開発じょうこくの人たちが作ったものを安く買いたたくことなく,てきせいかくで取り引きすることを「フェアトレード」といいます。フェアトレードの商品をわたしたちがこうにゅうすることで,開発じょうこくの生産者たちに正当なちんぎんはらわれ,かれらはけいぞくてきに安定したらしができるようになります。
エシカル消費は,ものの「げんざい・未来」を考えることでもあります。「」は,だれがどこでどうやって作ったのか,よくわかるものを選ぶこと。「げんざい」は,ものを持った以上は大切に長く使い続けること。「未来」は,それを使い終えたとき,ただのゴミにせずリサイクルできるか,だれかにゆずることができるのかなどをそうぞうすること。みなさんも買い物をするときは,エコマークやこくさいフェアトレードにんしょうラベルなどがついた商品をぜひ手にとってみてください。

エシカルな紙

エシカルな紙

エシカルの考えは日本ではまだまだ目新しい考えなので,なかなか人にうまく伝えられません。けれど,きちんと説明すると,多くの人が「とてもいい考えだ。自分にも何かができるかもしれない」と共感し,すぐにじっせんしてくださいます。そのような変化を見られることが,活動を続ける力のみなもととなっています。
とくにわかい人たちは,大人よりも考えがじゅうなんで,エシカルな行動を自然にらしの中でじっせんしてくれています。たとえば,卒業しょうしょかんきょうはいりょしたエシカルな紙を使いたいと,生徒たちが先生方にかけあった学校がいくつもあります。そうした話を聞くたびに,今まで活動を続けてきてよかったと思います。
ちなみにエシカルな紙と言っても多種多様で,たとえば,わたしめいは「バナナペーパー」で作られています。バナナのくきせんを取り出し,えちぜん和紙のじゅつと組み合わせて生産された,日本で初めてこくさいフェアトレードにんしょうを受けた紙です。原料は,ザンビアでまずしい人たちが生産しているオーガニックバナナのくき。バナナはいったんしゅうかくすると,同じくきには実りません。そのためしゅうかく後は,くきをバッサリと切り落とします。これまでは大量にはいしていたくきを利用することで,農家の人たちは新たなしゅうにゅうを得られるのです。
実はこれまで,ザンビアのまずしい人たちの中には,生活に足りないお金をかせぐために野生動物をみつりょうしている人もいました。けれど,バナナペーパーを作ることでようが生まれ,みつりょうする必要がなくなったのです。おかげで生物のようせいも守られるようになりました。人,動物,そして地球にやさしい紙,それがバナナペーパーです。

わかい人たちは,エシカルの考えをまわりに伝えてほしい

若い人たちは,エシカルの考えをまわりに伝えてほしい

かんきょうはいりょして作られるエシカルな商品は,げんだんかいではそうでないものにくらべてかくが高い場合が多いです。そこをえて,どうやったらエシカル消費をじっせんしてもらえるか,その方法を考えるのがとてもむずかしいところです。
まずは,エシカルをもっと身近に感じてもらうことが必要です。そこでわたしたちは,わくわくした気持ちでエシカルのことを学べるような場を作っています。たとえば,文化祭のような楽しいふんのエシカルフェスタ,エシカルな洋服だけを選んだファッションショー,エシカルにきょうを持っている人たちがつどい,学び,ろんできるこうなどです。
カギになるのは,わかい人たちの参加です。その商品は,どこで,だれが,どんな気持ちで作ったのか。もののはいけいにあるそうしたストーリーに共感して消費するわかい世代に,わたしたちは大きな期待をせています。わかい人たちにはぜひ,エシカルの考えをまわりにどんどん伝えていってほしいと思います。

エシカルな考えが広まる社会をきずきたい

エシカルな考えが広まる社会を築きたい

活動をするうえで大切にしているのは,説教がましくならず,相手と同じ目線に立つこと,そして新しいかんを共有できるように,伝える言葉を選ぶことです。
自分たちだけが正しいと思わず,さまざまな人の声にも耳をかたむけたいと考えています。エシカルは,「先進国の人たちが考える正しさ」ではなく,「地球上のすべての人が考える正しさ」のことです。「わたしたちは本当に,だれにとっても正しいことをしているのか?」と,その都度,たしかめていかなくてはいけません。
またわたしたちは,エシカルにきょうを持ってくれた人との関係を大事にして,思いをともにする人たちのコミュニティの輪を少しずつ広げていきたいと考えています。せいかんりょうだいぎょうのリーダーなど,社会を動かしている人たちにわたしたちのリアルな声を伝え,エシカルな考えが広まる社会をきずきたいと願っています。

キリマンジャロのさんちょうで見たショッキングな光景

キリマンジャロの山頂で見たショッキングな光景

わたしは以前,テレビ番組のレポーターをしていました。仕事で75もの国々をおとずれました。そこには多くのはってんじょうこくふくまれています。旅をする中で,あることが見えてきました。この世界では,ひとにぎりの人が得るけんえきのために,多くの弱い立場の人たちが苦しみ,美しい自然がせいになっているのです。
2004年に,アフリカたいりくさいこうほうのキリマンジャロにとうちょうしたときのことです。そこには太古からひょうが残っていたのですが,人間の活動がその大きなげんいんである地球おんだんで,9わりけてしまっていたのです。とてもショッキングな光景でした。それをたりにして,世界で起こっているさまざまな問題を日本の人たちに伝えるとともに,こうした問題をかいけつみちびけるような活動を始めたい,と思うようになりました。それがエシカルの活動を始めたきっかけです。
最初は一人で,フェアトレードを学べるこうかいさいするなどしていました。それを続けていくうちに,だんだんと仲間やえんしゃえていきました。2015年,エシカルという考え方をもっと多くの人に伝えたいと考え,こうの第1期生の仲間といっしょにエシカル協会を立ち上げました。

ニューヨークの中学校でようせいを学んだ

ニューヨークの中学校で多様性を学んだ

子どものころ,父の仕事の都合でニューヨークやバンコクでらしていました。わたしは,とても引っこみ思案な子どもでした。中学1年生のときニューヨークへうつり,まったく英語ができないのに,げんの人たちが通う学校に放りこまれました。大変な毎日でしたが,かえればそれがいいけいけんになりました。さまざまな国からやって来た友だちとの関係づくりや,そこで学んだ英語が,いまの活動にとても役立っています。何より,ようせいを学べたのは,大きなことでした。あらゆる国の,あらゆる人たちが,さまざまな意見を持って生きているんだ。世界はとても広いんだ。そんな考えを持てるようになりました。
今は小さなころとは反対のせいかくです。いろいろな国へどんどん出かけ,さまざまな人と会って,積極的にじょうほうこうかんをしています。以前のわたしからは考えられないような,オープンで明るいせいかくになりました。

「思いやり」や「おたがいさま」を大切にしよう

「思いやり」や「お互いさま」を大切にしよう

日本人が大切にしてきた「思いやり」「おたがいさま」「おかげさま」「足るを知る」といったせいしんには,エシカルの理念に通じるものがあります。自然には神が宿っていると信じてうやまってきた日本人は,昔からエシカルならしをじっせんしてきました。しかし,便利な世の中になっていくにつれ,わたしたちはいつしかそのせいしんわすれてしまい,「利他的」ではなく「てき」な考え方にまってしまいました。
自分たちさえよければいいという考え方が広まった社会で,人が人らしく生きていくための道しるべとなるのがエシカルの考え方です。「思いやり」や「おたがいさま」の考えで,「いいあんばい」の生活をしていくことが,この地球に生きる一員としてあるべき生き方なのです。まずは身近なところから,自分に何ができるかを考え,エシカルな行動を始めてみませんか?
たとえば「お下がり」も,エシカルの大切な考え方の一つです。両親や兄姉の使っていたものをもらい,大切に長く使い続けること,あるいはいま自分が持っているものをしゅうしながら長く使い続けることもとても大事です。みなさんがらしのなかで,どういった行動をせんたくするかで未来が変わります。みなさんは世界を変える力を持っているのです。ぜひ,その力をはっしてください。ともに変化のにない手になりましょう。

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星野 道夫
大学時代に読み,それ以来,幾度も読んでいる本です。星野道夫さんの写真も大好きですが,彼が書く文章と物語は,見えない世界への想像力を持つことの大切さを教えてくれ,いつも豊かな気持ちにさせてくれます。今の活動の原動力にもなっている一冊です。
池澤 夏樹/エルンスト・ハース=写真
池澤夏樹さんの本はよく読みますが,私が特に大好きな一冊です。ある男性が旅先から愛する人に宛てた手紙を,写真とともに綴った本。この地球に生まれてきてよかったと思える,心温まる本です。

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取材・原稿作成:東京書籍株式会社