仕事人

社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!

愛媛県に関連のある仕事人
1976年 生まれ 出身地 愛媛県
梶田かじた 秀樹ひでき
子供の頃の夢: サッカー選手
クラブ活動(中学校): 野球部
仕事内容
りょうさんをささえ,地元の漁業をともにり上げる。
自己紹介
「お魚ソムリエ」のかくを持ち,小学校で魚についてのじゅぎょうをすることもあります。スポーツが大好きで,最近もマラソン大会で完走しました。地元のスポーツしょうねんだんどうもしています。

※このページに書いてある内容は取材日(2018年05月08日)時点のものです

りょうさんといきのために働く

漁師さんと地域のために働く

わたしひめけんあいなんちょうにある愛南漁業協同組合(漁協)のしょくいんです。漁協というのはりょうさんがお金を出し合ってつくる法人です。日本では家族単位のの小さなりょうさんが多いので,組合をつくって助け合っているのです。
わたしたち漁協しょくいんは,いってみれば組合員であるりょうさんにやとわれ,漁業や漁村のらしをサポートするのが仕事です。全国には1000近い漁協があり,も仕事のないようもそれぞれちがいますが,漁協のおもな仕事は,りょうさんがとった魚を売るのを手伝う「はんばい」,あみながぐつなど漁に必要なものや生活用品を売る「こうばい」,銀行のように貯金を受け入れたり漁のきんけたりする「信用」,海でのさいがいそなえるけんの「きょうさい」,けいえいの相談にのる「どう」などです。わたしはこのうちの「はんばい」の仕事をたんとうしています。
もうひとつ,漁協には大切なやくわりがあります。それは「漁場の管理」です。漁業はかぎりある自然のげんたよる産業です。魚をとる場所や時期、とっていいサイズや量をせいげんするなど,大切なげんを利用するルールをいきごとに定め,海のげんを守っていくのも漁協のつとめです。海をゆたかにするための植林や,海岸のごみのせいそうなど,かんきょう活動をおこなっている漁協も多いんですよ。
ここ愛南町では漁業が町の主要な産業なので,漁協には町全体をげることも期待されています。ふるさとのために働けるこの仕事には,とてもやりがいを感じています。

市場の仕事はスピーディかつせいかく,ていねいに

市場の仕事はスピーディかつ正確,ていねいに

愛南町の海はゆたかで,年間を通してアジ,サバ,イワシ,タイ,イカがとれ,春から初夏にかけてはカツオやカンパチ,冬にはブリやカワハギなどがとれます。
りょうさんはとった魚を漁協の市場にみずげします。漁協はりょうさんから手数料をいただいて魚をあずかり,毎朝6時からのセリで仲買人さんに売ります。仲買人さんは買った魚を自分の店で小売りしたり,地元のスーパーや加工業,飲食店などにおろしたりするほか,東京のつきなど都市部の市場に送ることもあります。
愛南漁協は本所と3つのしょがあり,しょくいんは53人。わたしは本所で働いています。市場の仕事はしょくいんそうがかりでおこないます。わたしもセリのじゅんのため,毎朝5時にしゅっきんしています。春から初夏にかけてはカツオいっぽんりの漁船が昼前から午後にかけて入港し,朝とは別にカツオだけのセリもあるので,とてもいそがしくなります。
市場では,漁船から魚をみずげしたらすぐ,種類やサイズ別,きずものなどに選別します。選別した魚はカゴに小分けして重さをはかり,「漁船名,サイズ,kg」などを記した伝票をカゴに入れます。これがセリのづけやりょうさんへのはらいのデータになります。
一連の作業で大切なのは,魚のせんひんしつを落とさないスピード,せいかくさ,ていねいさです。せっかくりょうさんがとった魚も,市場でざつあつかえばが下がってしまいますから。えいせいにも十分気をつけていて,愛南漁協では市場のゆかはピカピカにみがげていますし,定期的に周辺のごみ拾いもしています。こうした努力が市場の信用になるんです。信用があると仲買人さんが多く集まり,魚にも高いがつく。そして町全体も活気づいていくんです。

子どもたちに魚や漁業に親しんでほしい

子どもたちに魚や漁業に親しんでほしい

日本人の魚の消費量はってきています。そこでひめ大学,愛南町の水産課,愛南漁協がチームを組み,より多くの人に魚に親しんでもらうための教育活動である「ぎょしょく教育」をおこなっています。わたしは漁協のたんとうしゃです。
最初は町内の学校で出前じゅぎょうをしていたのですが,2010年から東京の小学校にも行くようになりました。愛南町水産課の働きかけが実って,東京都の学校給食で愛南町の魚を食べてもらえるようになったからです。
出前じゅぎょうでは漁やようしょくの仕事について話をし,生の大きなカツオやマダイにもさわってもらいます。マダイの実物を見てようしょくか天然かを見分けるクイズや,カツオの重さのペットボトルを本物の竿ざおる,いっぽんり体験も人気です。ワクワクして喜んでもらえると,わたしもうれしくなります。
給食のためにとどける魚は,愛南のりょうさんや加工屋さんに用意してもらいます。給食ののうにゅうには決まりごとが多いのです。たとえば,マダイの切り方の角度やはば,カマ(頭の下の部分)の大きさを同じにすることなどです。それを東京の給食業者さんに教えてもらい,わたしからりょうさんや加工屋さんに伝えました。コツをつかむまでは,苦労もありました。でも,愛南の魚を東京の子どもたちにも食べてもらえること,売り先をやすことでりょうさんに喜ばれること,それらが仕事のはげみになりました。

えいぎょうは「愛南のファン」をつくる仕事

営業は「愛南のファン」をつくる仕事

愛南ではイワシなどのあみ漁もおこなわれていて,昔からイワシのまるし,ものし,かまぼこなどの加工がさかんです。しかし家族けいえいの小さな業者さんが多く,えいぎょうまで手が回りません。また,日本人の食生活が変わり,これまでとはちがう売り方を考える必要もあります。そこで,漁協がえいぎょうそうごうまどぐちつとめることになりました。今,わたしたんとうしています。
仲間のしょくいんいっしょに東京をはじめ,全国各地に出向いて商談をすることもありますし,県内の加工品の問屋さんと話をすることもあります。商談がまとまれば業者さんから手数料をもらい,注文を受けて商品を送る仲立ちや,ときにはクレームたいおうもします。
えいぎょうわたしが大事にしているのは,買い手に「愛南のファンになってもらう」こと。愛南の水産物は,この町の自然や文化がつくりだした,ここにしかないものだと思うんです。だんだけのこうしょうでは,人の気持ちはなかなか動きません。でも,愛南のゆたかな海や山,代々がれてきた漁業や加工のわざきょうを持ってもらえたら,これが糸口になります。
漁協は地元の人たちに親しまれている,いきに根づいたしきですから,いきの水産業をげるのも仕事のうちです。だからわたしたちのえいぎょうの仕事には「愛南町のセールス」という意味もあるんじゃないかな,と思います。

よく考えて地元でのしゅうしょくを決意

よく考えて地元での就職を決意

わたしは愛南の小さな漁村で育ちました。いくえんから中学までは一学年が1クラス20人のずっと同じ顔ぶれだったのが,高校でいきなり一学年10クラスになり,びっくりしました。
部活は中学のときから野球部でした。高校からはこうしきで,3番サード。こうえんには行けませんでしたが,いくつかの大学からすいせん入学の話もありました。野球でプロは無理だと思いましたが,進学してスポーツにかかわる仕事にくのもいいなと考えていました。
しかしいろいろなじょうでスポーツの道はあきらめ,進学か地元でのしゅうしょくまよいましたが,母に漁協のさいよう試験を受けるようすすめられ,よくよく考えた上で漁協へのしゅうしょくを決めました。自分で考えいてなっとくした結果ですから,こうかいはありませんでした。ましてや「だれかのせい」などと思ったこともまったくありません。
しゅうしょくしてから23年,数年おきにたんとうしょうつりあらゆる仕事をけいけんしたおかげで,今やすっかり漁協のオールラウンドプレイヤーです。

何ごともちゅうで放り出さずやり

何ごとも途中で放り出さずやり抜く

わたしが自分の人生で大切にしてきたことは,ちゅうで放り出さずとことんやりくことと,自分の頭で考えて決めること,でしょうか。最初にそれをしきしたのは高校の部活です。家から高校までは,自転車でかたみち約1時間かかり,毎朝6時前に家を出て,練習が終わって帰り着くのは夜中の12時ぎ。漁協にしゅうしょくして「社会人って楽だなあ」と思ったほどです。それでも部活はぜったいにやめないと決めていました。ちゅうでやめたら自分に負けるというか,一生,ちゅうはんな人間になるような気がしたんです。
1年生のときは上級生についていくだけでしたが,2年生になってからは練習のないようを自分の頭で考えるようになりました。まず課題を見つけて練習の目的を決め,目的のためにこうてきな練習の方法を考える,というように。この姿せいは,今の仕事でも生きていると思います。
わたしはスポーツしょうねんだんどういんにんていかくをとって,10年以上前から地元でどうをしていますが,子どもたちにもいつも「自分の頭で考えなさい」といっています。されたことをかいせずに「はい」と返事だけして体を動かしていては成長できないですから。

人との出会い,えんが人生のざいさん

人との出会い,縁が人生の財産

自分で考えてやりたいことや進む道を決め,とことんやりぬけば,おのずと道はひらけるものだと思います。とはいえ,わたし自身のけいけんからも,人に助けられて生きてこられた面も大きいですね。えいぎょうの仕事も人と人の間に立つ苦労よりも,人との出会いのおかげでうまくいくことが多いと実感しています。わたしは中学まではあらっぽいせいかくでしたが,高校に入って「これじゃだめだ,友だちもできない」と気づきました。それ以来,人との関係は大事にしています。高校時代の10人ぐらいの仲間とは,今でも毎月集まっています。人とのえんは,何よりすばらしい人生のざいさんたからものだと思いますから,みなさんもまわりの人とのえんは大切にしてください。

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取材・原稿作成:大浦 佳代/協力:公益財団法人 日本財団,NPO法人 共存の森ネットワーク