社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!
※このページに書いてある内容は取材日(2006年10月27日)時点のものです
私(わたし)は塾(じゅく)や予備校(よびこう)で,大学受験を目指す中学生や高校生,浪人生(ろうにんせい)に数学を教えています。私(わたし)の場合,1回90分の授業(じゅぎょう)を1週間に28クラス担当(たんとう)しています。多い日は1日に6クラスの授業(じゅぎょう)を受け持つので,朝から夜まで教えっぱなしのこともあります。授業(じゅぎょう)中はずっと立ち続けていますし,休み時間には生徒からの質問(しつもん)に答えているので,ほとんど休む時間もない体力勝負の仕事です。職場(しょくば)では教えることだけに集中していますが,夜中に家に帰ってからは,次の日の授業(じゅぎょう)の準備(じゅんび)として,問題を実際(じっさい)に解(と)いてみたり解説(かいせつ)プリントを作ったりするので,寝(ね)るのはいつも午前2時頃(じごろ)になります。体調を崩(くず)してしまうと授業(じゅぎょう)ができなくなってしまうので,それ以上に遅(おそ)い時間にならないように気をつけているんですよ。
私(わたし)の仕事は数学を教えるだけではなくて,授業(じゅぎょう)で使うテキストを作る仕事があります。過去(かこ)何年分もの入試問題などの資料(しりょう)から問題を選んだり,自分で問題を考えたりしながらテキストを作ります。また,塾(じゅく)の生徒たちへの進路指導(しどう)も大切な仕事です。例えば,高校2年生にとっては,受験までの1年間の過(す)ごし方や,2年生の3学期の重要性(せい)を知ることが大切ですので,受験ガイダンスの場でそのような話しをすることもあります。他にも,学期と学期の間など,塾(じゅく)の授業(じゅぎょう)が休みの期間には,塾(じゅく)の先生が集まって勉強会を行います。教えるべき内容(ないよう)や,生徒たちの性格(せいかく)も毎年少しずつ変っていきますので,質(しつ)の良い授業(じゅぎょう)を提供(ていきょう)し,生徒たちが志望校(しぼうこう)に合格(ごうかく)できるように,私(わたし)たちも成長する努力をしているのです。
私(わたし)は,塾(じゅく)の先生になって11年になります。ですから,若(わか)い先生を育てることも仕事の1つになります。先輩(せんぱい)の先生が「生徒役」になって,若(わか)い先生が授業(じゅぎょう)を行い,その授業(じゅぎょう)の良い点や改善(かいぜん)できる点などを話し合ったりもします。そういう交流がベテランの先生にとっての刺激(しげき)にもなります。私(わたし)も最初の1,2年はベテランの先生の授業(じゅぎょう)を見て,まずは伝統(でんとう)的な教え方を覚えることから始めました。先輩(せんぱい)先生の見よう見まねで授業(じゅぎょう)を何度も行いながら基本(きほん)を学んだので,若(わか)い先生にも基本(きほん)の大切さを伝えるようにしています。基本(きほん)となるものがなければ,自分らしさを作り出すことはできないのです。
受験のための塾(じゅく)ですから,生徒さんが大学に合格(ごうかく)することはとても嬉(うれ)しいことです。しかしそれだけではなくて,「楽しく1年を過(す)ごせた!」と思ってもらえた時はもっと嬉(うれ)しい気持ちになります。私(わたし)はいつも,「自分が将来(しょうらい)したいことのために,今何をすれば良いかを考えていけるようになろう」と繰り返(くりかえ)し話しています。その効果(こうか)もあってか,「大学に行きたい」と言っていた生徒達から,だんだんと「○○をしたいから大学に行きたい」という発言が出るようになっていきます。そんな風に,塾(じゅく)の先生は授業(じゅぎょう)をするだけではなく,生徒さんたちの将来(しょうらい)に深く関わる仕事です。私(わたし)は,生徒さんが30歳(さい)40歳(さい)になっても印象に残っていく先生になりたいと思っています。
生徒さんの将来(しょうらい)と関わる仕事であるからこそ,悩(なや)みもあります。私(わたし)が働いている塾(じゅく)は大学受験のための塾(じゅく)ですから,まずは大学に合格(ごうかく)することを目指さなければなりません。そして,生徒さんの現状(げんじょう)の学力では合格(ごうかく)することが難(むずか)しいと思われても,今後の成長に期待して生徒さんが行きたい大学を目指していくのか,合格(ごうかく)する可能(かのう)性(せい)の高い大学を目指して,その後で人生設計(せっけい)をするのか,などどのような道を示(しめ)してあげるべきかいつも迷(まよ)います。同時に,合格(ごうかく)するだけが人生ではない,という思いもあり,合格(ごうかく)させてあげたい,という思いとの間で矛盾(むじゅん)を感じることもたくさんあります。だからこそ,「成績(せいせき)が伸(の)びた!」「理解(りかい)することができた!」などと,生徒さんが満足してくれるようなサービスを提供(ていきょう)することを常(つね)に心がけています。
私(わたし)が大学生の頃(ころ),就職(しゅうしょく)について考えたのですが,特にやってみたい仕事がなかなか思い当たりませんでした。でも大学の時からアルバイトとして働いていた塾講師(じゅくこうし)の仕事は,自分にとても合っていると思っていたし,何より楽しく働くことができそうだったので,採用(さいよう)試験を受けました。夏休みなどは本当に忙(いそが)しくなりますし,先生としての人気がなくなると仕事を失う可能(かのう)性(せい)もありますが,まとまった休みも取れますし,今は自分が望むような充実(じゅうじつ)した仕事ができているので満足しています。
小学生の頃(ころ)は,学校に夜忍び込(しのびこ)んでプールで泳いだり,プールの水の栓(せん)を抜(ぬ)いてしまい,次の日プールの授業(じゅぎょう)が中止になったり,校庭になっていた枇杷(びわ)やイチジクを全て食べてしまったりと,ありとあらゆるいたずらをしていました。当然先生に何度も叱(しか)られました。ちょうどテレビゲームが流行り始めた頃(ころ)で,ゲームも好きでしたが,山に基地(きち)を作ったり,川に行って遊んだりする方が多かったように思います。小学校5年生の頃(ころ)から中学受験のために塾(じゅく)に通い始めましたが,あまり勉強をした記憶(きおく)はないですね。
私(わたし)が子どもの頃(ころ)に比(くら)べて,今はとても便利なものが増(ふ)えています。テレビゲームなどが発達して,自分で何か新しいことや楽しいことを考え出して遊ぶ,という機会も必要もあまりないのではないでしょうか。与(あた)えられたものではなくて,新たなものをつくることにチャレンジしていくことで,本気で手に入れたいものはどうしたら手に入るのか,を考える力や忍耐力(にんたいりょく)がつくと私(わたし)は思っています。家庭や学校でいろいろなことを話したり,考えたりして,不器用でもいいのでぜひ自分で遊びを創(つく)ってみてください!