仕事人

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福島県に関連のある仕事人
1992年 生まれ 出身地 岐阜県
村井むらい 理沙りさ
子供の頃の夢: イルカトレーナー
クラブ活動(中学校): バレーボール部
仕事内容
水族館で生物のいく管理をするほか,学芸員として生物のてんかいせつも行う。
自己紹介
好きなことにぼっとうします。ゆったりとごす休日は,ゲームや読書,えいかんしょうで,ソファから動きません。

※このページに書いてある内容は取材日(2020年09月15日)時点のものです

いくいんの仕事ははばひろ

飼育員の仕事は幅広い

わたしは,ふくしまけんいわきにある水族館「アクアマリンふくしま」で,いくいんをしています。「アクアマリンふくしま」のテーマは「かんきょう水族館」です。「海を通して『人と地球の未来』を考える」ことが理念で,子どもたちが自然とふれあう,体験的な学習にも力を入れています。
わたしは,いくいん5人からなる「命の教育グループ」にしょぞくしています。わたしの仕事ははばひろいのですが,おもな仕事の一つが,「子ども体験館 アクアマリンえっぐ」というゾーンでの仕事です。「アクアマリンえっぐ」は,もあるたいけんがたせつで,生き物のようせいや,命の大切さを学ぶことができます。わたしは,てんかくや生き物のえ作業,てんすいそうの生き物の世話のほか,った魚の調理体験などのガイドもしています。の魚を仕入れにトラックを運転して半島のほうまで出かけたり,タッチプールのウニやヒトデをとりに近くの海にもぐったりすることもあります。このほかに,別のゾーンにいるユーラシアカワウソのいくも,わたしのグループのたんとうです。
また,わたしは,教育プログラムの開発や,県内の学校に出向いてのじゅぎょうたんとうしています。当館には,てんすいそうはくせいなどを積んだどう水族館車があり,県内の学校に出向くじゅぎょうで活用しています。本物の海の生き物にふれあってもらえるのが,水族館のじゅぎょうの強みです。
また,水族館や動物園には,生き物のはんしょくやそのための研究というやくわりもあります。研究は,いくいんそれぞれがきょうをもったテーマを選んで行っています。カエルアンコウという魚がいるのですが,わたしは今,このカエルアンコウの一種の研究をしています。

生き物のようせいや命の大切さを学べるようふうする

生き物の多様性や命の大切さを学べるよう工夫する

「子ども体験館 アクアマリンえっぐ」の屋内てんスペースには,すいそうてんコーナーと,ふくしまの漁業のコーナーがあります。漁業のコーナーには,でんとうてきもくぞうの漁船,さまざまな漁具,ふくしまの代表的な魚や漁港の写真パネルなどをてんしています。
屋外スペースには,り体験ができるがあり,ったアジやがたのギンザケを食べられる食事スペースもあります。またいそがたはまという海辺の自然をさいげんした世界最大級のタッチプールが広がっていて,水に入っていその生き物と遊べるし,がたではしおりも楽しめます。
わたしは,体験学習のガイドと,てんの管理をたんとうしています。体験学習には,ったアジなどをさばく調理体験,かつおぶしけずり体験,かんづめづくり体験などがあります。たとえば調理体験ではアジのせいたいかいせつし,しんぞうを見せて「いただきます」は「命をいただきます」だと話すなどして,参加者が命の大切さを学べるようにお手伝いをしています。
屋内のてんコーナーには,10ほどのすいそうと陸の生き物のいくスペースがあります。てんの大きなテーマは「生き物のようせい」で,てんの半分ぐらいは魚以外の生き物ですね。ウミガメやトカゲなどのちゅうるい,ウミウという鳥,それからばくにすむキツネの仲間のフェネックなどのにゅう動物もいます。
てんする生き物は,いくいん5人で話し合って,数か月ごとにえています。ときにはすいそうの配置も変え,かいせつプレートを作り直すこともあります。今は,ウミガメやミノカサゴなどあたたかい海のさまざまな生き物をてんしたすいそうや,生き物のさんらん場所やかくになるため「海のゆりかご」ともばれる,アマモという海草を植えたすいそうなどがあります。アマモのすいそうでは,ヨウジウオや小さな貝などのアマモにかくれている生き物をさがしてもらい,生き物と自然かんきょうとの関わりについて考えてもらえるようにしています。そのほか,死んだウシガエルがぶんかいされて土にもどる様子もてんしています。生と死,そして自然のじゅんかんについて考えてもらうためで,てんは教育の材料になるようふうしています。

生き物をいくいんが集めることも

生き物を飼育員が集めることも

生き物のえさやり,すいそうのガラスの内側につくそうなど,毎日のこまめな仕事もあります。大切にっていますが,生き物が死んでしまったらじゅうも必要です。新たな生き物を入れたいときは,りょうさんにたのむほか,他の水族館からゆずってもらうこともありますし,自分たちで集めることもあります。
わたしに入れるアジと,タッチプールの生き物のたんとうです。アジは,すいそうつきのトラックを運転して,半島のようしょくじょうまで仕入れに行くんです。げんに1ぱくするので,このチャンスをのがさず,夜に海中をかいちゅう電灯で照らして,ふくしまの海にはいない生き物をさいしゅしようといっしょうけんめいです。
タッチプールのヒトデ,ナマコ,ウニなどの生き物は,かんちょうの時間に近くのいそに行ってつかまえます。海は楽しいので,わたしは休みの日には夜のいそにも行き,かいちゅう電灯で海を照らして生き物を集めたり,観察したりして楽しんでいます。

本物にふれられるじゅぎょう

本物にふれられる授業

わたしは,教育プログラムの開発とじったんとうしています。てんすいそうを積んだどう水族館車でイベントや県内の学校に行ったり,ゲストティーチャーとして学校のじゅぎょうばれたりするほか,アクアマリンふくしまが年に10回ほどしゅさいする,「キッズプログラム」というこうも受け持っています。
どう水族館車にはタッチプールを積んでいて,ヒトデやナマコなどをさわることができます。魚などのてんすいそうも用意し,泳ぎ方や体のとくちょうなどを観察してもらいます。そのほかにサメの歯やエイなどのはくせいの観察,いくいんによるレクチャーも行います。わたしの定番レクチャーは,タツノオトシゴのお話です。タツノオトシゴはおもしろい魚で,オスがおなかふくろの中でたまごを守るんです。楽しく学んでもらうため,太ったオスとやせたオスの写真を見せて,メスがどちらを選ぶかクイズを出します。せいかいは太ったオス。おなかふくろが大きいからです。必ずタツノオトシゴの実物を持っていき,体のとくちょうや泳ぎ方などを観察してもらいます。本物の生き物を見せられるのが,水族館が行うレクチャーの強みだと思います。
「キッズプログラム」は,おもに小学生がたいしょうで,毎回30人ほどの参加者をしゅうします。次々に新しいプログラムを用意するので,わたしにとっても勉強になります。最近だと,ふくしまの漁業を知るプログラムをやりました。館内の漁業や食育コーナーのガイドを考え,近くの魚市場に相談して,市場見学のないようも練りました。また,せいちゅうがテーマのプログラムも作りましたが,わたしとうきょうにあるせいちゅうの博物館にも行って勉強しました。参加者には,せいちゅうきょうがあってくわしい子もいるので,わたしはそれ以上にしきをつけなくてはなりません。参加者に新しい発見をしてもらえるような,おもしろいプログラム作りにしぼります。せいちゅうのプログラムでは,メダカからせいちゅうのアニサキスを取り出す体験などもみ,満足してもらえたようです。

はんしょくと研究も水族館の大事なやくわり

繁殖と研究も水族館の大事な役割

水族館や動物園には,生き物の種のぞんと自然のぜん,そのための研究というやくわりもあります。水族館や動物園は生き物をはんしょくさせる努力をして,てんのために野生生物をとることをらしたり,希少な生き物をやしたりしています。アクアマリンふくしまでははんしょくに力を入れていて,これまでに日本ではじめてはんしょくに成功した生き物が28種もあります。とくにはんしょくがむずかしい,サンマとコトクラゲのはんしょくでは,大きなしょうじゅしょうしています。
わたしたんとうしているユーラシアカワウソについても,はんしょくにはとくに注意深く観察をしています。群れの様子,母親の体の調子,出産前後のえいせいかんきょうなどにも気を配ります。幸い,うちにははんしょくが上手なゆうしゅうなカップルがいて,毎年,子どもを産んでくれています。生まれた子どもは,はんしょくのために別のせつに行くこともあります。去年,生まれたユーラシアカワウソのメスが今年,とちけんの動物園に行きました。世界中の水族館や動物園にはネットワークがあり,てんする生き物のこうかんなどで協力し合っているんです。
研究もにちじょうの仕事の合間に,こつこつと行っています。アクアマリンふくしまでは,いくいんそれぞれが自分の好きなテーマを研究しています。わたしは今,カエルアンコウという魚の一種のさんらん行動を研究しています。メスがたまごを体のわきにく種類がいるのですが,産んだたまごを体のわきにうつすところをだれも見たことがありませんでした。そこで,いくいんせんぱいと,いくすいそうにカメラをセットして観察していたら,たまごうつすところを動画でさつえいできたんです。たまごかたまりを大切そうにあつか姿すがたは,いじらしいです。えいぞうでとらえたのはおそらく世界初で,今,ろんぶんをまとめているところです。

体力と生き物の観察力が勝負

体力と生き物の観察力が勝負

いくいんは体力勝負な面があり,とくに,すいそうのガラスの内側のせいそうは大変ですね。ガラスにはすぐにがついてしまい,てんが見えにくくなってしまうんです。小さなすいそうもぐりで,大きなすいそうになると空気ボンベでもぐってせいそうしています。
以前,わたしあいしょうがよくないユーラシアカワウソが1頭いました。せいそう中にかみついてきて,じっさいにかまれたことがあり,今でもきずあとが残っています。でも,なぜか空気ボンベをっているとちかってこないので,それがわかってからは,せいそうのときにボンベはひっでした。
生き物がえさを食べなかったり病気になったりしたときには,気をもみます。そんなときには,毎日ひたすら観察し続けます。生き物は言葉を話せないので,わたしがよく観察をして気づいてあげるしかないんです。「これがげんいんかな?」と考え,水温を少し変えるなどして元気になってくれると,もう本当にうれしいです。
生き物が子どもを産んでくれたときも,わくわくしますね。生き物のサイズに関係なく,新しい命が生まれるしゅんかんは感動的です。たまごから育てた生き物をてんできると,大きな達成感があります。魚のたまごは大半が死ぬものだし,せっかく育ったぎょが死んでしまってむこともあります。でも,今度はこうしようと,次へのちょうせんにつなげるようにしています。

生き物へのきょうから海のかんきょうの気づきを

生き物への興味から海の環境の気づきを

教育の活動では,子どもたちが海のかんきょうに目を向けるきっかけを作れたらいいなと,いつも思っています。教育プログラムを作るときにも,きょうを引きつけるものを投げかけ,そこから海のかんきょうへの気づきが生まれるよう,話の組み立てを考えています。
たとえばかわいらしいタツノオトシゴのさんらんの話題できょうを引きつけ,生きるためには食べ物のプランクトンが必要で,プランクトンが多くてかくれる場所もあるサンゴしょうかいそうしげる場所が必要だという話につなげ,海のかんきょうのことも考えてもらいます。生き物は健全な自然かんきょうがなくては生きていけず,多くの生き物との関わりの中で命をつないでいます。最終的に,海のかんきょうは陸の自然ともつながっていて,人間の生活がえいきょうしていることにまで気づいてくれるとうれしいです。
じゅぎょうをしにおとずれた学校の子どもたちが,水族館に遊びに来て,声をかけてくれることもあります。学校で話したことをよく覚えていて,自分なりに生き物やかんきょうのことを考えてくれているなあと実感することが多く,「よし,これからもがんろう」と,はげまされますね。この子たちが,地球の未来をになっていってくれるのですから。

子どものころのゆめを追い続けて

子どものころの夢を追い続けて

わたしは小学生のときに「水族館のいくいんになる」と決めて,そのゆめをずっと追い続けてきたんです。小さいころから川でヨシノボリという魚を手づかみしたり,用水路でタニシをとったり,水辺も生き物も大好きでした。でも,海のないけんで育ったせいか,広くて生き物にあふれている海にあこがれ,海の生き物が毎日見られるいくいんになりたいとゆめるようになりました。
そのゆめをかなえるため,小学生のうちから努力もしました。たとえば,わたしは人前で話すのが苦手だったのですが,生まれてはじめて行った水族館で,いくいんさんがおおぜいのお客さんにかいせつしているのを見て「人前で話せるようにならなくては」と思いました。そこで,児童会長にりっこうしたんです。
高校3年の進路どうでは「いくいんは求人が少ない」と反対されましたが,思いをつらぬいて海洋生物学科のある大学に進学し,水族館や博物館などのせんもんしょくいんに必要な学芸員のかくもとりました。しゅうしょく活動では,全国さまざまな水族館の求人におうして,結果的にアクアマリンふくしまにさいようしてもらえました。当館のさいようは数年おきなので,運もよかったと思います。

本物の海を体験してほしい

本物の海を体験してほしい

水族館では海の生き物がたくさん見られますが,海の中ではもっとすごい生き物のドラマがひろげられています。ぜひ一度海に行って,いそなど浅い海のシュノーケリングでもいいので,海の中を見てほしいですね。わたしは大学生のときにはじめてダイビングで「生の海」を体験して,一生わすれられないほどの感動を味わいました。海は,水族館のすいそうとは世界の広がりがまったくちがいます。生き物のみつがおそろしくくて,何の生き物かわかりませんが,何か音が聞こえるし,「食う/食われる」のドラマもたりにしました。
海の生き物やかんきょうについてしきを広げるのも大切ですが,自分自身がひとつの生き物として海の中に入る体験は,しきとは別の大きな気づきをあたえてくれるはずです。

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上橋菜穂子
ファンタジー小説が好きで,タイトル買いをしました。世話をしている生き物が兵器として利用されそうになり,主人公は悩みます。最終的にどう決断を下すのか,ハラハラしながら読みふけりました。生き物を管理する上で大切なことや,人間と生き物の関わり方について,考えさせられるシリーズです。

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取材・原稿作成:大浦 佳代・東京書籍株式会社/協力:公益財団法人 日本財団,NPO法人 共存の森ネットワーク