仕事人

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東京都に関連のある仕事人
1975年 生まれ 出身地 東京都
きょうかしょへんしゅう教科書編集
窪田くぼた ただし
子供の頃の夢: 生物学者
クラブ活動(中学校): 野球部
仕事内容
小学校理科の教科書の編集
自己紹介
休日は息子の野球チームのコーチをしています
出身大学・専門学校

※このページに書いてある内容は取材日(2015年04月08日)時点のものです

3年間かけて教科書をつくる

3年間かけて教科書をつくる

私は,小学校理科の編集長へんしゅうちょうとして,小学3~6年生の理科の教科書をつくっています。小・中学校の教科書というのは普通ふつうの本とはちがい,3年の歳月さいげつをかけてつくられるものなんです。教科書のつくり始めは,編集へんしゅう委員会という組織そしきで,どんな内容ないようにするかを話し合います。これは編集へんしゅう部と学校の先生や校長先生,大学教授きょうじゅなどに協力をいただき,1年ほどかけて検討けんとうします。次は,その内容ないよう紙面しめんにするために,編集へんしゅう部を中心にデザイナーさんと構成こうせいを決め,イラストレーターさんにイラストをたのみ,カメラマンさんに写真の相談をして,さらに細かな文章の表現ひょうげんを決定していきます。これにも1年ほどかかり,本の形ができたところで,文部科学省の検定けんてい審査しんさを受けます。そして,文部科学省からの検定けんてい意見いけんに対応して修正しゅうせいを行い,表紙がついて発行されるまでには,さらに1年近くかかります。こうして完成した教科書がみなさんの手元へ届けられます。
3年間の編集へんしゅう期間のうち,検定けんていに出す前の半年ぐらいは特にいそがしいですね。また,学校の新学期に合わせてつくるものが多いため,冬の時期は帰宅きたくが遅くなることが多く,会社から帰るころ,んだ夜空にオリオン綺麗きれいかがやいているのを見ると,「あ,いそがしい時期になったな」って思います。

写真撮影さつえいの工夫

写真撮影の工夫

理科の教科書には多くの写真を掲載けいさいしていますが,一つひとつの撮影さつえいにも時間をかけて,最良の一まいせるように工夫をしています。例えば,季節の変化が分かるように,1年を通じて同じ場所で撮影さつえいする写真もあります。現地げんちに何度も足を運んで,撮影さつえいてきした場所を見つけ,次にカメラマンとともに行ってどちら向きにるか,いちばんてきした時間はいつかなど,細かなところまで決めてから,季節ごとに出かけます。しかし,その日に季節感が出ていなかったり,くもっていたりして,撮影さつえいできないということもよくありました。また,子どもが花を観察している写真などは,自分達で花を栽培さいばいする所から始めることもあります。種をまいて毎日水をやって育て,ちょうど良い時期になったら,子どもに協力してもらい,撮影さつえいします。相手が子どもですから,緊張きんちょうしたり,つかれていやになったりすることもあるので,かぎられた時間の中で,どれだけ良い形にできるかという苦労はあります。でも,これは楽しさと表裏一体ひょうりいったいで,苦労してできたものは,一つひとつの写真に思い入れがあって,それだけ愛着もありますね。

先を見すえて計画通りに進めるむずかしさ

先を見すえて計画通りに進める難しさ

どの仕事にもしめ切りがあります。教科書の場合は,それを守らないと,発行できないということがあります。仕事なので当たり前ですが,やはりプレッシャーを感じますし,苦労するところです。つくる期間が長いだけに,数年先を見すえて,全て計画通りに進めるのはむずかしい所ですね。また,編集へんしゅう委員の先生方やデザイナーさんなど,多くの方にお願いしながら,一つの教科書をつくり上げていくので,こちらの思いを上手く伝えながら,気持ち良く仕事をしていただくように気をつけています。教科書の方向せいを話し合う中では,先生方が示す方向と,編集へんしゅう部が目指している方向をつなぎ合わせながら進めていきます。大変だけれども,集中して全員でつくり上げていくという気持ちのり上がりはありますよ。

100万人以上の小学生が使う教科書

100万人以上の小学生が使う教科書

この教科書は,全国の約3わりの子どもたちが使っていて,部数にすると,小学3~6年の4さつ合わせて,100万部以上になるんです。ですから,全国100万人以上のざかりの子どもたちが,自分が関わった教科書を使って勉強していると思うと,責任せきにんもありますが,この仕事に大きなやりがいを感じますね。長い年月をかけてつくっていますので,一冊いっさつの本として仕上がったときは,今までの苦労があらながされ,つくって良かったと思います。

最後の最後までこだわる

最後の最後までこだわる

仕事で大切にしているのは,完成する最後までこだわりをてないということです。こだわりというのは,子どもにとって分かりやすい内容ないようか,理科を楽しく勉強できるのか,先生は教えやすいか,ということをつね意識いしきして「まぁいいや」と終わらせてしまうのでは無く,最後の最後まで情熱じょうねつを注いでつくるということです。編集へんしゅうするときも,写真を1mm動かすかどうかを決めるだけで1時間かけることもありますし,文章では助詞じょし句読点くとうてんの入れ方ですよね。例えば「わたしが○○です」と「わたしは○○です」とでは,受ける印象が全くちがうことがあります。“が”と“は”が1つちがうだけで,意味はあまり変わらないはずですが,受け止める印象はちがいますよね。「これが良い」と思えるまでねばり強く仕事をしたいと思っています。

教育に関わる仕事

教育に関わる仕事

もともと教育関係に興味きょうみがあったので,大学で教員免許めんきょを取り,先生になろうかとも考えている中でこの会社の募集ぼしゅうがあり,入社しました。教科書は多くの子どもが使い,先生も参考にしますので,魅力みりょく的な仕事だと思い,この道に進みました。入社後は何ヶ月か研修けんしゅうをして,すぐに小学校理科の編集へんしゅうに入り17年目になります。でも,17年やっても教科書を発行した回数は,まだ4回なんですよ。だから60さいまでだったら10回ほどしかつくれません。4年ってはじめて一通りの仕事が経験けいけんできるというのは,特殊とくしゅな仕事かもしれませんね。

昆虫こんちゅうと野球が好きだった子ども時代

昆虫と野球が好きだった子ども時代

小学生のころは,友達がいれば野球をすることが多かったですね。一人でもボールをかべに投げ,1時間でも2時間でもやっていました。野球のポジションはピッチャーで,中学校から大学まで続けましたので,放課後も休日も部活をしていました。今でも休日は子どもと野球をするんですよ。理科につながると言えば,私は昆虫こんちゅうが大好きで,子どものころはカブトムシやクワガタをっていましたね。東京の多摩たまの方に住んでいましたから,近くに昆虫こんちゅうが集まる木があって,夏になるとさがしに出かけていましたよ。秋になればカマキリが,コスモスの花のそばで虫を捕獲ほかくするために,じっとしているんです。太陽を正面にして探していると,カマキリの姿すがたがシルエットになって浮かび上がり,それがとても秋を感じさせるものとして,私は好きでしたね。

本気で泣いて,本気で喜ぼう

本気で泣いて,本気で喜ぼう

みなさんには,あることが好きでたまらない,いくら続けてもきずに夢中むちゅうになれるというものを見つけて,本気で取り組んでもらえたらいいなと思いますね。そうすると,もっと上手くなりたいという思いがいて,より努力するとか,上手くいかないときは,自分なりに工夫をして解決かいけつしたいと思うはずです。それが人を成長させると思います。また,心の面でも,本番をむかえてふるえるような緊張きんちょうを味わうとか,喜んだり泣いたりくやしがったりするといった,いろんな思いが経験できます。私は,夢中むちゅうになった野球で本気で泣いてくやしがり,心の底から喜ぶ経験けいけんができました。そういった経験けいけんは,大人になって仕事をするうえでも,生活をするうえでも力になります。人との関わりの中で,自分の思いを伝えたり,相手の気持ちをくみ取ったりということにもつながるんです。
みなさんも夢中むちゅうになれるものを見つけて,本気で取り組んでほしいと思います。きっとこれからの人生をゆたかにしてくれると思いますよ。

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何億年後の生き物を想像するこの本。図版も多く進化がわからなくても楽しめて、荒唐無稽なイラストっぽいんだけれど、これまでの進化の過程を基にして未来を想像し、こんな環境ができると科学的な根拠を踏まえている。創造力逞しく作られており、自分が勉強したことを使うと、こんなことも考えられるという、夢や幅が広がっていいなと思います。
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子どものころに読んで記憶に残っているのは、この本。生き物が好きだったから、読んでいて楽しかったです。擬人化された虫の気持ちや暮らしぶりを想像しながら、自分もその世界に入り込んだ感覚で読んでいました。生き物をより身近に感じ取れるシリーズです。

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取材・原稿作成:株式会社ユニバーサルデザイン総合研究所/東京書籍株式会社