仕事人

社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!

東京都に関連のある仕事人
1989年 生まれ 出身地 石川県
福寿ふくじゅ 満希みづき
子供の頃の夢: スポーツ選手 (テニス)
クラブ活動(中学校): テニス部
仕事内容
「人をかせる花屋をつくる」。しょうがいのに関わらずだれもが自分らしくほこるために、花に関わる事業のけいえいせんりゃくを考え、働くゆめを持つしょうがいしゃようそくしんされる事業をつくり出す。
自己紹介
まだ世の中にそんざいしない、新しいサービスを考えることが好きで、やりたいことに集中しすぎて時間をわすれてしまうことがよくあります。つらいことがあってもひとばんればまた前向きに取り組めます。たくではあいびょうごす時間が何よりのやしになっています。
出身大学・専門学校

※このページに書いてある内容は取材日(2023年12月13日)時点のものです

だれもが自分らしくける社会を目指す会社「ローランズ」をけいえい

誰もが自分らしく咲ける社会を目指す会社「ローランズ」を経営

わたしが目指しているのは、しょうがいのに関わらずだれもが自分らしくほこり生きられる社会です。そのかんきょうをつくるためにわたしは、「人をかせる花屋」をコンセプトにした会社「ローランズ」のけいえいをしています。「ローランズ」という名前は、花のがみの名前「フローラ」と、人を意味する英語「ヒューマン」のそれぞれの一部を組み合わせたぞうです。街中に花をかせることで人々をがおにした花のがみ(FLORA)のようなそんざいを目指し、ローランズは生まれました。
事業の柱は大きく分けて3つあります。生花を使ってフラワーギフトをせいさくして全国に発送したり、ウエディングやブランドショップなどの空間そうしょくをしたりする「フラワー事業」、働くことをけいぞくするのがむずかしいじょうたいにある、またはこれから働くことを目指すしょうがい当事者に向けた「しゅうろうえん事業」、しょうがいしゃようを進めたいぎょうをサポートする「ようえん事業」をてんかいしています。
じゅうぎょういん数は80名で、そのうちの約7わりとなる55名は、身体しょうがい、ちょうかくしょうがい、せいしんしょうがいなどさまざまなしょうじょうと向き合うスタッフです。しょうがいのに関わらず全てのスタッフが、働くことを通しておたがいをそんちょうし合い、ともに成長していくことが、わたしの大きなよろこびです。「働くことが楽しい」「自分らしくいられる」といった声を聞くのが本当にうれしく、この声を聞きたくて、わたしはローランズをけいえいしているのだと思います。

フラワーギフトはんばいそうしょくのほか、カフェをへいせつした花屋や花農園をうんえい

フラワーギフト販売や装飾のほか、カフェを併設した花屋や花農園を運営

「フラワー事業」のフラワーギフトはんばいでは、じんぎょうからごらいを受けて、さいてきな花をアレンジしてのうひんします。中でも多いのが、新しいお店がオープンするときや、会社がてんするときにおくるお祝いの花です。けっこんしきろうえんに使う花のアレンジもこうひょうで、年間600組ほどのしんろうしんのお花をたんとうしています。お客さまと打ち合わせをし、けっこんしきはなよめさまが持つブーケに使う花やテーブルにかざる花などは、どのようなものがふさわしいかなど、考えてごていあんしています。
また、わたしたちが大切にしている活動きょてんの一つに、カフェがへいせつされた花屋、「ローランズ原宿」があります。「ローランズ原宿」は、わかい人が多くう原宿というしょがらを考え、またお花を好きになってもらうきっかけの場所をつくるために、カフェへいせつという形を取り、2017年にオープンしました。花であふれた店内では、花をイメージしたスムージーやオープンサンドなどを味わっていただけるほか、生花やフラワーギフトもはんばいしています。カフェにいらしたお客さまが「お花っててきだな」と思い、花のあるらしをスタートさせていただけたらと考えています。2023年冬げんざい、原宿とてんのうアイルに2つてんがあり、2024年の春に1てんえる予定です。
ほかにも、「ローランズ原宿」で定期かいさいしている子どもしょくどう「お花屋さんのこどもごはん」や、季節の花をさいばいする農園「ローランズファーム」などをうんえいし、どのしょくでもしょうがいと向き合うスタッフが花を通じてかつやくしています。

しょうがいしゃようすいしんをサポート

障がい者雇用の推進をサポート

ようサポート事業」では、しょうがいしゃさいようを考えているぎょうに対して、花を通じたしょうがいしゃようすいしんをサポートしています。ローランズは、しょうがいと向き合いながらぎょうで働くことを目指す人たちに向けてしゅうぎょうのための訓練を行う「しゅうろうこうえん事業」を行っており、ぎょうで働くために必要な社会じょうしきやマナーを覚えてもらったり、生花のあつかいやせっきゃくなどに関するじゅつしきを身につけてもらったりといったじゅつえんをしています。そして、そこでの卒業生を、ぎょうとつないでいます。今までローランズは、自社でのしょうがいしゃようやしていこうとがんっていましたが、わたしたちが1社で行っていてもスピードはおそく、なかなか社会全体でのようは広がりません。他のぎょういっしょようづくりに取り組んだほうが、多くのはなようが生まれるはずです。
そこで、わたしたちの思いにさんどうしてくださるぎょうれんけいして、ぎょうの中に、フラワーギフト(花束)をせいさくするための花のさいばいと花束加工を行う「フラワーチーム」をつくり、そのうんえいしょうがいしゃようわくさいようしたスタッフにたんとうしてもらう、という仕組みをつくりました。わたしたちはぎょうに対して、花のさいばいや加工に関わるじゅつどうやスタッフの教育に関するノウハウをていきょうし、多様なスタッフが働く「フラワーチーム」をバックアップします。花を通じたぎょうとのしょうがいしゃようづくりは、今では約20社とれんけいするところまで、取り組みが広がりました。
この取り組みを始めたはいけいには、日本で、しょうがいに向き合う人たちが働くための受け入れかんきょうがまだ十分に整っていないということがあります。げんざいの日本の法令では、一定人数以上のじゅうぎょういんがいるぎょうだんたいには、しょうがいと向き合う人をようする社会的せきにんがあります。じゅうぎょういん数に対するしょうがいしゃようりつは年々引き上げられており、げんざい(2023年度)は、じゅうぎょういん数の2.3%以上のしょうがいしゃようすることがひっになっています。じゅうぎょういん数が43.5人以上のぎょうは、しょうがいしゃようする社会的せきにんがありますが、日本の半分以上の約6万社のぎょうだんたいが、そのように取り組めていません。もっとぎょうだんたいにとってしょうがいしゃようが身近なものになるよう、そしてそこで働く人の心がくよう、わたしたちの花を通じたようサポートが役立つと良いなと思っています。

とくな仕事をり、一人一人の良さをばすあとしをする

得意な仕事を割り振り、一人一人の良さを伸ばす後押しをする

会社のけいえいしゃとして、共に働くスタッフが働きやすいかんきょうをつくることをいつも考えています。心がけているのは、しょうがいのに関わらず、社員一人一人と向き合っていくことです。ローランズでは5人ほどの少人数でチームを組み、そのチームが集まって会社をつくっています。そのせきにんしゃとなる社員を中心にチーム内でコミュニケーションをしっかり取り、“手ははなすけど目がとどく”チーム人数にすることで、おたがいの体調の変化にもすぐに気づけるようにしています。
また、スタッフそれぞれのとくなことを見つけ、それを生かした仕事をるようにもしています。そのためのふうの一つが、ぎょうを細分化してぶんたんすることです。たとえばカフェでスムージーを作るときには、「スムージーに使うフルーツや野菜を切る」「切ったフルーツの重さを量って、1ぱい分ずつふくろに取り分ける」などに作業を切り分けてぶんたんしています。同じように、フラワーギフトをせいさくするチームでは、「びんに土台をつくる」「花をアレンジする」「ラッピングする」「商品をはこめする」など細かくこうていを分けています。
しょうがいと向き合う人は、人よりとくとくおうとつが大きいケースがあります。できないことや苦手なことがあるときに、「とくをどうにかしよう」「できるようにしよう」としすぎるとうまくいきません。苦手なことをこくふくするのも大事ですが、すでにできることを生かし、ばしていく方向で仕事をしてもらったほうが、やりがいや自信につながります。ですからローランズでは、スタッフの“できること””すでに持っている力”に注目し、仕事をまかせています。「できる」という自信や、「仕事が楽しい」という気持ちを持ってもらうことが何よりも大切だと思っています。
また、特にようしょうからしょうがいと向き合ってきた人は、「だれかに笑われた」「みんなとちがうと言われた」など、につらい体験をした人が多いです。ローランズでは、しょうがいのに関係なく、仲間どうしでちがいをじゅようささえ合う文化があります。だれかが働くうえでの課題が発生したときに、チームで何ができるかを考え相談し合っている姿すがたを見ると、とてもほこらしい気持ちになります。

未来をして新しいプロジェクトを考える

未来を見越して新しいプロジェクトを考える

会社をけいえいする者として、これから始める新しいプロジェクトを計画することにも力を入れています。他社とコラボレーションして新てんをつくることもありました。たとえば2023年12月にオープンした大手しょうひんメーカー「ピアスグループ」のてんないには、ローランズがかんしゅうしたカフェへいせつがたの花屋「ピアス×ローランズ」があります。相談があったのは、2023年春ごろでした。わたしは、最初にてんのコンセプトやデザインのほうこうせいなどを、先方のたんとうしゃいっしょに考えました。その先はローランズのフラワーチームやカフェチームといっしょに取り組みます。ローランズのメンバーが先方といっしょてんのレイアウトやメニューこうせいとりあつかしょうひんを決めたり、新しいてんで働くスタッフのけんしゅうを行ったりして、無事開店させることができました。
新しいプロジェクトを計画するときに苦労するのは、未来のことが分からない中で、5年先、10年先や周辺かんきょうはんのうそくして計画を立てなければいけないことです。未来のことはだれにも分かりませんよね。予想していたシナリオと全くちがう未来になったり、じゅんを進めていたプロジェクトが予期せぬことで大きく方向てんかんが必要になったり、思いもしない結果になることはたくさんあります。そのようなときは計画の立て直しや、最初からやり直しをしなければならないので大変ですが、「どんなに大変なことも、1年後には笑い話にできるように」と考え、とにかくいっしょうけんめいやり切ることを大切にしています。

子どもたちのゆめかなえたい

子どもたちの夢を叶えたい

しょうがいと向き合う人へのえんを考えるようになったのは、大学時代、特別えん学校の教員めんきょしゅとくさいに教育実習でおとずれた特別えん学校での子どもたちとの出会いがきっかけです。実習で初めてしょうがいのある子どもたちに出会ったときに、みんながしょうらいゆめを話してくれたのです。お花屋さん、ケーキ屋さん、パイロットなど、たくさんのしょうらいゆめがおで教えてくれました。でもじっさいしゅうしょくりつは15%ほどで10人に1、2人しか働くゆめかなわないことを知り、とてもショックを受けたことを覚えています。仕事にけたとしても、そのせんたくや軽作業がほとんどでした。この事実を知ったときに、「子どもたちのせんたくが広がり、働くゆめがもっとかなう社会にしたい」と思いました。
このような思いを持ちながらも、当時はどうすればいいのか分からず、大学卒業後はいっぱんぎょうしゅうしょくしました。しかし、新人時代はうまくいかないことばかりで心がどんよりしずんでしまいました。このときにわたしいやしてくれたのが、つうきんちゅうにあった花屋でした。きれいな花を見て何度も心がリセットされるけいけんを重ねるうちにきょうがわき、週末にフラワーアレンジメントの勉強をするようになりました。最初はしょくぎょうにするつもりはなかったのですが、気づいたら熱中していて、勉強し始めて半年後には作品をてんかいに出品し、わたしじんに仕事の相談や注文が入るようになっていきました。そこで23さいのときにどくりつを決意し、たくの一角でフラワーギフトのせいさくはんばいの仕事を始めることにしたのです。
しょうがいのあるスタッフのようげんじつてきに考え始めたのは、起業3年目に入ったころに、しょうがいふく事業所からフラワーアレンジメントのレッスンらいを受けたことがきっかけです。このときに学生時代に出会った特別えん学校の子どもたちのがおを思い出し、「やりたかったのは、これだった」と気づきました。

こうしきテニスに打ちこみ、「あきらめずにやりく心」が育った

硬式テニスに打ちこみ、「あきらめずにやり抜く心」が育った

わたしは、小さいころからスポーツが大好きでした。特に、中学校から大学まで、こうしきテニスに打ちこんでいました。毎日、練習にれていたので、当時は真っ黒に日に焼けていましたね。スポーツをやっていて良かったと思うのは、「最後まであきらめず、いっしょうけんめいやりく心」を育むことができたことです。
こうしきテニスの試合では、急にとっぷういてボールがありえない方向に飛んで行ったり、思いがけずケガをしてしまったり、予想しないことが本当によく起こります。それでも試合は続いていきます。あるていのことにはその場でたいしょし、気持ちをえて最後まで戦うしかないのです。同じように、人生には試合のときのように予想外のことがたくさん起こります。有終の美がかざれなかったとしても、いっしょうけんめいやったその時間は、何よりも自分の心を育ててくれますし、その姿すがただれかが見てくれていて、新しいチャンスがいこむこともあります。スポーツを通して「どんなことがあっても全力で最後までやりこう」と考えられるようになったのは、とても良かったと思います。
また、スポーツにいっしょうけんめい取り組んだおかげで、大学はすいせんで進学することができました。この大学に特別えん学校の教員めんきょしゅとくできるカリキュラムがあったことから、特別えん学校での教育実習に参加し、しょうがいと向き合う子どもたちにも出会い、今の仕事と出会えたのです。

いっしょうけんめいやり切れば、そうぞうしなかったらしいことに出会える

一生懸命やり切れば、想像しなかった素晴らしいことに出会える

みなさんは、やりたいことがあったら、それをとにかくいっしょうけんめいやり切ってほしいと思います。がんってもなかなかうまくいかないことや、ちゅういやになって投げ出したくなることがあるかもしれません。それでも、「いっしょうけんめいやること」「やり切ること」で、その後に残るものに大きなちがいが出てきます。たとえば、自分が予想していなかった新しい発見、出会い、チャンス。あきらめていたらできなかったけいけんに出会えるのです。今、ちゅうになれること、ちょっとでも関心があることに、とことん向き合ってみるけいけんを、今はできるだけたくさんしてほしいですね。
また、しょうがいのに関わらず、世の中にのないものなどそんざいせず、みなさん一人一人にとても大きなのうせいがあるということを伝えたいです。だれかに「それは無理だ」と言われたとしても、たくさんのゆめも持ってほしいと思いますし、わたしもみなさんのゆめかなう社会をつくることに全力を注いでいます。わたしの周りのゆめかなえた大人たちは、自分のゆめを語って笑われても、やりいた人ばかりです。周りになんと言われても、あなたがあなたを信じられさえすれば、だいじょうです。
しょうがいのに関わらず、だれもがはないて生きられる社会になるために、これを読んでいるみなさんには、「あなたは、あなたで良い」ということを、だれよりもみなさん自身が信じ、大切にしてごしてもらえたらうれしいです。

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伊勢丹、鈴屋で新規事業の立ち上げと海外進出を成功させた後、台湾へ渡り、大手財閥企業で活躍した、私が尊敬する経営者の著書です。ものに執着しない、過去にも執着しない、ものを残すのではなく経験を残す、といったことの大切さを教えてくれます。考えなくてはいけないことがたくさんあるときに読むと、頭の中がすっきり整理でき、心を身軽にしてくれます。

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取材・原稿作成:秋山 由香(Playce)・佐藤 理子(Playce)・東京書籍株式会社/撮影:厚地 健太郎