社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!
※このページに書いてある内容は取材日(2009年08月10日)時点のものです
不動産鑑定士(かんていし)とは,土地・建物などの不動産を調べ,その価格(かかく)を判定(はんてい)する(値段(ねだん)をつける)仕事です。お客さんから不動産の鑑定(かんてい)の依頼(いらい)を受け,不動産を調べて,その不動産の価格(かかく)とその価格(かかく)をつけた理由を書いた「不動産鑑定(かんてい)評価書(ひょうかしょ)」という書類を作り,お客さんに渡(わた)します。この鑑定(かんてい)評価書(ひょうかしょ)は,お客さんが土地の売り買いなどをする時に使ったり,税金(ぜいきん)を計算したりする時に必要になります。面積や形が同じでも必ずその土地がどういった場所にあるかが違(ちが)うので一つとして同じ不動産はなく,価格(かかく)はバラバラです。1つの不動産を鑑定(かんてい)するのに必要な期間は1ヵ月程度(ていど)です。年に一回,1月1日に「地価(ちか)公示(こうじ)」があります。この日に,土地の価格(かかく)が上がった,下がったということが新聞で発表されます。不動産屋さんとよく間違(まちが)われ,「いい物件(ぶっけん)はありますか?」「売っている土地はありますか?」と電話がかかってきますが,不動産の売り買いのお手伝いはしていないので全く違(ちが)う仕事です。不動産鑑定(かんてい)評価(ひょうか)は国家資格(しかく)を持った不動産鑑定士(かんていし)だけができる仕事ですので,不動産鑑定士(かんていし)以外の人が不動産の鑑定(かんてい)評価(ひょうか)をすると,犯罪者(はんざいしゃ)になってしまいます。主に調査(ちょうさ)に行く場所は,愛媛(えひめ)県の東部で,年に2,3回愛媛(えひめ)県の西部の方に行くこともあります。
鑑定(かんてい)をする時は,まずお客さんから依頼(いらい)を受け,土地の場所を教えてもらいます。それから法務局(ほうむきょく)に行って,土地や建物のことについて書いている図面や書類をもらいます。図面,カメラ,メジャーなどを持って現場(げんば)に行って,現場(げんば)を歩いたり,空を見て高圧(こうあつ)の電流を送る電線がないか見たり,道路の大きさや段差(だんさ)がないか,水路がないかなど細かいことを調べます。不動産には法律(ほうりつ)でたくさんの規制(きせい)があるので,市役所や県の事務(じむ)所に行って,家が建てられない区域(くいき)ではないかとか,都市計画道路で何年後かに道路ができる予定なので2階建て以上の建物は造(つく)れないという問題がないかなどを調べます。また,昔は何をしていたか,何があった場所なのかを調べる必要もあります。たとえば,工場があれば化学物質(ぶっしつ)などを使用して土地にしみ込(こ)んでいないかとか,古墳(こふん)があったかどうかなど様々(さまざま)なことを調べなければなりません。市役所などで調べた内容(ないよう)があっているかどうか,もう一度現場(げんば)に戻(もど)って確認(かくにん)します。その後,事務(じむ)所で資料(しりょう)と不動産の価格(かかく)と価格(かかく)をつけた理由を書いた不動産鑑定(かんてい)評価書(ひょうかしょ)を作り,印鑑(いんかん)を押(お)して,お客さんに渡(わた)します。
官公庁(かんこうちょう)では1月1日を基準日(きじゅんび)として地価(ちか)公示(こうじ)をすることが多いので,12月から2月が一番忙(いそが)しいです。8:00~18:00が勤務(きんむ)時間ですが,深夜まで仕事をすることもあります。半日は調査(ちょうさ)で外に出ていますが,半日は事務(じむ)所で書類を作っています。仕事の依頼(いらい)は電話や書類などで受けることが多いので,人に会うことが少なく,営業(えいぎょう)活動もほとんどありません。不動産の値段(ねだん)は高額(こうがく)なものになります。法律(ほうりつ)のことや形や面積などで値段(ねだん)が大きく変わってくるので責任(せきにん)の重さを感じています。ちょっとした調べ忘(わす)れで何割(なんわり)も金額(きんがく)が違(ちが)ってくるので,絶対(ぜったい)にミスは許(ゆる)されません。いつも緊張感(きんちょうかん)を持って仕事をしています。
細かい作業をして作り上げた不動産鑑定(かんてい)評価書(ひょうかしょ)を,お客さんにきちんと渡(わた)せた時はうれしいです。ふっと肩(かた)の荷がおりて,気が楽になります。自分が作ったものが社会で必要とされていて,役に立っていることはとてもやりがいを感じます。不動産鑑定士(かんていし)は愛媛(えひめ)県内で39人いますが,西条(さいじょう)市には2人しかいません。都会の満員電車や大渋滞(じゅうたい)がとても苦手で,都会で暮(く)らしていた時は,地元に帰って開業したいと思っていました。
仕事の上で大切にしていることは,失敗は許(ゆる)されないので,当たり前のことをきちんと確実(かくじつ)にすることです。頭の中でわかっていても実際(じっさい)に行動してみることが大切です。一度市役所に行って,図面を見て担当者(たんとうしゃ)の方に必ず話を聞くようにしていす。「基礎(きそ)データ」というものがあり,そのすべてを調べに行くことは地味な仕事になりますが,1つ1つ手を抜(ぬ)かないことが大事なことです。そして,売り手側にも買い手側にもよらない中間の立場で判定(はんてい)しなければならないので,公平でないといけません。
小学生の頃(ころ)は機械の設計(せっけい)をしたいと思っていました。高校生の時に,父親がマンションを建てる際(さい)に不動産鑑定士(かんていし)を探(さが)すのが大変だったことがありました。また,父がマンションや借家,不動産の仲介(ちゅうかい)の仕事をしていたので元々(もともと)不動産には興味(きょうみ)があり,専門(せんもん)的な職業(しょくぎょう)に就(つ)きたいと思っていたので,大学4年生の時に不動産鑑定士(かんていし)になることを決め,1年間は専門(せんもん)学校に通い勉強しました。2次試験に合格(ごうかく)後,2年間の実務(じつむ)経験(けいけん)をつみ,東京に1ヶ月間法定の研修(けんしゅう)に行きました。さらに1年間の実務(じつむ)期間を経(へ)て,3次試験を受験して合格(ごうかく)し,不動産鑑定士(かんていし)として国土交通省に登録することができたのです。
私(わたし)は4人兄弟の3番目で,学校が終わると19時くらいまでずっと遊んでいました。駐車場(ちゅうしゃじょう)が家の前にあったので,ローラースケートや鬼(おに)ごっこをしたり野球をしたりしていました。家の中で遊ぶよりは外で遊ぶのが楽しくて,ドロドロになりながら遊んでいました。両親が朝早くから夜遅(おそ)くまでレストランの仕事をしていたので,飲食店などの自営業(じえいぎょう)よりはサラリーマンになりたいと思っていました。
自分が好きなことを仕事にできるのが一番いいのですが,なかなか好きなことを仕事にすることは難(むずか)しいと思います。また自分が好きなことを仕事にしたとたんに,その仕事が思っていたものと違(ちが)っているということもよくあります。自分の得意なことやできること,縁(えん)があることを見つけて,社会の中での自分の役割(やくわり)を一生懸命(いっしょうけんめい)やり続けて欲(ほ)しいです。