仕事人

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東京都に関連のある仕事人
1967年 生まれ 出身地 東京都
西成にしなり 活裕かつひろ
子供の頃の夢: 天文学者
クラブ活動(中学校): ブラスバンド部
仕事内容
数学や物理学を使って,じゅうたいをなくす。
自己紹介
小さいころからこんざつじゅうたいきらいで,それをかいしょうしたいと「じゅうたい学」という学問を作りました。じゅうたいのストレスのない世の中になればと願って,日夜,研究しています。しゅは,オペラを歌ってストレスを発散すること,そして合気道でせいしんきたえることです。
出身大学・専門学校

※このページに書いてある内容は取材日(2018年09月06日)時点のものです

だいきらいなじゅうたいこんざつをなくすために始めた研究

大嫌いな渋滞や混雑をなくすために始めた研究

わたしは「じゅうたい学」という新しい学問分野を作り,みなさんがきらいなじゅうたいこんざつをいかになくすかを,数学や物理学といったてきな学問を使ってさぐるという研究をしています。
わたしは昔からじゅうたいこんざつだいきらいで,初めてしぶに行ったときに,こんざつした駅でたおれたことがあるのです。病院でけんした結果,特に悪いところはなかったのですが,医者から「こんざつがすごくきらいで,それでたおれたのじゃないか」と言われて,たしかにそうだなと。なんとかこんざつけられないものかと,以前からずっと思っていたのです。
研究者として,はじめからじゅうたいこんざつについての研究をしていたわけではなくて,もともとは水の流れや空気の流れなどについて研究をしていました。あるとき,こんざつは人の“流れ”だから,水や空気の“流れ”と結びつけて考えられるのではないかと思ったのです。そうすれば,今まで勉強してきた科学を使って,自分のだいきらいなじゅうたいこんざつをなくせるのではと思い立ち,今から約25年前にじゅうたいの研究を始めました。

人間の動きを自然科学的にとらえる

じゅうたいの研究を始めるまでは水や空気など,自然のものを相手にずっと研究をしてきましたが,じゅうたいは人間の問題ですよね。人間をいかに自然科学的にとらえるかということになるのですが,人間の動きは,科学では完全には予想ができないわけです。心理というのはなかなかむずかしい。それをどう科学で考えていくかということが,やりがいでもあり,むずかしさでもあります。
心理と,科学や数学をくっつけるわけですね。そうやって,分野をえていろいろなことをやっていくのはむずかしいのですが,そういう新しいことをどんどんやっていかないといけないと感じています。むずかしい問題を新しいかいけつしていかないと,次の新しい学問は作れないですよね。今あるものを学ぶだけじゃなくて,新しく学問を作る。作る側の立場からすると,こんらんがあればあるほどえてくるんです。

じゅうたいのせいで年間12兆円のそんしつ

じゅうたいきこまれるとイライラしますよね。ゆうこうに使えるはずの時間が失われているからです。ただたんじゅんに立って待つとか,動かないじょうたいでじっとしていなければならない,そういうのを「機会そんしつ」といいます。日本人のへいきん時給は3600円くらいといわれています。だから何もしないでじっとしているだけだと,1人1時間あたり,3600円のお金が失われているということです。それを積み上げていくと,日本中で,「年間12兆円」という数字が出ます。これは国家予算の8分の1くらいです。ものすごく大きなけいざいてきそんしつですよね。じゅうたいらせば,このそんしつを少なくすることができます。
さらに,じゅうたいにイライラして,だれかにあたったり,ものをこわしたり,そういった心理的なえいきょうまでふくめると,じゅうたいは数えきれない負のえいきょうを社会にもたらしています。また,高速道路のじゅうたいげんいんのものが20%をめていますし,じゅうたいすると,こまめに止まったり動いたりをかえすことで,車がスムーズに流れているときよりもけいさんたんはいしゅつされます。特に交差点付近のさんたんのうじょうに高くなってしまって,かんきょうにもよくありません。じゅうたいらせば,地球にも人にもやさしい結果になります。

ふくざつなできごとも数学でたんじゅんして研究する

じゅうたいを数学でとらえるといわれても,ピンとこないかもしれません。実は車というのは,動いているときは3つのことしかできないんです。加速すること,げんそくすること,車線へんこうをすること,の3つです。ふくざつに見えてもだいたいそれくらいです。1車線の道路なら車線へんこうはありませんから,2種類です。前があいていれば加速するし,まっていればげんそくする。
前があいていれば進めるし,まっていれば進めない。こうやってげんじつふくざつな問題をたんじゅんして,ほんしつを失わないようにし,数学の問題にしていくのが研究者としてのうでの見せどころです。まずは目に見えるようにミニカーと箱でひょうげんしたり,あるいは,車がいなければ0,車がいれば1というふうに,数字で表したりすることもできます。そうすると0101……のように,0と1だけでひょうげんできるので,コンピューターのプログラムで,自由に動かすことができます。そうすれば数学の問題として研究しやすくなるんです。

じゅうたいかいしょうするために必要なこと

前があいていれば進む,そうじゃなければ進まない。前に一度,このモデルをようえんためしたことがあります。手をたたいたら,前があいていたら一歩進んで,そうじゃなければ止まってねと。本当にだれでもかいできるモデルですが,これでじゅうたいひょうげんできます。では,じゅうたいかいしょうするにはどうすればいいのか。
最初は,車の数をらすしかないと考えていたんですが,ミニカーのモデルで遊んでいるうちにひらめきました。前がまっていると動けないなら,空間をあけるようにすればいいのではないか。後ろから来る車はゆっくり近づいて,止まらないように車間きょをとるようにすると,じゅうたいが消せるという計算結果が出ました。そして,数学で考えたことを,じっさいの道路でも実験したら,本当にうまくいったんです。
こうやって数学で社会こうけんまでできるということはやっぱり大事ですよね。数学的にたんじゅんして考えることがいかに大事かということです。

物の流れの研究も

車や人の流れのほかに,物流という「物の流れ」についても研究しています。例えば最近,日本のいろいろなところで自然さいがいが起きていますが,そうすると,えんぶっを送りたくても運べない,とどかないということになります。また,工場で物を作ろうとしても材料がとどかない。物流の世界でもじゅうたいが起きるんです。このじゅうたいをいかになくして,物流をスムーズにするかというのも,今,研究しています。物流業者さんだけでなく,会社の中でものを作っているときにもじゅうたいが発生しているというので,さまざまな会社さんといっしょに研究をしています。さらには,車や人,物以外にも,コミュニケーションの流れや,仕事の流れなど,いろいろな“流れ”にもおうようできるのではないかと,分野をえた研究を進めています。

研究から見えてきた人の行動と思い

研究から見えてきた人の行動と思い

じゅうたいこんざつかいしょうすることでれば,われわれの安心や安全にもつながります。例えば,イベントでかいだんを上っていった先に受付をもうけたら,その前に人がならびますよね。そうなるとそこでんでしまい,後からかいだんを上ってくる人もいるので,だれかがたおれれば,しょうだおしのようなが起こってしまいます。だからかいだんの近くには受付を作らないようにしたほうがいい。ある大会でそうアドバイスをして,を未然にふせぐことができたということもありました。
研究をすればするほど,人間がどういうふうに行動するのかが見えてくるようになりました。みんなが自分のことばかり考えて,いっせいに先を急いで早く行こうとすると,どこかでまってしまいますよね。だから,一番大事なのは思いやりというか,いかに他の人のことを考えて行動するかということなんです。ちょっとでもみなさんがおたがいに思い合えば,じゅうたいこんざつるということが研究の結果,わかりました。まわりを気づかう思いがいかに大事かということですね。研究を進めるうえでは,科学的な面だけでなく,人の思いを考えるという面もすごく大切にしています。

あきらめないことが一番大切

人生はあきらめるかやりくかの2つあって,必ずどちらかなんです。「できなかった」というのは,結局,あきらめただけなんですね。やりいたらなんでもできるんです。だからぜったいに自分がやりたいことがあったら,あきらめずに進んでいってください。7年,8年とあきらめなければ,できないことはそうありません。ときにはせつするかもしれないけれど,がんっていれば,ぜったいにまわりではげましてくれる人も出てきます。みなさんはぜひがんって,日本をどんどんよくしてほしいと思います。

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取材・原稿作成:東京書籍株式会社