社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!
※このページに書いてある内容は取材日(2008年04月14日)時点のものです
僕(ぼく)は書道家として様々(さまざま)な仕事をしています。週に4回は書道教室の先生としての仕事。子どもから年配の方まで約250人に書道を教えています。また,アーティストとして,日頃(ひごろ)から自分の表現(ひょうげん)したいものを作品にするという仕事もしています。そして,書(か)き溜(た)めた作品を発表する個展(こてん)を年に1回開いています。他にも,お菓子(かし)やカップラーメンの名前を書いたり,テレビ番組や映画(えいが),雑誌(ざっし)のタイトル(題字)を書く仕事。そして,実際(じっさい)にお客さんの目の前で書を書くパフォーマンスを取り入れた講演会(こうえんかい)や,テレビ出演(しゅつえん)などもしています。
僕(ぼく)が作品づくりをする理由は,世の中に自分の想いを伝えたいからなんですよね。僕(ぼく)は「人がどうやったら輝(かがや)くか」についてのプロだと思っています。世の中みんながもっと楽に生きられる分野や場がきっとあるんですよ。そのことをお風呂(ふろ)の中や移動(いどう)中などもず~っと一生懸命(いっしょうけんめい)考えています。そして,これを伝えたらその人は喜ぶな!ということが決まったら,どのような書体がいいのか,文字は漢字とひらがなのどちらがいいのか,紙質(かみしつ)や大きさはどのようにしようかなど,その一番良い表現(ひょうげん)方法を考えて作品を作ります。そして,それらをどうやってそれを発表するのかも重要です。想いを世の中に伝えるためには多くの人に見てもらう必要がありますからね。僕(ぼく)は作品を発表する個展(こてん)を年に1回開いているのですが,他にも依頼(いらい)があれば全国,全世界どこでも場を持ちますよ。
商品の名前を書いてほしいというような依頼(いらい)を受けた時は,その相手の想いをちゃんと世の中に発信できるように,その想いをしっかり聞くようにしています。その商品はどんな人たちがターゲットなのか,どういうイメージで作られているのかなどの話し合います。映画(えいが)のタイトルを書く仕事であれば,制作(せいさく)現場(げんば)に出向いたり,その映画(えいが)を見てイメージを広げます。そうしてこみ上げてくる想いや,湧(わ)き上がってくるイメージをそのままの勢(いきお)いで表現(ひょうげん)します。作品づくりは,時間をかければいいというわけではないんです。その場でやり取りをして僕(ぼく)が感じたぐわ~っとこみ上げてくる熱いものを勢(いきお)いで書き上げるのがベスト。そういう作品には,目には見えないエネルギーがこもっています。そのエネルギーが伝わってこそ,商品の持つ良さが伝わるのだと思います。
僕(ぼく)は,どれだけ人をプラスに持っていけるかということに楽しみを感じています。人に気付きを与(あた)えるようなことをやりたいんです。だから僕(ぼく)の書道教室では,お手本にならった字を書く練習だけでなく,自分らしさを出した作品を作り上げるという課題をやります。生徒はまず書道を使ったオリジナルゲームでいろいろな体験をします。そうするとそれまで出てこなかったような人それぞれの特性(とくせい)が出やすい状況(じょうきょう)になるんですよ。感性(かんせい)が磨(みが)かれるんでしょうね。大げさかもしれませんが,今,僕(ぼく)は自分の仕事に関わった人の人生を変えたいと思っています。そのために,どんな種類の仕事でも,どんな大きさの仕事でも100%の力で取り組むように心がけています。
僕(ぼく)の仕事や作品と関わったことで,人の可能(かのう)性(せい)が開き,その人が前向き変わったということがとても嬉(うれ)しいですね。僕(ぼく)の仕事や作品を通して,自分の辛(つら)い過去(かこ)さえもポジティブに考えられるようになった,生きる力が湧(わ)いてきた,という内容(ないよう)の話や手紙を何度もいただきました。僕(ぼく)は褒(ほ)められると「いやいやいやいや,そんなことはありません」とその場では控(ひか)えめに言いますが,一週間後くらいにその言葉がじわっとしてきてニヤニヤしてしまいますね。その場では,うまくいかなかったと落(お)ち込(こ)んでいた場合でも,後からこの人は変わったなと思える手紙が来ることもあります。自分が思った通りに相手が喜んで,前向きになっている姿(すがた)を見るのは最高ですね。
僕(ぼく)は大学卒業した時には,書道家になるつもりも独立(どくりつ)するつもりも全くなかったんですよ。大きな会社だったら親も安心するし,いいかなと思ってある大きな会社に勤(つと)め,IT関係の相談やアドバイスをする仕事をしました。現在(げんざい)につながる最初のきっかけは,2年くらい働いて久々(ひさびさ)に実家に帰った時に,書道の先生と思っていた僕(ぼく)の母が,お店の看板(かんばん)を書く仕事もしていたりして「かっこいい!」と思えたことかな。そしてちょうどその頃(ころ),職場(しょくば)の先輩(せんぱい)に名刺(めいし)作りを頼(たの)まれて,名刺(めいし)を一生懸命(いっしょうけんめい)作ったんです。そしたらその名刺(めいし)がみんなからものすごく誉(ほ)められたんです。嬉(うれ)しかったですねぇ。それで,かっこいい名刺(めいし)を作ってもっと多くの人に自信をつけてあげたい!と思って,会社を辞めてインターネット上で名刺(めいし)を作るビジネスを始めたんです。そしてその後ご縁(えん)が広がり,今のいろいろな仕事につながっているんです。
両親に似(に)たのだと思いますが,僕(ぼく)は子どもの頃(ころ)から場を盛(も)り上(あ)げてみんなを喜ばせようとするタイプでした。学校でも思ったことはどんどん発言していたので,例えば算数の時間にも,「1+1=2」ということが納得(なっとく)できなくて,「大きいりんごも小さいりんごも同じ1個(こ)とは思えません。それに,カラスが持っていったらどうするんですか?」などと先生に理屈(りくつ)をこねて質問(しつもん)ばかりしていました。そんな感じだったので,僕(ぼく)は時々(ときどき)クラスの雰囲気(ふんいき)に合っていないのかなと不安になることもありました。でも,その持ち前の明るさと勢(いきお)いで,何とか乗り切ることができました。
僕(ぼく)は,子ども全員に「あんたはすごい!」と言いたいですね。何がすごいのかという理由は必要ないんですよ。「自分はすごい」ということをとにかく信じてください。そしてそのすごさを自分で発見できるまで何か行動してください。過去(かこ)そのものは変えられませんが,過去(かこ)に対する考え方は「今」の状態(じょうたい)で変わるものです。いい人生を生きるためには「今」の自分を信じて「今」やっていることに全力を注ぐことが一番の方法ですよね。「自分がすごい」ということを実感できているその状態(じょうたい)が続けば,それが過去(かこ)に対する自分を変え,結果的に未来の自分も変えるのです。「今を生きる」というのは難(むずか)しそうに聞こえますが,意外と易(やさ)しいのかもしれませんよ。